
| フェラーリは今回のキャピタル・マーケッツ・デイでは多くの「方針転換」を発表している |
特に内燃機関においては、そのラインアップの大きな変動が予想される
さて、フェラーリは投資家 / 株主向けに開催したキャピタル・マーケッツ・デイにて、ここ最近では見られなかった大きな変化を発表しており、2022年に発表した「2030年までの計画」の一部を実際に修正しています。
その方向性としては、「電動化へのスピードを緩め、内燃機関に回帰する」というほかのプレミアムカーメーカーと同様の内容ではありますが、2022年の計画では「内燃機関20%、PHEV40%、EV40%」としていた2030年の販売計画につき、最新の計画だと「内燃機関40%、PHEV40%、EV20%」へ。
つまりEVの販売計画が「半分」に、内燃機関搭載車の販売計画台数が「倍」となったわけですね。
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まさか今のラインアップのまま「内燃機関搭載車を倍の台数」販売することはないであろう
そこで気になるのが「倍」に増える内燃機関搭載車の構成比率。
フェラーリは2024年に13,752台を販売しており、しかし販売を絞って1台あたりの利益率を向上させる戦略を公表しているので、2030年あたりでも14,000台程度に販売が抑えられる可能性があり、となるとパワートレーン別の販売台数は「内燃機関搭載車2,800台、ハイブリッド5,600台、EV2,800台」。
この計画は「あと5年先」という比較的短いタームではけっこう難しいようにも思われ、まず2030年時点でEVは(今回情報が先行公開された)エレットリカ、そしてうまく行ってももう一台くらいしか市場投入がなされていないはずで、この「1台もしくは2台」で2,800台を販売するのは非常に困難かもしれません(ただ、以前の計画のほうがもっと達成困難である)。
そして「内燃機関2,800台」について考えてみると、いまフェラーリが持つ内燃機関モデルは「プロサングエ」「12チリンドリ」「12チリンドリ スパイダー」「アマルフィ」の4車種で、直近だと「アマルフィ・スパイダー」が加わるので5車種ということに。※ボリュームは大きくないが、イコーナなどの少量生産モデルが追加される可能性もある
フェラーリは「V12を継続する」にしても、「V12の販売台数を増やす」ことはないだろう
そしてフェラーリはこの5車種で2,800台を売らねばならないということになり、しかしフェラーリはV12モデルの販売を厳しく制限していて、この状況で「当初計画の倍」の数に相当する内燃機関モデルを販売してゆくことは非現実的(よってV12モデルの増産はないだろう)。
そうなると追加で新しい内燃機関モデルが投入される可能性もありますが、今から開発を行って「2030年の業績に貢献できる」ようにすることも容易ではなく、となるとすでに生産を終了してしまった「V8ミドシップ」を復活させることも考えられます。
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ただ、V8ミドシップは「F8」シリーズにて「フェラーリのV8ミドシップの幕引き」を行っているため、V8ミドシップを(以前のモデルに近い形で)復活させることは中古市場の混乱を招く可能性があり、発売済みモデルの資産価値を重視するフェラーリとしても「それはない」のかもしれません。
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じゃあ「V6エンジン単体で駆動するミドシップあるいはフロントエンジンモデル」を投入するのかというとその可能性も薄く、まず現時点でV6エンジンに対する評価を確立できていないこと、そしてフェラーリは「安価なモデルを発売したり、販売台数を追求するつもりはない」という意思表示を行っており、かつ利益率を現在の約24%から30%へと引き上げることを表明しているから。
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そうなると、考えられるのは「V8ミドシップ+マイルドハイブリッド」で、これだと(マイルドハイブリッドは一般にICEに分類されるので)ICE比率を引き上げることができ、これまでのV8ミドシップの価値も損なわず、「V6(296ファミリー)」と「849テスタロッサ」との価格的・パフォーマンス的な溝を埋めることができ」、296ファミリーとも849テスタロッサとも競合しないゾーンにて、フェラーリの価値を維持あるいは押し上げることが可能な戦略も見えてきます。
メカニズム的には、かつてのV8ミドシップのパワーユニットとプラットフォームを引き継ぐことで短期間による開発が可能となり、後輪駆動を維持することで849テスタロッサとの差別化も可能となりますが、一つ気になるのは「296ファミリーとの出力ヒエラルキー」。
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V8を搭載するということで296ファミリーの「上位」に位置することになると考えられるものの、296シリーズの830馬力、そしてその後継モデルが発生するであろう850馬力あたりを「V8+マイルドハイブリッド」で超えることは困難だと思われます。
ただ、「ポジション的には296ファミリーの上」であったとしても、出力がそれらを下回ることで批判を受けることはまずないとも考えていて、それはメルセデスAMG C63の「V8と4気筒ハイブリッドに関する論争を見ても明らかですし、フェラーリ自身も「これまでV12モデルをパフォーマンス面でのフラッグシップ」としていたものの、現在ではV12モデルの立ち位置を「ブランドの象徴」へと変化させ、パフォーマンス方面におけるフラッグシップをV8ミドシップ(SF90 XXシリーズ)へと譲っていて、これを見ても「ユーザーは内燃機関モデルとハイブリッドモデルを別モノと捉えている」風潮を理解することが可能です(パワーよりもシリンダー数のほうが価値が高い)。
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よって(それが登場すると仮定して)フェラーリの新しいV8マイルドハイブリッドモデルが「V6+PHEVよりも出力が低いのに価格が高い」設定になったとしても、それに異論を唱える人はいないのかもしれません。
そしてこの構成であれば、296ファミリーの価値を損なう可能性も低いであろうと考えられ(ただし296ファミリーが”よりハードコア”に進化し、V8+マイルドハイブリッドはドライビングエクスペリエンスという”タイム”以外の要素を追求するという前提)、棲み分けがうまくできるのではないか、とも考えています。
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参照:Ferrari