| 想像通り、一瞬でクラッシュし今は存在してない |
驚くべきことに、かつてBMWは「マクラーレンF1のV12エンジンを積んだM5エステート(ワゴン)」を試作していた、という事実が明らかに(画像のM5はまた別のM5。該当のM5は一瞬で事故ってしまって資料が残っていない)。
これはカーメディア「Collecting cars」のポッドキャストにて判明したもので、クリス・ハリス氏、そして前マクラーレンの役員であるデビッド・クラーク氏が語った内容だとされ、「まず間違いない」と考えて良さそうですね。
もともとマクラーレンF1のエンジンはBMW製だが
なお、BMWが一体何を考えて「マクラーレンF1のエンジン」をM5に突っ込んだのかは全くのナゾ。
そしてこのマクラーレンF1に積まれているエンジンはBMW製なので、マウント等を考えると「積もうと思えば積める」のは理解できるものの、BMWは当時、ほかにも7シリーズ、8シリーズに積んでいた(よりコストの安い)V12エンジンを選ぶという選択肢もあったはず。
このマクラーレンF1のエンジンは「S70型」と呼ばれ、もともとはBMWのモータースポーツ部門が1990年に「M8(結局発売されていない)」に搭載するために開発したもので、まずは「S70/1」からスタート。
このS70/1型エンジンは558PSにまでチューンされており、8シリーズ(850Csi)に積まれていたV12エンジン(381PS)よりも170PSも高い数字を誇ります。
しかしながらM8の発売がお蔵入りとなったことでこのS70/1エンジンは行き場を失い、そこへ声をかけたのがマクラーレン。
マクラーレン(というかゴードン・マレー)はF1にホンダ製V8もしくはV10エンジンを積みたいと考えていたものの、ホンダがエンジンを供給しなかったため、(ブラバムを介して)BMWへと流れ着いた、と言われていますね。
そしてBMWモータースポーツは、マクラーレンF1のためにこのエンジンを627PSにまでチューンし(S70/2型)、6.1リッターという大排気量、そして自然吸気ながらも「リッターあたり100馬力」を大きく超える数字を達成。
そしてBMWはこの「マクラーレンF1用エンジン」をM5ワゴンに無理やり突っ込んだというのが今回の話の要点となり、世界で最も高価なエンジンスワップと言えるかもしれません。
マクラーレンF1はこういったクルマ
マクラーレンF1についてはもはや説明不要とは思いますが、マクラーレンが1998年に発売したスーパーカー。
車体重量わずか1,140キロ、そして出力は627馬力というスペックを持ち、重量配分を考えて採用された「センターシート」、放熱のために採用された「純金張り」のエンジンフード、軽量化を考慮して採用されたチタン製工具など、一切のこだわりなく製造されたというクルマです。
1998年に時速391キロを記録しており、これは長らく「世界最速」として記録されることに。
その設計やパフォーマンスは「20年ほど先に行っていた」という先進性、現代ではどうやってもここまでコストをかけたクルマを作ることは出来ないということからか非常に人気が高く、現代のクルマとしては破格の「20億円前後」で取引されているのも驚きです。
さらにその維持費もまた常軌を逸しており、タイヤ交換には570万円(交換後はアライメントを取ったり各部調整の必要があるが、そのためのスタッフをマクラーレンから呼び、走行させるサーキットも借りなければならない)、何もしなくても平均して年間600万円くらいの維持費がかかるなど、何から何までもが「規格外」。
それにしても、今回紹介した「マクラーレンF1のエンジンを積んだBMW M5」が生き残っていたら、どれくらいの値で取引されていただんろうな、と気になったりします。