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ステランティスも2030年「完全EV化」計画を撤回。欧州排ガス目標は「もはや不可能」と発言

アルファロメオ

| もはやどの自動車メーカーにとっても「電動化計画の変更」は避けて通ることができないであろう |

この流れは大衆車メーカーからプレミアムカーメーカーまでもが同様である

アルファロメオ、マセラティ、ダッジ、フィアット、クライスラーなどを傘下に持つ自動車メーカー大手、ステランティス(Stellantis)。

今回再び電動化戦略を後退させる発言を行っており、ミュンヘンIAAモーターショーにて、同社の欧州部門トップであるジャン=フィリップ・アンパラート氏が「2030年までに欧州で完全EV化する」という同社の最重要目標を撤回し、EUの排出ガス規制についても「もはや達成不可能」とコメントしたことが報じられています。

マセラティ
ステランティスが「5年早く」傘下の14ブランドの去就を判断するとコメント。マセラティ、アルファロメオなどは2026年までにその存在価値を示す必要が生じる

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当初の計画「Dare Forward 2030」

ステランティスは、かつて「Dare Forward 2030」という大胆な戦略を掲げ、

  • 2030年までに年間500万台のEV販売
  • 欧州ではEVのみを販売
  • 北米では販売の半数をEVに

という目標を設定し、これに向けて3,600億ドル(約5兆円)を投資する計画を示していたわけですね。

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Image:Stellantis

当時のCEOカルロス・タバレス氏は非常に強気で、「EUの厳しい排ガス規制はむしろ我々の競争力を高める」と発言し、他社が規制緩和を求める中でも「罰金や排出枠購入なしで条件を達成する」と断言していたことも報じられています。

実際のところジープブランドからもEV、ダッジ・チャージャーのEVバージョン、RAMのピックアップEVなどが次々と発表され、V8「HEMI」エンジンも廃止されるなど、電動化への本気度をアピールしていたことも記憶に新しいかと思います。

フィアットが本来4週間の「500eの生産休止」をさらに3週間延長すると発表。労働者に対し「需要が全くありません。いまEVは深刻な問題を抱えています」と説明する事態に
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しかし計画は頓挫

しかしその後、状況は一変。

  • RAM 1500 REVの発売延期→EVトラックや大型EVの計画中止
  • ダッジ・チャージャーEVの先行き不透明→CEO交代とともにHEMI V8復活
  • フィアット500の電動版が売れずに度重なる生産休止→ハイブリッドへ移行
  • マセラティではMC20の電動モデル「フォルゴーレ」投入を断念

といった事態が続き、計画が大幅に後退しているのがこれまでの経緯です。

さらにEUは新たな排ガス規制施行を2027年へ延期したものの、アンパラート氏は「それでも達成は困難」とコメント。

「欧州でのEV販売を倍増できなければ、ICE(内燃機関)工場を閉鎖せざるを得ず、そうでなければ数十億ユーロ規模の罰金を科される」とも述べていたことも報じられ、文字通り「状況が逆転し始めた」のがここ最近。

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Image:Stellantis

他社も「完全EV化計画」から後退

なお、ステランティスだけではなく他の自動車メーカーも軒並み戦略を修正していますが、これは現状を鑑みた「勇気ある後退」とも言える判断で、むしろ予定通り「電動化計画」を進めることはむしろ自滅に近い行為であるとも捉えられています。

  • ボルボは2030年完全EV化計画を撤回
  • メルセデス・ベンツ、GM、VWグループも内燃機関への投資を再開

数年前まで「EV一辺倒」と見られていた業界は、再びエンジン車との共存路線へと舵を切りつつあり、「わずか数年で」ここまで大きな変動がもたらされた例は(自動車業界において)他に例がなく、今後も続々と方針を転換する自動車メーカーが現れるのかもしれませんね。

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Image:Stellantis

アウディ
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まとめ

ステランティスは当初、積極的なEV戦略で業界をリードしようとしていましたが、現実的な販売台数や技術・コスト面の課題に直面し、方針を大きく修正することに。

今後、マセラティやアルファロメオ、クライスラーといったブランドからどのような新モデルが登場するのか、そして再び電動化戦略を進めることができるのか(そういった時代がまた訪れるのか)に注目が集まります。

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