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BYDの成長神話についに「陰り」。2020年以来初の四半期販売が減少、一方でライバル「ジーリー」が96%成長し中国EV市場に激震が走る

BYD

| BYD、四半期ベースで2020年以来初の販売減少 |

栄枯盛衰は世の中の常である

中国EVの巨頭、BYDグループの2025年第3四半期における販売が前年比2.1%減の110万5,591台となったことが明らかに。

四半期ベースでのマイナス成長は2020年以来初めてとなり、この事実が中国自動車市場に衝撃を与えていますが、特に主力ブランド「BYD」の販売は4%減と足を引っ張り、グループ全体の減速を鮮明にしています。※BYDは販売目標を引き下げたと伝えられ、この状況はBYDにとっても予想外だと思われる

9月の販売動向 ― PHEVが大幅減

2025年9月単月だとBYDグループ全体で39万3,060台(前年比▲5.9%)を販売していますが、その詳細は以下の通り。

  • BYDブランド:35万5,774台(前年比▲11.4%)
  • PHEV販売:18万8,010台(前年比▲25.6%) → 6カ月連続で減少
  • 中国国内市場では直近3カ月平均で▲20%の落ち込み

この現象の主要因は「中国市場における激しい価格競争」だとされ、「中国のEV市場全体は伸び続けているが、多くの新興EVメーカーが実力をつけることで、BYDのような既存自動車メーカーの販売を侵食している」ことが指摘されています。

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これはつまり、テスラが「成長するEV市場」の中で徐々に他社にシェアを奪われていったという実情にもよく似ており、その市場で高いシェアを誇る会社が直面する「歴史上、つねに起こり得る」現象なのかもしれません。

その一方、中国では「競争に敗れた、あるいは負け戦が明白な」新興EVメーカーが「現金化」「在庫処分」のために大幅な値下げを行って自社製品を販売しており、これもまた(安価なことでそのシェアを獲得してきた)BYDの販売を侵食する一因となっています。

逆風を和らげる「3つの柱」

それでもBYDが”急落”を免れているのは以下の3要素によるもので、製品やブランド、市場の「マルチ」な展開によるリスクヘッジが機能しているのだとも考えられます。

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  1. 新サブブランドの成長
    • 方程豹(Fang Cheng Bao):2万4,121台(+345%)
    • Denza:1万2,407台(+20.5%)
    • 仰望(Yangwang):758台(+145%)
  2. BEV販売の堅調
    • 9月単月で20万5,050台(+24.3%)
    • Q3全体で58万2,522台(+31.4%)
  3. 海外販売の拡大
    • 9月単月:7万1,256台(+115.8%)
    • Q3全体:23万2,806台(+146.4%)
    • 自社輸送船団を整備し、年間100万台輸送可能に

BYDの成長が止まらず、「500万台のNEVを販売し、世界で最も電動車を製造した会社になった」と発表。なお100万台には13年、300万台にはさらに18ヶ月、500万台には9ヶ月
BYDが「中国初の自動車専用巨大貨物船」、BYDエクスプローラー1」を建造し運用開始。さらには追加で7隻を投入し世界中へとEVを大量に輸出すると発表

Image:BYD(X) | いかに中国広しといえど、これができるのはBYDくらいのものであろう | BYDの勢いはどうにも止めようがない さて、BYDは今年1月に初となる「自社専用の自動車輸出専用の ...

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ライバルは好調 ― ジーリーが急成長

一方で、中国の他EVメーカーは軒並み過去最高を更新。

  • Leapmotor(リープモーター):初の月間6万台突破(前年比2倍)
  • NIO(ニオ)、Xiaomi(シャオミ)、Xpeng(シャオペン):9月に過去最高販売を記録

特に注目すべきはジーリー(Geely / 吉利)で、同社は第3四半期に44万2,672台(前年比+96.2%)のEVを販売してBYDを猛追することに。

成長の主因は新エネルギーブランド 「Galaxy(ギャラクシー)」 の販売拡大だとされますが、BYDは「テスラに追いつき、追い越した」後、逆に「追いつかれ、追い抜かれようとしている」立場となってしまったわけですね。

市場の構図はどう変わるのか?

これまで中国EV市場は「BYD一強」と言われてきたものの、今回の結果は価格競争とPHEV需要減少がBYDのアキレス腱であることを浮き彫りにしています。

対照的に、ジーリーや新興勢力が急成長しており、「群雄割拠の戦国時代」 に突入しつつあることもわかり、今後の焦点は以下に絞られるのかもしれません。

  • BYDが海外とBEVに軸足を移せるか
  • ジーリーや新興ブランドがどこまでシェアを奪うか

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参照:CarNewsChina

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