
| これまでのメルセデス・ベンツとは全く異なるデザイン言語を押し出してきた |
メルセデス・ベンツ、「Vision Iconic」で“新しいアイコンデザイン時代”を宣言
メルセデス・ベンツがブランドの豊かな伝統と未来志向のテクノロジーを融合させたショーカー(コンセプトカー)、「Vision Iconic(ヴィジョン・アイコニック)」を発表。
このモデルはソーラーペイント、レベル4自動運転、ニューロモーフィック・コンピューティングなど、次世代技術を多数採用していることが機能的な特徴ではありますが、その一方でアール・デコ調インテリアといったレトロな要素も有しており、「美」と「知性」とを兼ね備えた新しいラグジュアリー像を提示する一台となっています。
なお、このヴィジョン・アイコニックはこれまでに発表されたどのメルセデス・ベンツの市販車やコンセプトカーとも「ほぼ共通性がない(ただしグリルはGLC、ヘッドライトはCLAとの類似性を持っている)」デザインを持っており、これはメルセデス・ベンツが新しいデザイン言語を今後採用してゆくこと、そしてデザインが「金太郎飴」から多様化してゆくことを示しているのかもしれません。
Image:Mercedes-Benz
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伝統と革新が融合した「アイコニック・グリル」
フロントデザインの主役は今後のメルセデス・ベンツを象徴する“アイコニック・グリル”。
W108や600プルマンなど往年の名車に着想を得つつ、スモークガラスとクロームのフレーム、LED照明を組み合わせ、電動化・デジタル時代にふさわしい新たな表情を創出しています。
さらに、ボンネット上のスリーポインテッドスターも発光するという新機軸も採用され、ブランドの存在感を際立たせています。
「Vision Iconicは、メルセデス・ベンツの未来のモビリティに対するビジョンそのものです」
— マルクス・シェーファー(CTO)
Image:Mercedes-Benz
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内外装すべてに「ベンツマーク」。メルセデス・ベンツがコンセプトCLAクラスを正式発表、この姿で登場すれば間違いなく路上で強烈な印象を残すだろう
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一方のリアは300SLなどにも通じるレトロな雰囲気が表現されることに(このうえなく優雅である)。
Image:Mercedes-Benz
内装は「ハイパーアナログ×ラウンジラグジュアリー」
自動運転時代を見据え、ヴィジョン・アイコニックのキャビンは“移動するラウンジ”としてデザインされていますが、インテリアはアール・デコ調の曲線美と最高級の素材を融合し、クラシックとモダンが共存するつくりに。
Image:Mercedes-Benz
- 計器盤中央には浮遊感のある「ツェッペリン」構造を採用
- マザーオブパールの象嵌が施されたパネル
- 深いブルーのベルベットシートとストローマルケトリーのフロア
- 中央のアナログクロックはAIコンパニオンとして機能
まさに「動く彫刻」と呼ぶにふさわしい芸術的完成度を誇っていますが、エクステリア以上に「新しいメルセデス・ベンツ」を表現しているようですね。
Image:Mercedes-Benz
ソーラーペイント:太陽光で航続距離を延長
このヴィジョン・アイコニックには多数の新しい試みが導入されており、ボディ表面には太陽光発電が可能な薄膜ソーラーペイントが塗布され、理想条件下では年間最大12,000km分の電力を発電可能。
この技術はシリコンやレアアースを使用せず、リサイクル可能かつ高い充電効率(20%)を実現しています。
Image:Mercedes-Benz
ニューロモーフィック・コンピューティング:脳の構造を模倣した次世代AI
さらにヴィジョン・アイコニックには人間の脳を模倣したニューロモーフィック・チップが搭載予定。
これによりAIによる認識・判断を従来の10倍効率化し、エネルギー消費を最大90%削減するほか、安全システムや自動運転制御を劇的に向上させる、と紹介されています。
Image:Mercedes-Benz
レベル4自動運転とステア・バイ・ワイヤ
加えてヴィジョン・アイコニックはレベル4の自動運転システムに対応。
高速道路走行中はドライバーが完全にリラックスできる環境を提供し、目的地到着後は自動で駐車まで行う「高度自動パーキング」機能を備えているのだそう。
そのほか、ステア・バイ・ワイヤ技術を採用し、後輪操舵と連携して長い車体でも容易に駐車・旋回を行えるように配慮され、機械的な接続を排除することで滑らかな操作感を実現しているようですね。
Image:Mercedes-Benz
カプセルコレクション:ファッションで体現するデザイン哲学
メルセデス・ベンツはこのヴィジョン・アイコニックの発表に合わせて「メンズ / レディース対応の」カプセルコレクションを公開。
ダークブルーとゴールドを基調とし、このコンセプトカーの内装モチーフを取り入れたアール・デコ調ファッションとなっていますが、このコレクションは上海ファッションウィークで初披露されたというので、車両そのものも上海にて発表されたのだと思われます(相変わらずメルセデス・ベンツは中国重視である)。
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「ICONIC DESIGN BOOK」で語られる新時代の哲学
今回のショーカーを通じ、メルセデス・ベンツは「ニュー アイコニック エラ(New Iconic Era)」という新しいデザイン時代の幕開けを宣言。
同社の伝統と職人技を軸として他社との差別化(sea of samenessの打破)を明確に打ち出す方針を掲げていますが、この哲学をまとめた書籍「ICONIC DESIGN Book」も同時公開され、ここにはメルセデス・ベンツCEOであるオラ・ケレニウス氏、そしてデザイン責任者ゴードン・ワグナー氏の独占インタビューも収録されている、とアナウンスされています。
Image:Mercedes-Benz
まとめ
ヴィジョン・アイコニックは単なるコンセプトカーではなく、メルセデス・ベンツが「未来のラグジュアリーとは何か」を再定義するためのデザイン宣言。
太陽光発電、脳型AI、完全自動運転など、美しさと知性が融合する新たな時代の象徴であり、このクルマが「そのまま」市場へと投入する可能性は低そうですが(これについてはなんら言及されていない)、そのデザインや思想、そしてディティールが今後の市販車へと採用されるのを楽しみに待ちたいところですね。
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参照:Mercedes-Benz