| そうでもしなければ自動車業界から「失業の嵐」が押し寄せてくるであろう |
ここで政府が無策であることは許されない
さて、現在は「EVが売れず」、よって各自動車メーカーが「ラインナップのEVへの転換速度を緩め、内燃機関を継続しハイブリッドへと集中する」という動きを見せていますが、今回はその規制を導入した張本人である政府がその規制を再考している、という報道。
この背景には各自動車メーカーがEV義務化について「完全に実行不可能」と主張していること、今週にステランティスが行った「119年の歴史を誇るルートンのヴォクスホール工場を閉鎖する」という発表が関係していると推測されています。
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このままでは政府が「無能」呼ばわりされることに
かねてより一部の国の政府は「2030年、あるいは2035年にエンジンを積んだクルマの製造・販売を禁止する」意向を見せており、その後各自動車メーカーもそれに向けてEVを開発・投入していたものの、現実世界では消費者がEVを選ばず、そのため自動車メーカーが「巨費を開発して投入したEVが売れないので開発費を吸収できず」経営が苦しくなってしまったわけですね。
よって”苦しくなった”財政をなんとかする手っ取り早い方法が「工場の閉鎖や売却」であり、実際にアウディは工場を売却しフォルクスワーゲンも同様の措置を検討しているほか、上述の通りステランティスも工場を閉鎖してしまい「EV義務が工場閉鎖の原因になる可能性があり、これによって大量の失業者が出る」と警告されていたことが現実となりつつあるというのが現在の状況です。
そしてこの状況において政府が何も手を打たずにいると「無能」と判断されるうえ、(失業者を生み出しているとなれば)大きな批判にさらされることは間違いなく、よって今回イギリスでは「EV義務について再考する意向を示し」、ビジネス・貿易担当大臣であるジョナサン・レイノルズ氏は、自動車業界の幹部たちに対し、英国自動車製造業者協会(SMMT)が主催したディナーにて、EV義務の変更について協議を行うことを明言したと報じられているわけですね。
イギリスは2030年までに内燃機関車を段階的に廃止する方針を進めており、その一環として、2024年にはすべての車両の22%、すべてのバン(商用車)の10%を完全電動車(EV)にするという厳しい販売義務を導入していますが、消費者のEVへの関心が低いため、自動車メーカーは2024年の1か月にしかこの目標を達成しておらず、2022年にEV補助金が廃止されたことも状況を悪化させています。
目標を達成できない場合、企業は販売台数に応じて1台あたり15,000ポンド(約19,000ドル)の罰金を科されるため、一部の企業は内燃機関車の供給を制限し、数少ないEVを販売することを選択していますが、そうなると雇用が維持できないことは明白であり、さらに現在の計画では2025年に車両販売の28%、2030年には80%がEVでなければならないという厳しい目標が待っていて、現在の状況を見るに、このまま進んだときの未来は「火を見るよりも明らか」です。
「自動車業界は過去50年間で最も厳しい挑戦に直面しています。運輸大臣と私は、移行を成功させるための支援が必要だという皆様の声をしっかりと受け止めました。ZEV(ゼロエミッション車)義務の変更に関して協議を行い、より良い進め方についての意見をお聞きしたいと考えています。」ジョナサン・レイノルズ ビジネス・貿易担当大臣
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