| テスラCEO、イーロン・マスクCEOがここまでの状況を予想していたのかどうかはわからない |
いずれにせよ、「価格がモノを言う」状況に変わりはなく、テスラはさらに価格を下げてくるだろう
さて、テスラが2023年第1四半期(1月~3月)における販売台数が422,875台となり、前四半期から4%増加、1年前と比べると36%増を記録したと発表(四半期ベースだと過去最高の数字)。
この数字は、現在の厳しいインフレ、そして先行き不透明な経済状況において素晴らしい数字ではあるものの、アナリストが予測していた432,000台、そしてイーロン・マスクCEOが宣言していた前年比152%に比較すると低い伸びにとどまっています。※ただしブルームバーグは421,164台と予測しており、この数値は超えてきた
なお、中国の自動車メーカーはじめ様々な競合が登場している中で販売を伸ばしたことは特筆すべきであり、これは主に値下げによる効果であると考えていいかもしれませんね。
「値下げしていなければ、醜態を晒していただろう」
テスラは今年1月、ウォール街が算出していた2022年の納車予想を下回ったと発表した後、全世界で最大20%の値下げを行ってEV業界を価格戦争へと突き落とし、かつて65,990ドルで販売されていたベーシックな(そしてもっとも販売が多い)モデルYは、現在54,990ドルにまで下がっています。
ディープウォーター・アセット・マネジメントのマネージング・パートナーであるジーン・マンスター氏は「値下げ をしなければ、テスラは醜態をさらしていただろう。このことが物語っているのは、経済が厳しくなっているということだと思う。実際に値下げによって販売は加速を見せたが、イーロン・マスクが示したレベルには達しなかったようだ」とコメントしており、「外部からの混乱がなければ、2022年の130万台から2023年の納車台数は200万台に達する可能性がある」としていたイーロン・マスクCEOの見通しが甘かった可能性を示唆しています。
なお、テスラの生産台数は納車台数を上回り、1~3月期の生産台数は440,808台だと報じられており、納車台数の大まかな内訳だと「モデル3/モデルY」の納車台数を前四半期より6%増やしたものの、高価格帯の「モデルX/モデルS」の納車台数は38%減と低迷することに。
この低迷については「販売が伸びなかったのか」「生産が追いつかなかったのか」は不明ではあるものの、昨年末の報道だと、モデルSやモデルXの納車待ち期間は平均すると1年半ほどだとされていたので、ここから察するに「生産が追いつかなかった」のかもしれません。
テスラはさらなる値下げを行う?
販売地域の内訳については現在公表されていないものの、おそらくは「中国が最大】であることは想像に難くなく、そして今回思ったほど販売が伸びなかったことについては中国市場での苦戦が考えられ、バークレイズのアナリスト、ダン・レヴィ氏によれば「テスラはさらなる値下げを迫られるかもしれない」。
テスラの値下げは他社を排除するための武器として機能した一方、コスト的に優位性を持つ中国の自動車メーカーをさらに勢いづかせる結果ともなっており、とくにBYD、Xpengの値下げによる(テスラへの)対抗は非常に”やっかいである”とも。
中国におけるマーケットリーダーであるBYDは、今年1~2月の中国市場におけるいわゆる新エネルギー車(EVやPHEV、水素駆動のクルマが含まれる)の販売台数の41%を占めており、これに対しテスラのシェアは8%にとどまっているため、ここからテスラがどう出るかには大きな注目が集まります。
順当に考えるならば、ダン・レヴィ氏が語るように「さらなる値下げ」ということになりそうですが、おそらくは(中国の自動車メーカーでは最も高い利益率を誇るという)BYDもテスラに対して徹底抗戦を行うことになるものと思われ、そうなるとテスラは自ら仕掛けた価格競争によって大幅に体力を削られることになり、そしてこれを回避するには(3月のインベスター・デイではあまり語られなかった)25,000ドルのEVを一刻も早く発売するしかないのかもしれません(ただ、イーロン・マスクはその前に、モデル3やモデルYにおいて一層のコストダウンが可能だとも述べている)。
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参考までにですが、こちらはBYDの販売台数となっていて、昨年比で「倍程度」伸びていることがわかりますが、これらのすべてがEVではなく、この数字の中でのEV比率は48%だと報じられており、となるとBYDは2023年第一四半期に248,434台を販売したという計算になりそうです(BYDは中国では大きな勢力ではあるが、EVのみに絞るとまだまだテスラよりは規模が小さいようだ)。
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参照:Reuters, CarNewsChina