
| 世界初のV6エンジンを搭載したのはなんとランチアだった |
その起源は1950年にまで遡ることができる
「喉を震わせるような低音と甲高いサウンド」を発すると言われるV6エンジン。
この個性にあふれたV6エンジンは、70年以上にわたり世界中のクルマを動かしてきましたが、その中にはフェラーリ・ディーノ、日産GT-R、デロリアンDMC-12といった名車から、トヨタ・カムリV6のような実用セダンまでが含まれます。
つまるところ、その汎用性や応用範囲は非常に広く、実際にGMのビュイック3800 V6は2,500万基以上が製造されるほどの大成功を収めることに。
そこで今回はその起源を探ってみたいと思いますが、この「V6エンジン」、実はイタリアの小さなエンジニアリングのひらめきから始まったのだそう。
世界初のV6を設計したのはフランチェスコ・デ・ヴィルジリオ
そして世界初のV6を設計したのはランチアの技術者、フランチェスコ・デ・ヴィルジリオ。
1940年代初頭、ランチアはすでにV4エンジンを採用していたものの、振動が大きな問題となっており、そこで新たな使命を与えられたのが若きエンジニア、デ・ヴィルジリオであったといいます。
彼は1939年にランチアへ入社し、後にテスト部門で伝説的デザイナー、ヴィットリオ・ヤーノと共に働くことに。
そして彼が導き出した答えはコンパクトで滑らか、そしてパワフルな「V6エンジン」であったとされ、ここから「世界初のV6エンジン」の物語が始まるわけですね。
世界初のV6エンジン誕生(1950年)
デ・ヴィルジリオが設計したV6は60度のバンク角を採用しており、均等な燃焼間隔を確保していたことが特徴で、最初の仕様は1.8リッター、6クランクピン、各気筒2バルブ、最高出力は56ps。
この出力は当時の同クラスの直6エンジン(例:マセラティA6に積まれる1.5L=65ps)に劣っていたものの、しかし改良を重ねることで、V6は徐々に力強さを獲得してゆくこととなります。
世界初のV6搭載車:ランチア・アウレリア
Image:LANCIA
この新開発エンジンを初めて搭載したのはランチア・アウレリア(1950年)。
伝説のF1ドライバー、ファン・マヌエル・ファンジオが所有したことでも知られています。
- セダン(B10)として登場し、続いてGTクーペ(B20)、スパイダー(B24)が追加
- 生産台数は1950~1958年の間に18,000台以上
カロッツェリア・ギアやピニンファリーナも車体製作に参加
レースで証明された実力
登場翌年、アウレリアは早くもセストリエーレ・ラリーとドロミテ・カップで優勝、ミッレミリアでは2位に入賞。
1952年には新設されたランチアのレーシングチーム「スクーデリア・ランチア」がル・マンに参戦し、クーペ版アウレリアが6位と8位で完走るなど目覚ましい成果を挙げ、さらにはエンジンそのものも進化を遂げつつロードカーとレースの両方で成果を記録することに。
- 2.0L(75ps)
- 2.3L
- 2.5L(118ps、初代比2倍以上の出力)
Image:LANCIA
アウレリアからフラミニア、そして終焉へ
アウレリアの後継はランチア・フラミニア(1957年登場)ですが、ここでも2.5Lや2.8LのV6が搭載され、しかし1970年にフラミニアの生産が終了すると、世界初のV6は歴史に幕を閉じ、ランチアはフィアット傘下に入ることで他社製エンジンの採用へとへ移行してゆくわけですね。
Image:LANCIA
まとめ
今日、V6はスーパーカーからファミリーカーまで幅広く使われていますが、その起源はイタリアの情熱と技術者の挑戦から生まれたランチア・アウレリア。
V6という一般的なエンジンの「発明者」の名が残っていることも意外ではありますが、初のV6を搭載したのがランチアというのもまた意外。
現在のところ大きな存在感を発揮できていないランチアではあるものの、この事実こそがランチアの歴史における最大の功績のひとつといえるのかもしれません。
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