| パガーニはこのユートピアでその排他性を極めたと言っていい |
すでにクーペ、ロードスターとも完売だと言われるが
さて、パガーニが予告どおりウアイラ後継となるハイパーカーを発表。
これまではコードネーム「C10」の名で呼ばれていたものの、発表に際し正式に「ユートピア(Utopia)」という呼称が与えられることもアナウンスされています。
一見しての印象は「エクストリーム」というよりは優雅なクラシックカーという印象もあり、ある意味ではスチームパンクっぽさも感じさせ、「昔の人が考えた未来を、今の人が改めて考えた」というイメージも。
もちろんネガティブな意味合いはなく、そこには芸術性すら「見え隠れすると認識していますが、常々パガーニ創業者、オラチオ・パガーニ氏は「レオナルド・ダ・ヴィンチへの敬愛」を語っているので、こういったレトロなデザインに帰着するのは当然のことなのかもしれません(レオナルド・ダ・ヴィンチの考えた一連の機械=マッキナこそが、昔の人が考えた未来であった)。※映画「ロケッティア」を思い出させるデザインでもある
ちなみに価格は217万ユーロ(日本円で3億1150万円)に設定され、今回発表されたクーペ版、そして今後発表されるであろうオープンモデルについては「すでに完売」している、とも報じられています。※限定台数については公開されていない
パガーニ・ユートピアはこんなクルマ
そこでこのパガーニ・ユートピアを見てみたいと思いますが、メルセデスAMG製の6リッターV12エンジン搭載ということは変わらずとも、出力は864馬力にまで引きあげられ、7速マニュアル・トランスミッションを装備していることが大きなトピック。
ハイブリッド無しで864馬力というのはまさに驚異的としか言いようがありませんが、このエンジンは2,800回転から5,900回転までで最大トルク(1,100Nm)を発生させるフレキシブルさを持つといい、許容回転数は6,700回転とアナウンスされています。
現時点で加速性能や最高速といったスペックは公表されておらず、しかしパガーニによれば「ユートピアは世界中の排ガス規制に適応している」。
エンジン搭載位置はもちろん車体ミッド、そして車体構造はウアイラに準ずるようにも見え、しかしその美しさにはいっそうの磨きがかかっているようにも見えますね。
サスペンションは前後ダブルウィッシュボーン、そしてプッシュロッド式を継続採用しますが、これは「セミアクティブ」サスペンションだといい、サーキット走行でのメカニカルグリップと行動での乗り心地の良さを両立するものだと紹介されています。
ホイールはフロント21インチ、リア22インチ(APPテック製)のセンターロック構造を採用のする鍛造アルミ、そしてホイールにはカーボンファイバー製のディスクが装着され、そこに巻かれるタイヤはピレリPゼロ。
ブレーキキャリパーは見たところ(ウアイラ同様の)ブレンボ製の軽量タイプ。※オフィシャルフォトではレッドキャリパーとゴールドキャリパーが見られ、ホイールもシルバーとゴールドが紹介されている
パガーニ・ユートピアのデザイン完成までにかかったのは6年
なお、パガーニによれば、このユートピアのデザインを完成させるのに要したのは6年。
その甲斐あってひと目見て「パガーニ」だと認識でき、さらにはパガーニらしさが満載となっています。
全体的にはウアイラとの関連性を強く思わせ、しかしヘッドライトにはフェンダー形状にはゾンダの面影も。
リアエンドにはパガーニのロゴに用いられる「楕円」が再現。
ルーフからリアエンドにかけては力強い隆起が続き・・・。
クワッドテールパイプへ。
なお、ハウジングの上部には放熱のためかルーバーが仕込まれているようですね。
ジェット機のタービンにインスパイアされたというテールランプは新しいデザインを持つフロートマウント。
ちなみにパガーニはその車両価格に比較すると灯火類が「普通すぎた」という印象を持っていますが、このユートピアでは価格に見合う先進性、そして芸術性を持っているようですね。
そしてリアバンパーにはユートピアのロゴ。
今後登場する派生モデル、ワンオフモデルのロゴもここへ表示されることになりそうです。
リヤスポイラーは「ブリッジ」構造。
フェンダーミラー形状そのものはウアイラから引き継いだように見え、しかし「吊り下げ式」に。
ステー、ミラーハウジングともにエアロ形状を持つことがわかります。
上から見ると文字通りの「ティアドロップ」キャビン。
ボディパネルには連続性が持たせられ、これによって「昔の、職人が板金で叩き出していた」1枚もののカウルを持つ時代のレーシングカーっぽい雰囲気も。
ドアはディへドラル構造を持ち、しかしラフェラーリやマクラーレン、マセラティMC20のように足元からガバっと開くのではなく、ボディの下半分を残したまま開きます。
これも「昔のレーシングカー」をイメージしたか、ドア開閉のために「パネルの連続性が途切れるのを嫌った」のかもしれません(もしくはその両方)。
前後カウルが開くとこう。
カウルはクラシカルな「レザーストラップ固定」です。
パガーニ・ユートピアのインテリアはこうなっている
そしてここからはパガーニ・ユートピアのインテリア。
ディヘドラルドアを開けて室内を見てみると・・・。
さらにレトロに、そして高級になったインテリアがお出迎え。
円形のエアコン吹き出し口などおなじみのデザインアイコンも見られます。
そしてこちらがユートピアでは最大の特徴となりそうな「7速マニュアル・トランスミッション」。
ゾンダでは6速マニュアル、ウアイラでは7速シーケンシャルを採用していたものの、ユートピアでは7速マニュアル、もしくは7速シングルクラッチ(ロボタイズドトランスミッション)を選択可能。
なお、デュアルクラッチは重量がかさむために採用が見送られたといい、その甲斐あってユートピアではウアイラ比で-70kg、つまり1280キロという軽量性を誇ります。
シートはクッション形状ともども「レトロフューチャー」なデザインを持ち、レザーはしっとりとした光沢のあるこれまた「レトロ」な質感を持っています。
夜間だとこんな感じ。
間接照明を多用しており、(ウアイラ時代からではありますが)これによってさらなる優雅さを感じられるように思います。
全般的に見て、ゾンダやウアイラとの共通性が感じられ、さらにパガーニらしさを盛り込み、その上で既存モデルにはない新しさも取り入れることにより、パガーニオーナーにとって「自身のガレージに納めるべき理由」を強く感じさせるニューモデルとなったという印象ですね。
加えて、「ガソリンエンジンオンリー」「マニュアル・トランスミッション」採用、タイムレスなデザインを用いたことで将来に渡り高い価値を発揮することは間違いなく、自動車史に残る傑作だと言っていいかもしれません。