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ポルシェを復活させたのはボクスターだが、ポルシェの経済基盤を盤石にしたのはカイエンだった。両者ともに適切な時期に登場し適切な役割を果たしている

ポルシェを復活させたのはボクスターだが、ポルシェの経済基盤を盤石にしたのはカイエンだった。両者ともに適切な時期に登場し適切な役割を果たしている

| 今日のすばらしいポルシェ911があるのはボクスター、そしてカイエンのおかげでもある |

ポルシェはボクスターとカイエンによって「新しい開発と製造手法」を身に着けたのだとも考えられる

さて、前回はどん底にあったポルシェの業績を回復させ、「新しいモデル投入の必要性」をポルシェに理解させたボクスターについて誕生の経緯を説明しましたが、今回は2002年に新しく投入されたカイエンについて。

たしかにボクスターはポルシェの販売を大きく押し上げたものの、当時まだまだ「ボクスターと911だけ」ではポルシェという会社を維持するのに十分ではなく、ポルシェは会社をさらに成長させるための起爆剤としてカイエンを企画し導入しています。

ポルシェ・ボクスターは「なぜ911と同じ顔」で登場し、そもそもどういった経緯で企画され、ポルシェに何をもたらしたのか?
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ポルシェ社内においてもカイエンには「懐疑的」であった

ポルシェは生粋のスポーツカーメーカーとして誕生しており、よって「SUV」を開発するという決定はポルシェ社内と忠実な顧客ベースの両方で懐疑的に受け止められ、多くの純粋主義者は、ポルシェがスポーツカーではない車両を製造することでそのルーツを放棄しているとその姿勢を非難したわけですね。

しかし当時のCEOであったヴィンデリン・ヴィーデキング率いる経営陣は、世界の自動車市場が変化していることを認識しており、SUVは特に北米などの市場で人気が高まっていて、当時の裕福な消費者は「トラック」「オフロード車」ではない、乗り心地がよく家族全員を収容でき、さらに高級感、パフォーマンス、実用性を兼ね備えた(サルーンに代わる)車両を求めていたという時代です。

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なお、カイエンは当初メルセデス・ベンツMクラスの車体を流用して開発を進める予定であったものの、「両者の埋めがたい溝」によってこの話が破綻してしまい、その後にフォルクスワーゲンとの協業の話が立ち上がって「コロラドプロジェクト」がスタートすることに。

ポルシェ・カイエンは当初「メルセデス・ベンツMクラスをベースに」そのハイパフォーマンス版として企画されていた!実際に開発が進められるも破局を迎えることに
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つまりカイエンはフォルクスワーゲンとの共同開発によるものであり、しかしカイエンはポルシェのパフォーマンス志向のDNAに忠実でありながら、これらの要求を満たすように企画されていますが、フォルクスワーゲン側ではトゥアレグを生産し、ポルシェはフォルクスワーゲンの持つSUVの設計と生産に関する専門知識を活用することができるというお互いのメリットも存在していたわけですね。

さらにポルシェは世界のオフロード車に対抗することを目指し、ポルシェトラクションマネジメント、ローレンジトランスファーケース、センターロックディファレンシャルを搭載していますが、同社はこれを単なるSUVではなく”ポルシェ”にしたいと考えていたため、最高速度は時速240キロを超え、オンロードでの高いコーナリング性能を備えています。※当時最高速200km/hを超えるオフローダーは非常に珍しい存在であった

なお、ポルシェはカイエンを「SUV」と呼ぶことを嫌っていて、発売当初から「スポーツカー」だと主張しており、各種プロモーションやメディア向けの試乗イベントでもサーキットを選び、縁石に積極的に乗ってコーナーをクリアするなど「911にはできないような」サーキットの攻め方ができると主張したことも。※今では決算発表の場など、公式にカイエンやマカンを「SUV」だと表現する場面もある

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カイエンは大きな成功を収める

果たしてカイエンはその発売直後から大きな成功を収めることとなり、そのパワフルなエンジン、正確なハンドリング、豪華な内装によってポルシェの既存顧客や、日常の運転や家族用車として使用できるポルシェを所有することに魅力を感じる新規購入者の間で人気を博すことにみごと成功。

加えて(共同開発車両ならではの)カイエンの高い利益率に加え、米国や中国といった主要市場での好調な販売はポルシェの財政を大きく潤すこととなり、このお金によってポルシェは新技術への投資、さらにはその後の数年間で登場するパナメーラやマカンなどの製品ラインナップの拡大が可能となっています。

さらに重要なのは、カイエンの成功によりポルシェはスポーツカーのラインナップへの投資を継続する財政的安定性を獲得し、911、ボクスター、ケイマンなどのモデルを継続的に改良し、市場で最高のスポーツカーを提供し続け、最終的には918スパイダーやタイカンなどのモデルをリリースすることができたということで、これはロータスが「スポーツカーを作って欲しいと我々に願うのであれば、それを実現するために我々はまずSUVを作る必要があるでしょう」と述べたことからも理解ができるかもしれません。

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ロータスのボス「我々にスポーツカーを永遠に作って欲しい?であれば、まず今はSUVを作ろうではないか。それがスポーツカー継続の唯一の方法だ」
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ボクスターとカイエンはどちらもポルシェの変革において重要な役割を果たしましたが、まずはボクスターが当初の救世主として登場してポルシェブランドの魅力を拡大するとともに生産コストを削減するという手法を確立し、その後カイエンが同社に長期的な基盤を与える存在としてそこへ加わり財務的安定をもたらしていて、これらはいずれも適切な時期に適切な価格にて登場したと考えて良いかもしれません(つまりタイミングがポルシェ的にも、世界の流れ的にもぴったりマッチしていた)。

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とくにカイエンはSUVという、ポルシェにとってまったく新しい市場へと参入したにもかかわらず成功を収め、ポルシェの「パフォーマンス重視のルーツを守りつつ、新しい車両カテゴリーに進出でき、しかも高い収益性を確保できる」能力を示した好例となっており、これがマカンやパナメーラ、タイカンといったブランニューモデルへと続く道を作ったということに。

いずれにせよ、今日販売されているすべての911は、この2つのモデルがもたらした経済的安定性のおかげであり、ぼくらはボクスターとカイエンには「頭が上がらない」ということになりそうですね。

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