| もともとEVはアーリーアダプターしか購入しないと言われていたが |
現在、既存自動車メーカー各社とも同様の状況に陥っている
さて、フォルクスワーゲングループが第三四半期の報告を行うともに、2023年1~9月における販売や受注、利益に関する説明会を開催。
第3四半期のみのだとグループ内の全ブランド/全パワートレーンにて(前年同期比で)販売台数21%増、売上高24%増、営業利益34%増という素晴らしい結果を残しています(昨年同時期にはまだサプライチェーン問題から抜け出せずにいた)。
フォルクスワーゲングループのEV販売は「好調ではあるが楽観視できない」
そこでバッテリーEV(BEV)に視点を移すと、2023年1~9月においてフォルクスワーゲングループはワールドワイドにて531,500台の車両を販売しており、この数字は2022年の同時期に比較すると+45%という大幅増。
これによってBEVの販売比率は7.9%にまで上昇しており、市場別に見ると地元欧州が最大の341,100台(+61%)、中国だと117,100台(+4%)、米国では50,300台(+74%)を記録していて、このままの伸び率を維持できれば、フォルクスワーゲンいわく「2023年通年では、VWの販売台数の8~10%がBEVになる」。※中国の成長率がやはり低く、これは地元の新興EVメーカーにシェアを奪われているものと思われる
モデル別の状況を見てみると、1月から9月までの期間、VWにおいて最も売れたEVはID.4とID.5で、これらは合わせて16万2100台を販売済み。
次いでID.3が90,500台、さらにアウディQ4 e-tronが77,900台、シュコダ エニヤック iVが54,400台、クプラ・ボーンが32,300台、そしてアウディ Q8 e-tronが21,800台と続きます。
フォルクスワーゲンのEV販売には懸念も残る
一方、こうした「好調な販売」にも暗雲が立ち込めており、というのもフォルクスワーゲンの最高財務責任者兼最高執行責任者であるアルノ・アントリッツ氏が「BEVの受注残が第3四半期末時点で15万台にまで減少し、昨年の30万台から大幅に減っている」と述べたため。
VWにてマーケティング・営業責任者を務めるヒルデハルト・ウォルトマン氏はも今月初めには受注の縮小についてコメントしており、「需要が縮み、そのために一時的に生産を休止する」とも語っており、その未来はけして明るいとは言えないようです。
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今回の説明会では「受注が減少している」理由について語られなかったものの、様々なアナリストの推測によれば「EVはまだまだアーリーアダプターのみが購入する乗り物であり、需要がすでに満たされつつある」こと、そして「金利が非常に高くなっており、車両価格の高さとあわせて家計にかかる負担が大きく、EV購入から足が遠のいている」ことが指摘されています。
そしてこういった状況はフォルクスワーゲンだけではなく、ほかの自動車メーカーにも当てはまっており、GMとフォードも「これまでのようにEV事業へと積極投資を行わない」というコメントを発していて、EVシフト自体が暗礁に乗り上げつつある状況を示唆しているようにも思います。
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ただ、EVシフト自体は逃れることができない流れでもあり、しかしその流れに乗っているのは主に「中国の自動車メーカー」。
そして日米欧の自動車メーカーは(テスラを除いて)この流れに乗ることができておらず、なんとかして流れに乗る方法、もしくは”流れを変える”方法を考え、そして実行する必要に迫られている段階なのでしょうね。
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