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なぜホンダ「WR-V」は国内販売されなかったのか!新型フイット"クロスター"がWR-Vに取って代わったと考えるその理由

2020/02/04

| ホンダは国内市場において、コンパクトSUVに”穴”があることを認識している |

さて、昨年日本に導入のウワサがあったホンダの海外専売(主にインドとブラジル)クロスオーバー、WR-V
これはフィットをベースにしたSUV風のコンパクトカーで、見ての通り先代フィットに対して「専用バンパー、樹脂製フェンダーアーチとクラッディング、前後ランプやグリル」を与えたもの。※下の画像
見た目はなかなかに魅力的で、現在のホンダにはないラインアップでもあり、「日本でも発売していたらけっこう売れたんじゃないか」と考えています。

なお、現在国産車販売ランキングを席巻しているのが「トヨタ・ライズ」「ダイハツ・ロッキー」ですが、この爆発的人気とも言える状況を見て、ホンダは「WR-Vを日本でも導入しておけば良かったな・・・」と後悔しているのかもしれません。

WRV_2017_Cam_12_F02_0

なぜ日本でWR-Vを売らかなかったのか

そして、ぼくが「ホンダがWR-Vを日本に導入しなかった」理由は大きく分けて3つある、と考えています。
いかがその理由ですが、順番に見てみましょう。

まずは「生産地」の問題がある

その理由の一つ目としては、生産工場の問題。
海外で販売されるWR-Vは、日本で作ったクルマを輸出しているわけではなく、ブラジルとインドで生産しています。
これの意味するところは、もし日本で売ろうと思うと「輸入コストがかかる」。
ただしブラジル、インドは日本よりも生産コストが低く、日本に輸入したとしても、国内生産に比較し「割高」にならない可能性も。

よって「輸入コスト」の問題は無視できるとしても、次に問題となるのは「使用しているパーツ」。
このWR-Vについてはもともとインドとブラジル向けに開発されているので(そして輸出を考慮していない)、使用されているパーツも現地のサプライヤーから仕入れているものが大半だと思われます。
現代では大手サプライヤーが世界中に支社を持っていて、規格などの統一化、互換性の強化などが進められていると思われるものの、一部で残るのが「現地独特のパーツ」。
生産地で高いシェアを誇る現地企業があったり、グローバル企業が現地企業を買収した後になかなか仕様の統一をできていない場合、さらに現地のみでそのクルマを販売することを前提にコストを下げたい場合にこういった問題が起こりますが、現地独特のパーツを使用したクルマを他の国に輸出すると、整備や修理の際に問題が生じることも(実際にそういった例もある)。

WRV_2017_Cam_02_F02

もちろん、最初からグローバルモデルとして企画されていれば「仕様違いに起因する問題」は起きないものの、当初から輸出が想定されていないクルマ、しかもコンパクトカーを「輸出可能な」状態にするには採算が合わない場合が出てくるわけですね。

生産する「工場」も問題だ

そして次は「工場」そのものの問題。
上述のようにWR-Vはインド、ブラジルにて生産されていますが、当然ながらこれらの国と、日本とが要求する品質には差があって、現在WR-Vを生産する工場ではそれを満たせない可能性が大。
よって、現在WR-Vを生産する工場では「日本向けWR-V」を作れないと思われます。

さらにホンダは「もしWR-Vを日本で発売するなら、日本で作る」という発言を行ったことも。
これはコンパクトカーや軽自動車の開発を統括する浅木泰昭執行役員がカートップに対して語ったもので、その理由としては「ただでさえ日本国内での生産量が減っているので、輸入によってさらに生産を落としたくない」。
これは雇用という観点から語られた、ホンダらしい意見でもありますね。

そして、もし日本でWR-Vを製造するとなると工場の生産設備(工作機械)にも問題が出てきて、というのも日本では「WR-Vのベースになるフィットがフルモデルチェンジを迎える」。
WR-Vは上述の通り先代フィットをベースとしたものですが、これと新型フィットとを並行して生産するのは非常に効率が悪く、今のホンダにそういった余裕はないかもしれません。

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ホンダにはこれ以上ラインアップを増やす余力はない

そして3つ目は「ラインアップ」の問題。
これまでのホンダは、仕様地やグレードによって細かく設計を変えており、この設計や製造コストが嵩んで「経営を圧迫している」と内外から非難を受けています。

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実際のところ、WR-Vについても「開発段階ではフィットのイメージが色濃く残ったクルマ」だったと言われ、しかしそれが拒否されたために現在のように「フィットと大きく変えた」デザインを持つに至ったそうですが、これは「地域ごとの自律性を持たせたかった」という理由と「ラインアップに幅をもたせたかった」「SUVとして認識してほしかった」「フィットと別のクルマだと認識してほしかった」からだそう。

ただ、こういった戦略が現在のホンダの「儲からない体質」を作ったということになり、ホンダ自身がそれを改善しようとしている今、ホンダは国内で(生産や販売に手間がかかる新規車種である)WR-Vを製造する可能性を消し去ったのだろうと考えています。

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どうなるWR-Vの日本導入

ただ、浅木泰昭執行役員によると、SUVは現在唯一「付加価値を与えて売価を稼げるカテゴリ」であり、「ホンダはSUVラインアップに穴がある」とも語っていて、現在のコンパクトSUV市場はスズキ・クロスビーやジムニーシエラ、最近だとダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズの独壇場となっており、しかしホンダはそれに対抗できるラインアップを持たないということについても言及。

つまりホンダはこの「穴」を埋めるクルマが必要だとも考えていることがわかります。
そして「SUVは儲かる」という認識があるために”やらない理由はない”、しかしこれまでのように「わざわざ別モデルとして開発することはできない」。

よって、ここで出てきた折衷案が新型フィット”クロスター”なんじゃないかと推測。
つまり、コンパクトSUVをホンダは持っていない、投入すれば他社のシェアを獲得できる、しかし新規車種を開発するとお金がかかる、じゃあ既存車種を活用してなんとかならないか、そうだそうだフィットを活用しよう、という流れだと考えているわけですね。

WRV_AMBIENTADA_LOJA_CENA_B_F03

ただしこの流れはよくよく考えると「WR-V登場の経緯」と一緒。
それでもWR-Vと異なる部分は「現在、ニューモデル開発にコストを掛けることができる状態ではない」という台所事情に加え、ホンダが「フィットで国内販売No.1を獲得したい」という思惑だろうと想像。

ホンダ・フィットというと、かつては販売ランキングNo.1に燦然と輝き、トヨタにとっては「どうしても(ヴィッツで)敵わなかった」というビッグネーム。
ただし現在はその販売をどんどん減らしてしまい、2019年においてはヴィッツはもちろんセレナ、ヴォクシーといったミニバンにも抜かれて「10位以下」へと転落しています。

ホンダはそんな状況に満足しているとはとうてい考えられず、よって「新型フィット」によってナンバーワン返り咲きを狙っていると思われ、そこで「一台でも多くフィットと名のついたクルマ」を売るため、フィットをSUV風に仕立てた「フィット・クロスター(CROSSTAR)」を、WR-Vではなく”フィット”という名にしたんだろうとも思うのですね(トヨタが”カローラ””アクア”の台数を稼ぐために採用している手法と同じ)。

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