| ただし、フェラーリ一族といえど、現在の最大株主であるフィアット創業者一族に反対できないという密約付き |
ピエロ・フェラーリはエンツォ・フェラーリの後継者にふさわしい人物だった
さて、現在唯一の「エンツォ・フェラーリの息子」、ピエロ・フェラーリ。
エンツォ・フェラーリは、本妻であるラウラ・ドメニカ・ガレッロとの間にアルフレードという息子を設けていますが、アルフレードは24歳にしてこの世を去っており、それを偲び、アルフレードが生前に開発を主導していたV6エンジンを搭載したクルマに対し、エンツォ・フェラーリが(アルフレードの愛称である)”ディーノ”の名を冠したのはよく知られているストーリーかと思います。
そして一方のピエロ・フェラーリについては、エンツォ・フェラーリの愛人であったリーナ・ラルディ・デリ・アデラルディとの間に生まれた庶子であり、本妻のラウラ・ドメニカ・ガレッロが死去した後に認知され、正式にエンツォ・フェラーリの後継者となったわけですね。
ピエロ・フェラーリはその子孫へと株式を譲渡する計画を進行中
ピエロ・フェラーリ(1945年生)はエンツォ・フェラーリが1988年に死去した後にフェラーリの副会長へと就任していますが、フェラーリF50の開発においては「公道を走るF1」という過激なコンセプトを実現させたり、ピニンファリーナが新型フェラーリのデザインスケッチを作成した際にボディカラーがレッドでないのを見て、泣きながら「なぜフェラーリはレッドでなければならないのか」をこんこんと説いたという話があり、このあたりはさすがエンツォ・フェラーリの息子といったところかもしれません。
そんなピエロ・フェラーリですが、エンツォ・フェラーリから10%のフェラーリの株式を譲渡されており、今回、この株式について「自身の死後、ピエロ・フェラーリの子どもたちに譲り渡すために家族信託を設立した」と報じられています。
つまりは10%の株式を手放さず、家族に残すことに決めたということになりますが、これは「資産を残す」という意味以外に、ピエロ・フェラーリの死後も、その家族がフェラーリに対して大きな議決権を持つということを意味します。
なお、その株式を受け継ぐ子孫とは娘のアントネラ、孫のエンツォ・マッティオリ・フェラーリ、ピエロ・ガラッシ・フェラーリの3名となりますが、のちのち、この3名がフェラーリに対してなんらかの発言力を持ったり、経営に携わる可能性も出てくると考えていいのかもしれません。
ちなみにですが、ピエロ・フェラーリの資産は46億ドル(現在の為替レートで約6100億円)だとも言われ、このほとんどはフェラーリの株式によって占められていると言われ、この莫大な資産は上場依頼300%以上も上昇したフェラーリの株式の含み益ということになりますね。
つまりはいかに資産が膨大なものであったとしても、株式を売却しない限りは「現金にならない」ということですが、ピエロ・フェラーリはイタリアの高級ヨットビルダー、フェレッティ・グループの株式も所有し、エンジニアリングサービス会社HPE COXAの会長も務めているというので、あちこちから多大な収入を得ていることは間違いなさそうです(もちろんフェラーリからも役員報酬を得ているはず)。
今後もフェラーリを動かすのはフィアット創業者一族
なお、フェラーリの大株主は現在でもフィアット創業者一族であり、その始祖であるジャンニ・アニエッリの持株会社、エクソール(Exor)が24%を保有しています。※フェラーリは1969年にフィアット傘下に入り、その際にエンツォ・フェラーリの持ち株比率は10%にまで低下しており、この10%がピエロ・フェラーリに譲渡されている
そのため、フィアット創業者一族からはジョン・エルカーン(フェラーリ会長)、ラポ・エルカーン(フェラーリ副社長を詰めていたとされる。テーラーメイドを導入した人物でもある)といったメンバーがフェラーリに参加していますが、ピエロ・フェラーリは自身の10%の株式を子孫に託すといえど、フィアット創業者一族とは対立しないという密約がなされているといい、「フェラーリのあらゆる株主総会の議題について共通の見解を形成する」という合意がなされているようですね(つまり、発言力を持つと言っても、フィアットの肩を持つ発言しかできない)。
フェラーリは2015年10月21日に上場(IPO)を果たし、その際にフィアット(当時はFCA)からの分離がなされていますが、上述の通り最大株主はフィアット創業者一族のままで、現在フェラーリはどこの傘下にも属さない独立企業ではあるものの、事実上はフィアット一族の影響を強く受けており、またその庇護のもとにあると考えられます。
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参照:Bloomberg