| 今まではスポーツカーにこだわっていたがためにお金を稼げず、新しいスポーツカーも作ることができなかった |
今となってはスポーツカー並みの性能を持つSUVも登場しており、SUVを軽視することはナンセンス
さて、ロータスのリーダーは2021年1月を境に、それまでのフィル・ポップハム氏からマット・ウインドル氏へと交代していますが(肩書はマネージング・ディレクター)、このマット・ウィンドル氏は「技術者出身」というちょっと変わった経歴を持っています。
まず同氏は1998年にロータスへとCAD設計者として加わり、その後はいったんロータスを離れてテスラ、ボルボ、ケータハム等にて実績を積み上げ、そして2017年にロータスへとカムバック。
その後はエンジニアリング部門を率いてきましたが、その統率力を買われてロータスの新しいリーダーへと抜擢されることとなったわけですね。
「スポーツカーを作って欲しいという顧客の願いを叶えるならば、SUVを作るしかない」
そして今回、マット・ウインドル氏はちょっと面白い発言をしていて、それは「我々にスポーツカーを作って欲しいと顧客が求めるのであれば、そのために我々はSUVを作ろうではないか」。
つまり現在はスポーツカーだけ作っていてはお金を稼げず、そうなると新しいスポーツカーを作るどころか会社の存続すら危うくなり、それが「我々が過去にお金を稼げなかった理由であり、新しいスポーツカーに投資できなかった理由」だと語っているわけですね。
これは至極もっともな話であり、端的な例だと、ポルシェが「カイエン」の投入によって死の淵から蘇り、今では「もっとも儲かっている自動車メーカーの一つ」となったことからも容易に理解ができると思います(1990年代にポルシェは経営不振に陥り、トヨタとホンダが買収に乗り出したことがある)。
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そしてポルシェの例だと、現在販売台数の半分以上は「SUV」ではありますが、これによって大量のお金が入るようになったことに加え、そのお金をスポーツカーの開発に投資して「より優れたスポーツカーを作ることができるようになった」わけですね。
もしポルシェがスポーツカーのみにこだわっていたら、すでにポルシェは消滅しているかもしれませんし、存続していても「パっとしない、古い設計のままのスポーツカー」を作っていたかもしれません。
参考までに、かつて清水草一氏が「マツダのファンがマツダに望んでいるのは倒産である」というショッキングなコラムを記しており、その意図とは「マツダにスポーツカーばかりを作ってほしということは、マツダからどんどんお金を流出させることに繋がり、お金を稼ぐ手段を断つにも等しく、その先にあるのは倒産しか無い」というもの。
これについても「まったくもって正論」だと考えており、企業には存続するためのお金が必要であって、そのためには不本意なことであってもやらざるをえず、そしてそうやって得たお金でようやく好きなことができるようになるわけですね(ぼくらだって、生活のためにやりたくないことをやらなくてはいけない時がある。というかそんな時ばっかり)。
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ロータスは「メインストリーム」を狙う
そしてマット・ウィンドル氏が狙うのもまさにポルシェの復活劇そのもので(ただし当時のSUVはブルーオーシャンだったが、今のSUV市場はレッドオーシャン)、SUV(今回のエレトレ)の発売、そしてさらに小型SUVやサルーンの投入によって販売規模を年間数万台にまで成功させ、獲得した資金を「直接スポーツカービジネスに投じたい」という計画を持っているもよう。※日本のロータス挿入代理店、LCIがELETREの日本語表記を”エレトレ”と行っており、この読み方で固まりそうだ
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なお、今回の一連のコメントは、エレトレの発表後に巻き起こった批判に対しての回答だとも考えられ、実際に「エレトレが売れることで我々がスポーツカーを作り続けることができるならば、エレトレは必要であり、重要な存在である」とも述べています。
正直なところ、ぼくはエレトレに対する批判はナンセンスだとも考えていて、ポルシェはもちろん、ロールスロイス・カリナン、ランボルギーニ・ウルス、ベントレー・ベンテイガ、アストンマーティンDBXの例を見ても、SUVはその会社のDNAを維持するために欠かすことはできず、むしろSUVを発売しないという姿勢を貫いているマクラーレンの業績が急速に悪化しているところを見ても、「スポーツカーメーカーに対し、SUVを作るなというのは、倒産しろと言うに等しい」のだと考えています(もしマクラーレンがアウディに買収されたら、光の速さでSUVを発売するだろう)。
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