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| まさかSUVが「10秒の壁」を破ろうとは |
驚異の1,156馬力と「911ターボSハイブリッド」に匹敵する加速
かつて映画『ワイルド・スピード』でベンチマークとされた「10秒の壁(クォーターマイル=ゼロヨンを10秒未満で走破)」を今、市販のロードカーしかもSUVが打ち破ることに。
このマイルストーンを打ち立てたのは新型ポルシェ カイエン ターボ エレクトリックで、その最高出力は驚異の1,156馬力に達し、クォーターマイルをなんと9.9秒で駆け抜けます。
これはもちろんSUVとしては世界最速の記録であり、ここで(既存のガソリンモデルと併売されることが決まった)このEV版カイエンの驚異的なスペック、800Vアーキテクチャによる超高速充電性能、そしてポルシェならではのシャシー技術とデザインの全貌を見てみましょう。
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車種概要、特徴(性能・デザイン・スペック)
今回発表された「カイエン エレクトリック」は、その性能において既存のSUVの常識を覆す存在で、まずは「ベースモデル」「ターボ」の2バージョンが発表されています。
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1. ターボモデル:圧倒的なパワーと加速
トップグレードの「カイエン ターボ エレクトリック」はローンチコントロール使用時に1,156馬力発生させ、これはポルシェ史上最もパワフルなロードゴーイングカーであり、タイカン ターボGT(1,108馬力)をも凌駕する数字。
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更に驚くべきは0-100km/h加速が「911ターボSと同じ」ということで、しかしこれは「本当はもっと速くできたものの、911ターボSに配慮した数字」なのかもしれません。
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- 0-100km/h加速: 2.5秒(911ターボSハイブリッドに匹敵)
- クォーターマイル(ゼロヨン): 9.9秒
- 最高速度: 260km/h
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通常走行時は857馬力にとどまるものの、ステアリングの「プッシュ・トゥ・パス」ボタンを押すことで、瞬間的に176馬力が上乗せされるブースト機能も搭載され、さらにリアモーターには直接オイル冷却が施されることで高負荷での性能の持続性と効率が確保されるといった「ターボ」専用のチューニングも。
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2. ベースモデル:十分すぎるパフォーマンスと実用性
エントリーモデルの「カイエン エレクトリック」も十分に高性能で、多くのEV SUVを上回る実用性も確保しています。
- 最高出力: ローンチコントロール時442馬力(通常時408馬力)
- 0-100km/h加速: 4.8秒
- 最高速度: 230km/h
- 牽引能力: 3,500kg
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3. 800V充電と驚異の回生能力
バッテリーは容量113kWh、そして800ボルトのアーキテクチャを採用しており、すでにアナウンスされている「ワイヤレスチャージング」もオプションにて選択可能。
なお、回生ブレーキ率は(日常の使用で)タイカンだと「90%」とされていたものの、それを上回る「97%」という驚異的な数字が示されています。
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- DC急速充電: 最大400kWに対応。10%から80%までの充電が16分未満で完了
- 回生ブレーキ: 回生パワーはタイカンを200kWも上回る600kW。日常的なブレーキングの97%を摩擦ブレーキを使わずにモーターのみで処理できる、フォーミュラEレベルのエネルギー回収能力を誇る
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シャシー技術とデザイン:ポルシェならではのこだわり
快適性と運動性能を両立するシャシー技術
新型カイエン エレクトリックには、ポルシェの最新鋭のシャシー技術が標準装備、またはオプション設定され、代表的なものだと以下の通り。
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- アダプティブエアサスペンション: 全車標準装備。ポルシェ・アクティブサスペンション・マネジメント(PASM)と組み合わせられる
- アクティブライドシステム: パナメーラやタイカンでデビューした最先端システム。瞬時の車高調整に加え、ロール、ピッチ、ダイブを事実上排除し、コーナリング時には車体を内側に傾ける機能も併せ持つ
- リアアクスルステアリング: オプションにて後輪を最大5度転舵させるリアアクスルステアリングも用意。ホイールベースの延長(約12.7cm)と相まって、巨体ながら高い俊敏性を実現する
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ワゴン的なプロポーションと超低Cd値
デザインは、既存のカイエンよりもワゴン的な(つまり”より低い”プロポーションとなり、ホイールベースが約12.7cm延長されたことが特徴です。
- Cd値: 0.25という非常に低い空気抵抗係数(SUVとして世界トップクラス)を達成。アクティブクーリングフラップ、エアカーテン、アダプティブリアスポイラーなどの徹底したエアロダイナミクス設計が貢献
- インテリア: 14.25インチのOLEDデジタルゲージクラスターに加え、湾曲したOLEDタッチスクリーン「フローディスプレイ」が特徴。オプションで助手席にも14.9インチのタッチスクリーンが搭載可能
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全般的な印象としてはこれまでの「ポルシェ」の延長線上にあるもので、しかしフロントは「やや尖った」形状へ。
そしてフロントバンパーには現行世代のポルシェ(とくに911)で顕著な「縦ルーバー」、リアではエレクトリックモデル共通の「水平ライン」が用いられるなど、これまでのポルシェのセオリーに従っています。
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一方、カイエン ターボ エレクトリックに備わるアクティブエアロは「新しく(ただ、この疑似ロングテールは手法こそ異なれど新型911ターボSでも見られる)」、そしてこれはポルシェ入魂のデバイスと見え、誇らしげに「PORSCHE ACTIVE AERO」の文字が輝きます。※下の方にも座標のような数字がある
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なお、テールランプは新しいデザインを持ち、しかし意外なことにドアハンドルは「アイロン型」。
中国市場を考慮するならば格納式を採用するべきなのかもしれませんが、これはSUVという性質(グローブを着用してドアの開閉を行うことがある)を想定した”ポルシェの良心”なのかもしれません。
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インテリアはすでに公開されていたために目新しいところはなく・・・。
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しかし改めて見るとダッシュボードからフロート型センターコンソールへと続くダイナミックな造形が印象的。
そしてターボモデルのドアインナーパネルには「930ターボ」を連想させる斜めのステッチも(アンビエントランプによって強調されている)。
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結論と市場での位置付け
SUV市場の定義を変える「パフォーマンスEV」の旗手
新型ポルシェ カイエン エレクトリックは、単なる「電動化されたカイエン」ではなく、SUVセグメントにおけるパフォーマンスの基準を根本から変えるモデルであると考えられますが、ポルシェはこのカイエンEVを「既存のガソリンモデルと、少なくとも2020年代末まで併売する」というデュアル戦略を取ることも発表済み。
これは、顧客に選択の自由を与えるというポルシェの姿勢を示しているものの、やはり「エレクトリックモデルへの移行がスムーズに進まない可能性」を考慮しているのかもしれません。
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とはいえ、既にマカンEVがガソリンモデルを上回る販売実績を上げていることを考慮すると、カイエンにおいても「より速く、より洗練されたEVモデル」が市場の主役になることも考えられ、新型カイエン エレクトリックはSUVの「速さ」と「ラグジュアリー」の定義を再構築する”ポルシェの未来を象徴する一台”であるとも考えられます(そして、この受け入れられ方次第でポルシェの方向性が変わってゆくのだとも考えられる)。
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価格については、カイエン ターボ エレクトリックが21,010,000円、ベースモデルが13,350,000円に設定されていますが、これは本国や北米に比べると「かなり安い」値付けであり(それぞれ2,500万円と1,700万円くらい)、ある意味では「ポルシェを最も安く買えるのは日本」となったのかもしれませんね。
新型ポルシェ カイエン エレクトリックの公式プロモーション動画はこちら
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