■そのほか自動車関連/ネタなど■

けっこういい時代にボクらは生きているのかもしれないな。車に用いられる技術、パワートレーンの変遷を直に体験できるのはボクらの世代くらいなのかもしれない

けっこういい時代にボクらは生きているのかもしれないな。車に用いられる技術、パワートレーンの変遷を直に体験できるのはボクらの世代くらいなのかもしれない

| ボクらは貴重な「自動車業界の変遷を体験してきた証人」でもある |

これで「完全自動運転」を体験できれば思い残すことはなにもない

さて、現在は「100年に一度」といわれる自動車業界の大変革期を迎えていますが、その時期ど真ん中に生きているのがぼくらです。

「ガソリンエンジンや、マニュアル・トランスミッションが消えゆく」状況を目の当たりにし、それらの絶滅を嘆く一方、ぼくたちは内燃機関やMTをまだ楽しめる状況にあるというのは喜ぶべきことで、ある意味では「内燃機関の滅亡に立ち会うことができる」という貴重な体験を今まさにしている、と言っていいのかも。

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自動車に使用される技術はこう変わった

自動車の歴史はメルセデス・ベンツ創業者、カール・ベンツによる「自動車の発明(1886年)」から数えて139年を数えますが、いまに至るまでには大小さまざまな技術的革新があり、ぼくが体験してきた中で思いつく範囲だとざっとこんな感じです。

  1. 昔は「手で引っ張り出す」ラジオ用アンテナがあった・・・もしかすると今でも商用車などで残っている可能性がありますが、昔はAピラーの中に伸縮式のアンテナが格納されていて、降車時は車外から、そして乗車時だと(国産車の場合)サイドウインドウを開けて右手でアンテナを引っ張り出していたことが思い出されます。
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  1. その後は「電動で伸縮する」アンテナがあった・・・そしてこの「手で伸縮させる」アンテナの発展版が「電動伸縮式アンテナ」。ただしこれはエレクトリックモーターを含むとかなりな重量があるため、そしてパーツ点数が多いためにコストが嵩むため、現在ではフロントウインドウにアンテナがプリントされたり、そのほかの「低コストな」手段へと変更されています。
  2. スピードメーターやオドメーターが「本物のアナログ」だった・・・これは「針」を使用したアナログというだけではなく、実際に回転パーツからリダクションギアとケーブルを介して「回転を拾い」、それを速度や走行距離へと換算するという「完全なアナログ」。しかし今では信号を拾ってそれを速度や距離に変換し、さらには表示すらもデジタルという「フルデジタル」へ。当時は「ドラム式」のオドメーターではなくデジタル表示を持つクルマがひとつの「憧れ」ではありましたが、今となってはドラム式を懐かしく感じたりします。
  1. LEDの普及・・・今では社内外にLEDが使用されるのが当たり前となっているものの、昔は「メーター内の照明」にも電球が使用されており、その電球が切れるとメーターパネルを分解し裏側から「電球を交換」したことも。
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  1. HID・・・ヘッドライトの光源について「ハロゲン」の後に登場したのが「HID」。HIDの青白い光がなんともカッコよく(ただ、これは紫外線を発したという問題が生じたのでその後にはちょっと青さがなくなった)、この光を真似た青く光るハロゲン、そして後付によるHIDキットは一台アフターパーツ市場を形成しており、しかしその後に登場したLEDによって一気に消滅してしまったようですね。
  2. アクセルバイワイヤ・・・今では多くのクルマが「アクセルバイワイヤ」を使用していますが、昔はほとんどすべてのクルマが「アクセルペダルを踏むとケーブルが引っ張られ、そのケーブルがスロットルを開ける」という方式を採用。そしてアクセルバイワイヤはケーブルを配して「アクセルペダルの裏にあるスイッチ」がアクセル開度を検知して電子スロットルを操作することになるのですが、これによって「より緻密な」燃料制御が可能となったうえ、さらには(メーターのデジタル化と同様に)車両の構造を簡素化できるようになり、設計の自由度向上、パーツの簡素化、そして生産効率化が図られています。
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  1. カーナビの登場・・・今でこそ当たり前となったカーナビではあるものの、これは1980年代後半に登場したもので、当時は非常に高価なオプションであったわけですね。その後ケンウッドなど各社が「後付け」カーナビを発売して一般に普及してゆきますが、当時のダサいアンテナ、交通情報を拾ったりTVの電波を拾うための「ダイバーシティアンテナ(Vサインみたいなやつ)も今となっては「懐かしい装備」です。
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  1. カーオーディオ(アフター品)の説滅危機・・・そして1980-1990年代あたりに全盛であったのが「カーステレオ」あるいは「カーオーディオ」。パイオニア、アルパインなど様々なメーカーから様々な製品が発売され、セダンやクーペではリアトレイに「ブランドロゴが光る」スピーカーを載せたりするのが流行ったものですが、その後メーカー純正オーディオの品質が向上したり、メーカー純正オーディオが車両コントロールを兼ねたり、デザインの中に組み込まれて「(DIN規格ではなくなったことで)交換が困難になった」ことから現在ではほぼ絶滅の危機に瀕しているといっていいのかもしれません。
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  1. パーキングセンサーやバックカメラなどのドライバーエイド・・・そしてパーキングセンサーやバックモニタ、ひいては360度ビュー(バードビュー)カメラなども急激に普及してきたもので、そして普及とともにそのコストも下がり、より広い範囲にて多くのドライバーがその恩恵を受けることに。その黎明期には「後付け」も多かったものの、やはり(コストが下がったことで)純正装着されるケースが増加し、いまではアフター品がほとんど見られなくなっています。
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このほかにもキャブレター、暖機運転など今ではその存在すら語られなくなったような、しかしかつての「常識」も存在するのですが、まだ今では上に挙げたような装備含めて「かろうじてその存在が確認できる」状況でもあり、そしてぼくらはそれらの登場初期から普及期、そして絶滅までをも見届けることとなりそうです。

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このほか、各種運転支援デバイス(ADASなど)、ドライブレコーダー、ATへのMTロジック付与とパドルシフトの導入、DRL(デイタイムランニングランプ)、エンジンスタート / ストップボタン、カギのないキー、電気式パーキングブレーキなど近年になって急速に普及し始めたものもあり、いろいろなものが静かに、しかし確実に身近になってきています。

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なぜ消えた?「手引き式サイドブレーキ」。車載技術の進化を象徴する「電子パーキングブレーキ(EPB)」のメリットと普及理由とは
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| かつて「電気式パーキングブレーキ」は一部の高級車にのみ許される装備であったが | いまやほとんどのクルマが「電気式パーキングブレーキ」に かつて運転席と助手席の間にあった”力強く引き上げるレバー式 ...

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自動車のパワートレーン、空力、車体制御技術はこう変わった

そして次は自動車のパワートレーンや空力、車体制御技術。

これは自動車の性能を左右するという意味では非常に大きな存在で、そしてゆっくりと、しかし確実に変化を遂げています。

  1. ターボエンジンの登場・・・日本初のターボエンジン搭載車は1979年の「セドリック」「グロリア」ですが、一般に普及し始めたのは80年代以降だと記憶しており、それでもまだターボエンジンは珍しい存在だったので、当時はフロントやリア、ボディサイドの「TURBO」文字が燦然と輝くことに。なお、ターボは1990年代から「パワーを稼ぐ」というよりも「環境性能を向上させる」ために使用される機会が多くなり、「ダウンサイジングターボ」としてフォルクスワーゲンやボルボが率先して推進し、一般に普及したことで「特別な存在」ではなくなっていますね。
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1962年のオールズモビルに始まるターボの歴史。1975年のポルシェ930ターボにて本格的なターボチャージャー時代が幕を開け、現代では「電動ターボ」、そして未来へ
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| 「ターボ」はいつの時代も自動車業界におけるひとつの、そして大きなソリューションである | パワー追求、あるいは効率化。その歴史においてターボチャージャーは欠かせない ターボチャージャーの起源は19 ...

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  1. トランスミッションの変化・・・昔はそもそも「マニュアル以外の選択肢がなかった」自動車業界ではあるものの、その後にトルコン式ATが登場し、さらにはCVT、ロボットクラッチ、そしてデュアルクラッチが普及することで、小型車から大型車、そしてスポーツカーやスーパーカーなどあらゆる分野において運転に関する効率性が向上しています。そして2000年代初期までは「MTのほうがATよりも速く」、そして「ATを(遅くて燃費が悪いから、そしてMTを扱えない人が選ぶものだと)バカにする風潮」があったのですが、今では「すべての場面においてATのほうが速く」走ることができ、かつ環境性能も高いためにMTの存在意義が失われてしまい、完全に「MTとATの立場とイメージ」が入れ替わってしまったのが興味深いところです。
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  1. 4WD技術の進歩と多様化・・・そして4WD技術の進歩も見逃せず、こちらは1980年代後半から急速に進化し、それまでは「オフロードを走るためのもの」だった4WDがアウディ「クワトロ」、R32 GT-Rに搭載された「アテーサ E-TS」そしてそれらを発展させたトルクスプリット4WD、さらには左右トルクスプリット(こちらは2WDでも有効)など「物理の法則を無視してクルマを無理やり曲げることができる」ように。そして4WD技術は現在進行系で進化を続けており、電動化による「前後車輪が物理的コネクションを持たない」AWD、かつ「ハイブリッド」「フル電動」、加えて「4輪インホイールモーター」など様々な方面へと技術が同時多発的に深化しています。
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  1. 車体制御技術の向上・・・これはひとくちに言い表せるものではなく、しかし大別すると「電制デフ」と「アクティブサス」。前者は意図的に左右車輪の駆動力配分を(パッシブ、あるいはアクティブにて)変化させ、具体的にはカーブを曲がる際に「外側の車輪の回転数を(相対的あるいは絶対的に)多くすることで」無理やりクルマの向きを変えてしまうもの。後者はやはりカーブを曲がる際に遠心力で内側の車輪を浮くのを抑えることでグリップを向上させ”物理の法則を捻じ曲げてしまう”もの。(これについても様々な方法がある)
ポルシェ
ポルシェ創業者、1937年に“トラクションコントロール”を発明していた?あまりにも時代の先を行き過ぎていた天才の「光と影」

| 1930年代、常識外れのパワーと“空転”の問題 | ポルシェ創業者、フェルディナント・ポルシェが最も重視したのは「効率」である さて、ポルシェ創業者、フェルディナント・ポルシェは1898年に電気自 ...

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  1. エアロデバイスの進化・・・そして空力についても大きな進歩が見られ、単にダウンフォースを発生させたりという考え方から「損失と抵抗を抑えつつもエアフローを最適化する」という考え方にシフトしており、これはディフューザーやアクティブエアロに代表されるところです。さらには前面投影面積を理論的に小さく抑えるためのエアチャンネル、「クルマの中に空気を流す」という考え方など様々な手法が見られ、そしてこの分野は(空気抵抗を低減し航続距離を稼がねばならない)EVの普及とともにさらなる発展を遂げそうですね。
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  1. ブレーキシステムの向上・・・ブレーキシステムについてもクルマのパワー向上に伴い性能が向上しており、ベンチレーテッドディスクや対向キャリパーの普及に始まり高性能車ではカーボンセラミックディスクといった技術も一般化。なお、走行性能に関するものはモータースポーツからのフィードバックが非常に重要なポジションを占めており、一見するとガソリンのムダ遣いの用に思えるレースであっても「市販車の性能や安全性・効率性の向上」に大きく貢献している、ということがわかります。※ABSの登場そのものも画期的であった
ポルシェ
「レースで勝利を決めるのはブレーキ」。ベンチレーテッドディスクブレーキは「速く加速するよりも、速く減速する」ことを考えたポルシェによって発明されたものだった

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ブレンボ × ミシュラン、ブレーキの常識を変える「センシファイ」が凄すぎた。「馬力」「加速」が頂点に達した今、次に求められるのはこの「止まる力」か
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  1. 電動化時代の到来・・・そしてこれも現在進行系、そして今後最も大きく変わってゆくであろう流れが「電動化」。1997年のトヨタ・プリウスによってハイブリッドカー時代が幕を開けていますが、この電動化は様々な方面へと波及しており、フェラーリSF90ストラダーレやポルシェ918スパイダーのように「前輪をエレクトリックモーターで駆動する」スポーツハイブリッド、さらにはガソリンエンジンの弱点である低回転をカバーするためのトルクフィル型ハイブリッド、ターボラグを解消するための電動ターボ、さらには大容量バッテリーでしか実現できない「ハイパワーなアクティブサス」など多種多様。そして今後も「ハイブリッドシステムの搭載」を前提とした様々な、今では想像もつかないようなびっくりどっきりメカが誕生することは想像に難くなく、そしてもちろんピュアエレクトリックカー(BEV)といった分野においても「ガソリン車とは全く違う方向」へと進化するのかもしれません。
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こういった流れを見るに、「なにもアシストがない超アナログなクルマ」から、そこへ各種安全装備や快適装備が加わり、モータースポーツから得られたエアロデバイスやブレーキ、車体制御技術が盛り込まれ、そしてそれらを個々に制御していた時代から「統合制御」の時代へ。

よっていまぼくらは「アナログ、デジタル、あらゆるパワーユニット、あらゆるトランスミッション、あらゆるレイアウトや駆動方式」を(中古車含め)選択できる時代に生きており、しかしあと10年もすれば「もう選択できない」ものも出てくるのかもしれません。

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そう考えるならば、電動化への移行に文句をいうよりも、電動化時代への変化を受け入れつつ、「どう変わったのか、そしてこれからどう変わってゆくのか」を実際に感じつつ、そして楽しみながらカーライフを過ごすべきなのかもしれませんね。

そしてあと数十年後には「昔はね、クルマは自分で運転してたんだよ」と子孫に語る日がやってくるのだとも考えています(ぼくには子孫がいないけど)。

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