| マツダは過去に自ら価格を上げて失敗した例から「プレミアム化の難しさをよく知っている |
さて、創立100周年を迎え、さらには「電動」「直6」「FR」といった新しい方面へとチャレンジするマツダ。
一見すると無謀のようにも思えますが、今回ベストカーがマツダ副社長、藤原清志氏へのインタビューを敢行し、その内容について公開しています。
これを見るに、「なるほど、そうだったのか」と思える部分も多く、ここでその一部を見てみましょう。
直6+FRは「プレミアム化」が理由では無かった
まずはマツダが進めている「直6」「FR」。
一部ではレクサスやメルセデス・ベンツ、BMWに対抗するためにFR化するとも報じられていますが、実際にはそうではなく、そこには「コスト」「パッケージング」という理由がある模様。
たとえばコスト面で言うと、これから厳しくなってゆく環境規制にエンジンを対応させようと考えた場合、V型エンジンだと左右バンクに補機類が「2列」必要になるものの、直6だと「1列」でいいのでコストが安く、さらに乱暴な言い方をすれば「4気筒に2気筒足せばいいので、開発コストが安い」。
さらにはハイブリッドとの組み合わせが容易であり(たしかにメルセデス・ベンツは一度は撤退した直6をハイブリッドとともに復活させた)、さらにはオフセット衝突のことを考えると「フレームを真っ直ぐに通せるので直6は有利」。
加えて「(エンジン横置き)FF」はもともと室内空間を最大化するために登場したものですが、最近では4WD化を前提に設計されることも多く、そしてFFであってもプロペラシャフトをフロアに通すと「結局はFRと室内の広さが変わらなくなる」としており、結果的には衝突安全基準を追求してゆく場合、一定の段階を超えると「エンジン横置きFFよりも、エンジン縦置きFRのほうが室内が広くなる」とも語っています。
マツダはこれらを考慮し、2008年の時点から”直6、FR”路線でゆくと決めていたようですが、長期的に物事を捉え、プレミアム化ではなく、むしろコストダウンのためにこれを進めているということに。
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そしてマツダが重視するアメリカ市場では「大排気量が求められる」と述べ、大排気量エンジンを積む場合、「むしろ「縦置きFR」のほうがコストが安く収まるようで、マツダ副社長はここが「誤解されている」と強く主張したいのでは、と感じさせられます。
ちなみに以前にも「プレミアムの意味を撮り間違えられている」という趣旨の発言も行なっていますね。
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なお、プレミアム化については、過去の失敗を鑑みるに、自分たちから高価格帯に移行することはできず、「お客様が選んでくれてはじめてプレミアムカーと呼べる領域に行ける」とも語っていて、これも世間一般で捉えられている「マツダのプレミアム化」とは大きく乖離があるのかもしれません。
そのほか、インタビューでは「室内の広いクルマというくくりで他メーカーの車と競合しないよう、室内の広さをメインに掲げたクルマを作らない」「マツダの規模では頻繁にモデルチェンジができず、モデルライフは長くなりがち」「上位グレード(SKYACTIV-X)で外観的差別化を行わないのは、過去に行なったグレード間での差別化の評判がよろしくなかったから」「多くの自動車が電動化に走るのは”幻想を見ているだけ”」とも語っていますが、こうやってマツダ上層部の考え方に触れると、やはり世間一般が考えているマツダが進もうとしている方向性、そして実際にマツダが向かってる先とは大きな乖離があり、マツダほど誤解されている会社もないのかもしれませんね(そこが問題といえば問題ですが)。
VIA:Bestcarweb