| スポーツカーが好調だと言われる中、すべてのモデルの販売が伸びているわけではないようだ |
今評価されているスポーツカーには「アナログ」「シンプル」「レトロ」「タイムレス」といったキーワードが共通するようだ
さて、マツダが2023年の北米における販売実績を公開し、全体では(前年比)+23.6%であったと報告。
車種別に見てみるとマツダ3が+10.3%、ロードスター(MX-5)が45.9%、CX-30が+46.4%、CX-5が1.8%、CX-9が+49.4%、CX-50が109.8%、MX-30が+69.0%となっており、全般的に好調であったことがわかります。
一方、CX-5は完全にCX-50に食われた形に見えますが、台数ベースだと(通年で)CX-5は153,808台、CX-50は44,595台なので、依然としてCX-5はマツダにとっての稼ぎ頭であることも理解できますね(CX-5はマツダでもっとも売れており、次に売れているCX-30の販売台数はその半分程度の77,075台である)。
特筆すべきは「ロードスター」である
なお、ここで特筆すべきはロードスターの検討ぶり。
「ロードスター」として見ると+45.9%ではあるものの、オープントップモデルはなんと+78.0%の成長を記録しており、リトラクタブルハードトップのRFだと+22.7%。
ただし販売台数は両者ともに拮抗しており、オープンが4,591台、RFが4,382台という内訳です。
興味深いのは、少し前まで「不人気」とされていたオープンスポーツがここへ来て販売を伸ばしていることで、これについてはマツダからは明確なコメントが出ておらず、しかしケータハム同様、「これから先、もう作られることはないであろう」小型で軽量なオープンモデルに人気が集まっているのかもしれません。
つまりはこれから電動化へと時代が移り変わる中、ガソリンエンジンを積むライトウエイトスポーツは生き残ることができず、そしてピュアエレクトリック時代では当面「ライトウエイトスポーツ」そのものが存在できないであろうこと。
これについては「人気どうこう」という問題ではなく、バッテリー重量の関係でどうしてもクルマが重くなり、ガソリンエンジンを積むライトウエイトスポーツと同程度の重量を再現することが不可能に近いという現実があること、そしてまだまだ高止まりするバッテリー価格に起因し、車両そのものが高価になってしまうこと。
小型なのに「重くて高い」スポーツカーを購入する理由はほとんどなく、さらに軽くしようとすればするほど(しかしそれでもガソリン車ほど軽くならない)航続距離が短くなってEV性能がスポイルされてしまうというのが現在の実情であり、よってロードスターのような小型で軽量なスポーツカーは将来的に消え去る可能性が非常に高いと考えられています。
もちろん、バッテリー性能の向上や生産コストの低下も期待でき、それらが実現できれば「ガソリン車よりも軽量で運動性能が高い」エレクトリックスポーツが誕生するかもしれませんが、今の時点ではそれがいつになるか全く分からず、よって期待することすら難しいわけですね。
そのため、おそらくは(マツダのみではなく、自動車業界としても)最後の軽量コンパクトなスポーツカーの一台であるロードスターに注目が集まっていると考えても不思議ではなく、ロードスターはいま「適切な評価を受けている」のだと考えて良いかと思います。
そしてその評価は「ライバルのように大型化・ハイパワー化せず」初心に戻るというモデルチェンジを行ったからこそだとも考えられ、マツダのエンジニアたちの努力の賜物だとも考えていいのかもしれません。※世界的に見て、ND世代に入ってからロードスターの販売が増えている
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同じ「スポーツカー」でも明暗が分かれる
なお、少し前には「日産(R35)GT-RとフェアレディZの販売が大幅に伸びた」とお伝えしましたが、スポーツカー全般の販売が好調かというとそうではなく、というのもトヨタではGR86の販売(11,078台)が-7.7%、GRスープラの販売(2,652台)が-46.4%という大幅減となっているため。
こちらについても理由は定かではないものの、GT-R、フェアレディZの販売が伸びたのとは逆に「GR86、GRスープラはタイムレスな存在ではないと思われるから」なのかもしれません。※仮にGRスープラが、”80スープラへのオマージュ”という形でキープコンセプト的なモデルチェンジを行っていれば、結果はまた違ったのかもしれない
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