| 1919年の無着陸飛行において、唯一壊れなかったのはロールスロイスのエンジンだけだったという |
ロールスロイスが「レイス」に50台のみの限定モデル”イーグル8(Eagle VIII)”を追加。
実車の発表は5月24日から26日にかけて開催されるコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステにて行われる、とのこと。
なお「イーグル」とはロールスロイスの製造していた航空機用エンジンのシリーズ名。
1914年に「イーグルI」が完成し、イーグルVIIIが登場したのは1917年だという記録が残っています。
最終的にはイーグルXVIまでが作られる
そしてイーグルVIIIはイーグルシリーズ通じてもっとも多く製造されたエンジンとなり、1919年にはビッカース・ビミー(Vickers Vimy)爆撃機に搭載され、航空機史上初の大西洋横断無着陸飛行を成功させています(パイロットはジョン・オールコックとアーサー・ブラウン)。
このイーグルVIIIエンジンの排気量はなんと20.3リッター/350馬力、そして形式はV12。
ドアインナーパネルにはウインストン・チャーチルが1919年6月20日に語ったというロールスロイス製エンジンに対する賞賛の言葉 “I do not know what we should most admire – their audacity, determination, skill, science, their aeroplane, their Rolls-Royce engines – or their good fortune,” の記載も。
なお、大西洋無着陸横断飛行に挑戦した際、ビッカース・ビミーの計器類が故障し、「星を頼りに」カナダのニューファンドランドからアイルランドのクリフデンまで飛んだとされますが、その飛行時間は実に16時間12分、そして飛行距離は3,186キロ。
その飛行中に「唯一故障しなかったのは」ロールスロイスのエンジンだけだ、という記録も残っているようです。
ロールスロイス・レイス・イーグルVIIIの外装は「星を頼りに」飛んだ二人のパイロットが過ごした長い夜をイメージし、ボディカラーはガンメタルとセルビーグレー。
ブラックのグリルはイーグルVIIIのエンジンカウルをイメージしているようですね。
ホイールはパートポリッシュにシャドウフィニッシュが採用されています。
インテリアカラーはブラックとセルビーグレー、そしてアクセントは「ブラス(真鍮)」。
ダッシュボードに使用されるのはスモークされたユーカリで、この上に記されるのは「空から見た地上」。
ルーフ内張りには「スターライト」オプションが装着されますが、これは1,183本の光ファイバーを使用し、ビッカース・ビミーのコクピットからジョン・オールコックとアーサー・ブラウンの二人が見た景色を再現しています。
センターコンソール横にはブラスカラーで6本のステッチが入り、これはビッカース・ビミーに搭載されたイーグルVIIIをイメージしたもの(このレイスに搭載されるのもV12)。
ちょっと面白いのはこの「クロック」。
グリーンっぽい文字難を持ちますが、これは「超高高度にて飛行し、凍りついたガラス越しに見えるビッカース・ビミーの(照明が灯った)計器類」をイメージしたといい、その他の部分とあわせ、ドラマを感じさせる部分でもありますね。
そしてクロック上に表示される53°26’22.81”N 10°01’18.74”Wは、ジョン・オールコックとアーサー・ブラウンによるチャレンジの「ちょうど中間」を示す座標。
なおロールスロイスはもともと1906年の設立ですが、その後に「航空機、船舶用エンジン」を作る”ロールスロイス・ホールディングス”と、自動車を作る「ロールスロイス・モーター・カーズ」とに分化。
よって現在は「自動車と航空機」分野における関連性はないものの、歴史的偉業を称える、素晴らしい限定モデルだと言えそうですね。