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BYDによる3,000馬力の中国製ハイパーカー、ヤンワンU9 トラックエディションは実現可能か? 業界の重鎮メイト・リマックが疑問視する理由とは

BYDによる3,000馬力の中国製ハイパーカー、ヤンワンU9 トラックエディションは実現可能か? 業界の重鎮メイト・リマックが疑問視する理由とは

Image:BYD

|圧倒的な馬力数値に専門家が疑念を示す |

中国・BYDが発売を計画しているというハイパーカー「ヤンワン U9 トラックエディション」。

これは驚異的としかいいようがない「約3,000馬力」を発揮するというクルマであり、「もはや中国車は手のつけられないレベルにまで来てしまった」と自動車業界へと衝撃を与えた一台です。

しかしこれに対し、クロアチアのEVハイパーカーメーカー、リマックの創業者であるメイト・リマック氏をはじめとする専門家から、その実現可能性に疑問の声が上がっているというのもまた事実。

ちなみにですが、メイト・リマック氏はテスラが「新型ロードスターにて、0−60マイル加速を1秒以下でこなす」とコメントした際にもそれが可能かどうかを計算し、その根拠を示したことでも知られています。

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業界の重鎮メイト・リマックが指摘する3つの壁

ここでは、なぜメイト・リマック氏がこの馬力数値を懐疑的に見ているのか、その根拠を見てみたいと思いますが、主にバッテリーの性能限界、タイヤのトラクション、そして実世界でのパフォーマンスといった観点からこの論争を掘り下げてみましょう。

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1. バッテリーの限界

中国工業情報化部(MIIT)のデータによると、ヤンワン U9 トラックエディションは、各モーターが744馬力(555kW)を発揮し、合計で2,977馬力になるとされています。

しかしメイト・リマック氏は、Facebooグループ上にてこの数値につき、「誤った広告、あるいは解釈」である可能性を指摘。

彼は、多くの中国製EVが採用しているLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーが、2MW以上の電力を供給するのに必要な「20C以上の放電レート」に耐えられるかどうかに疑問を呈しており、というのもリマック・ネヴェーラRは、最新鋭の高性能バッテリーセル技術を採用しているにもかかわらず、最大出力は約2,107馬力(1.5MW)に制限されているから。

そしてメイト・リマック氏はこの「制限」に関し、「バッテリー自体はさらに電力を供給できるものの、モーターとインバーターに限界があり、システム全体を強化しなければ、2MWもの出力を数秒間維持することすら難しい」と述べているわけですね。

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2. トラクションの問題

そして次は「トラクション」。

かつてブガッティ・シロンの最高速が「(エンジンパワーではなく)タイヤの技術によって」制限を受けていたことでもわかるように、いくら馬力があっても、それを路面に伝えることができなければ意味がなく、メイト・リマック氏は、ネヴェーラRですら「時速100マイル(約160km/h)までは、市場で最高の性能を持つロードタイヤのトラクション限界をも超えている」とも指摘。

もしヤンワン U9 トラックエディションがネヴェーラRよりも1,000馬力近くも高い出力を持つとすれば、「時速150マイル(約240km/h)以上にならないと、そのパワーを路面に伝ることはできないだろう」と付け加えています。

3. 「ピークパワー」の捉え方

さらにメイト・リマック氏は、「ピークパワーは単なる数字に過ぎない」とも強調。

重要なのは、「そのパワーがどのように供給され、どれだけ持続できるか」であり、MIITのデータは、各モーターが最大出力に達した場合の単純な合計値であって、4つのモーターすべてが実走行中に同時にピーク出力を発揮できるかどうかは確認されていない、と述べています。


まとめ:スペック競争を超えた本質が問われる時代へ

それでもヤンワン U9 トラックエディションの驚異的な馬力は、EVハイパーカーの性能を巡る議論を活性化させたことは間違いなく、この馬力数値が真実であるかどうかはまだ不明ではあるものの、業界のトップランナーであるメイト・リマック氏が指摘するバッテリー、トラクション、そしてピークパワーの持続性という課題は、単なるスペック競争を超え、EVの技術的な本質が問われていることを示唆しています。

今後、ヤンワンがこれらの疑問にどのように答えるのか、あるいはそれが新たな技術革新のきっかけとなるのか、見守っていく必要があるというのが実情なのかもしれません。

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