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| 限定車であれば何でも価格が上がる」時代はついに終焉を迎える |
限定車神話の崩壊?2億円超の超希少ベントレーが味わった痛恨の暴落
フェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニといったハイエンドブランドの限定車は、セカンダリーマーケット(中古市場)に出ると、多くの場合にて新車価格を遥かに超えるプレミア価格で取引されることで知られます。
特に生産台数が極めて少ないモデルは、価値を失うどころか投資対象として見なされるのが常識であったわけですね。
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その常識がついに崩れる
しかしこの常識が完全に覆される出来事が発生し、世界でわずか12台しか製造されなかったというベントレーの特殊車両生産部門「マリナー」によるコーチビルト・ロードスター「バカラル(Bacalar)」が、オークションで新車価格の半分以下という驚くべき価格で落札されたことが各界に衝撃を与えています。
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ここでは、わずか703マイル(約1,131km)走行にとどまる超極上車が、なぜこれほどの価値を失ったのか、その衝撃的な事実と背景を掘り下げてみたいと思います。
- この記事のポイント
- 価格の大暴落: 新車価格200万ドル(約3.16億円)超であった希少車が、オークションで87万6,785ドル(約1.37億円)に
- 損失額1.1億円超: わずか数年で110万ドル以上(約1.7億円)の価値が消滅
- 場所とタイミングの矛盾: 大富豪が集うF1アブダビGP週末の超高級オークションでの出来事
- 共通パーツの影: コンチネンタルGTCとの類似性が、超希少性の魅力を打ち消した可能性
1.7億円の価値はどこへ消えたのか?バカラル暴落の真実
車種概要とオークションの状況:世界12台中の1台
ベントレー・マリナー「バカラル」は、ベントレーのビスポーク(特注)部門であるマリナーがコーチビルドの原点に立ち返り、2シーターオープンカーとして究極のラグジュアリーを追求したモデル。
他のベントレー車とボディパネルを一切共有しないという徹底した特別仕様で生産台数はわずか12台にとどまり、もちろんすべてが完売し、よってその希少性は疑いようがなく、多くの識者が「このクルマは将来的に値が上がる」と考えていたわけですね。
なお、出品されたのはこのレッドの個体であり、以下のような完璧なシチュエーションにもかかわらず、このバカラルは予想外の低価格で落札されています。
- 出品された車両: 2021年型ベントレー バカラル(シャシー番号5番)
- 走行距離: わずか1,131km(703マイル)。ほとんど走行していない極上コンディション
- 出品元: モナコの個人コレクション
- オークション: F1アブダビGPの週末にRMサザビーズが開催した、富裕層をターゲットとした超高級オークション
| 項目 | 詳細 | 差額 / 特徴 |
| 新車価格(推定) | 約200万ドル(約3.16億円) | |
| 落札価格 | 876,785ドル(約1億3,700万円) | 新車価格の4割強にまで下落 |
| 価値の損失 | 112万3,215ドル(約1億7,000万円) | わずか703マイルで1.7億円以上の損失 |
| タイミングと場所 | 富裕層が集まるF1アブダビGP。 | プレミアがつくはずの場所だった。 |
個性的な仕様とプレミアがつくはずの要素
落札されたこのバカラルは、その仕様から見ても「特別な一台」であることは間違いなく、この車両の視覚的な魅力と究極のビスポーク性は、コレクターの心を掴むはず「だった」。
- エクステリア: 鮮やかでテーラーメイドの特別色メンフィス・レッドで仕上げられ、この車の外向的なプロポーションに非常にマッチしている
- ホイール: 22インチのトライフィニッシュデザイン(シルバーとサテンニッケル仕上げ)
- インテリア: クリーミーなリネンレザーと深いマルーンのアクセントレザー、サテンニッケル、そして5,000年前の「リバーウッド」を使用したウッドパネルなど、贅沢な素材が惜しみなく使われている
なぜ、バカラルの価値は「崩壊」したのか?
それにもかかわらず、オークション市場で「愛」を得られなかった事実の裏には以下のような要素があると推測されています。
- コンチネンタルGTCとの類似性: バカラルは、ベース車であるコンチネンタルGTCと非常に似通った部分が多くあり(ドアハンドルのみ共通)、GTCはカスタマイズしても30万ドル程度で購入可能であるのに対して「バカラルはその6倍以上」の価格設定
- コレクターの判断: 超高級限定車のコレクターは、「どれだけ既存モデルと差別化されているか」という点を厳しく評価し、バカラルがバルケッタ(小舟)デザインを採用し、ボディパネルをすべて新設計したとはいえ、パッと見の印象がGTCから大きく離れていないことが長期的価値を見出せなかった要因であった可能性
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結論:真の希少性が求められるハイエンド市場の厳しさ
今回のベントレー「バカラル」の暴落は、「限定台数」だけではプレミア価格を維持できないという、ハイエンドコレクターズカー市場の厳しさと冷徹さを浮き彫りにしており、バカラルが将来的にニッチな市場を見つける可能性は残されているものの、現時点ではベントレーの期待通りのインパクトを残すことはできていません。
真にユニークな価値を持つクルマだけが、この超高級市場で生き残れるという教訓を今回のオークション結果は示唆しています。
- 希少性 > ブランド力: フェラーリやポルシェのような、純粋なレーシングDNAに根ざしたブランドの限定車は、比較的価値が安定しやすい傾向にあり、しかしラグジュアリーカーの場合だと「究極のビスポーク」や「世界に一つしかないデザイン」といった付加価値が”新車価格に見合っているかどうか”が厳しく問われる
- 市場の冷めた目: 富裕層コレクターは短期的なブームではなく、その車が持つ歴史的意義、技術的革新性、そしてデザインの独自性をシビアに評価し、それを「長期的な価値」として判断する
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参照:RM Sotheby's














