| バブル期にはフェラーリF40に2億円以上の値がついていた |
carview!にて、フェラーリバブルが崩壊か、という記事。
これによると、直近で落札されたフェラーリF40の価格がこれまでほど高くはないということに触れ、2012年からの落札履歴にスポットライトを当てていますが、まず落札価格は下記の通り。
2012年 71万5000ドル
2013年 115万5000ドル
2016年 126万5000ドル
2017年 154万ドル
2018年 171万ドル
2019年 171万ドル
2020年 138万6000ドル
現在は「転売」ブーム?
たしかにこれを見ると一貫して上がり続けていた相場が失速したようにも見え、大きく価値を下げているようにも見えますね。
ただ、今年はコロナウイルスという特殊事情があり、多くのオークションが「オンライン」となり現車確認ができなかったことも落札価格が低迷する理由だったのかもしれません(記事においても、これだけをもってF40バブル崩壊というのは時期尚早だと述べている)。
なお、近年のスーパーカー市場は異常とも言える相場の高騰が続き、端的な例はポルシェ911Rの「1億円超え」。
そこから他のスーパーカーの相場も一気に上昇し(過去モデルでなくとも、現代の限定スーパーカー=儲かるという認識が出来上がってしまった)、とくにフェラーリの各モデルにおいては大きな変動があったと認識しています。
ただ、これらについては「実需」よりも投機目的として買われているという側面が強いのだと考えられ、いわば絵画と似たようなもので、しかしこれはクルマだけではなく「バッグ(エルメスのバーキン筆頭)」「腕時計(ロレックスやパテックフィリップ)」も同様。
現在はネットを通じて世界中にモノを売ることができ、そのために「商圏」が広がったとも言え、売りたい人と買いたい人とのマッチングが生じやすくなっています。
そしてそれはスーパーカーやブランド品のような高額な商品でなく、「誰にでも買える」価格帯の製品でも同じことで、それが個人レベルでの転売ブームを呼び、ここ最近だとちょっと問題になっている「ガンプラ転売」といった流れにまで波及しているのかも。
スーパーカーの価格は伸び悩み?
話をスーパーカーに戻すと、スーパーカーやハイパーカーにおいても転売が活発化しており、限定モデルが販売されるとすぐに「生産枠」が転売されるのが現在の状況です。
そしてそもそも「限定モデル」について考える必要がありますが、これは仕様等をそのモデル専用にとどめ、かつ生産台数を絞ることで希少性を演出して価値を高めたり、コレクターに「複数の、仕様違いの(別の)限定モデルを同じ顧客に購入してもらうため」の戦略だと考えられます。
たとえばブガッティは「シロン」を500台限定にて発売していますが、たとえ顧客の要望によってカスタムできるといえど、「シロンのみ」を500台作ると、その希少性が下がり、かつ一人で複数台購入する人も出てこないかもしれません。
ですが、「シロンスポーツ」「シロン ピュールスポール」「シロン スーパースポーツ300+」といった限定モデルを設定し、トータル500台という枠の中でこれらを消化してゆけば、ベースモデルのシロンの数も少なくなりますし、その他の限定モデルの数はもっと少ないということで各モデルの希少性が高まり、かつコレクターであれば「シロンとシロン スーパースポーツ300+」といった複数買いも出てくることになります(実際にそのような人は多いようだ)。
そうやって現代のスーパースポーツは「小刻みに」限定モデルを設定する傾向にあるのですが、それはつまり「様々なスーパーカーやハイパーカーが登場し、飽和状態になりつつあるので、そうでもしないと売りにくい」現状を反映しているのかも。
これまでの例だと、フェラーリやランボルギーニはもちろん、アストンマーティンやマクラーレン、ポルシェの発売するハイパーカーも順調に「完売」してきたものの、つい先ごろだとマクラーレン・エルヴァのように「完売しない」ハイパーカーも登場しています。
ただ、これはマクラーレンだからどうこうというわけではなく、おそらくは「もうそろそろ市場が飽和する」ということを意味しているのだと思われ、たまたまその発端がマクラーレンだった、ということなのかもしれません。
そういった事情を鑑みるに、今後はアストンマーティンや、新興スーパーカー/ハイパーカーメーカーの限定モデルも完売しなくなっている可能性があり、全体的に転売価格、オークションでの落札価格も下がってくる可能性もありそうです。※ただ、フェラーリの限定モデルが完売しないということだけは絶対に起こり得ないとは思う
なお、こういった事情については、「実需」ではなく「転売需要」で買われていた限定スーパーカーの人気を「本物」だと認識し、限定モデルを乱発してしまった自動車メーカー側にも責任があるのではないかと考えていますが、例えばちょっと前の「マスク」が実需ではなく転売目的で購入され、実需が満たされると一気に相場が下落してしまったのと同じようなことなのかもしれません。
もちろんスーパーカーメーカーも販売台数を伸ばすために「限定商法」にて小刻みに限定モデルを追加せねばならないという事情があるものの、やはりここ最近のスーパーカー市場の拡大はひとつの「バブル」であったのかもしれませんね。
ただ、フェラーリF40はじめ、過去のスーパーカーについては、現代のスーパーカーよりも圧倒的に生産台数が少なく、そして現代の基準では「もう作ることができない(代替品がない)」という価値も含んでおり、一時の上下はあれど、長期的に見て値を下げることはないんじゃないかとも考えています。
参照:carview!