フォードはどうしてもV8エンジンで後輪を動かしたい?
今回、フォードがいくつか特許を新たに申請しており、その内容がこれまでにないモノだと話題に。
具体的にはパワートレーンということになりますが、「ハイブリッド車のためのツインモータードライブ」と題され、V8エンジンと2つのモーターとを組み合わせたものが出願されています。
通常はモーターがあるのにわざわざプロペラシャフトを使わない
ただ、面白いのは、フロント搭載されたV8エンジンは後輪を駆動し、やはりフロントに搭載されたモーターはフロントタイヤを駆動すること。
フロントのエンジンが後輪を駆動するには「プロペラシャフト」を使用することになり、これはパーツ点数の増加、振動や騒音、熱の発生源となる、重量も重い、室内空間が狭くなる、といったデメリットが多く、よって多くのクルマは「フロントエンジン、フロントドライブ」といった効率的な方法を採用しているわけですね。
よって、もし「ハイブリッド4WD」としたいのであればフロントに搭載したエンジンで前輪を駆動し、後輪車軸にモーターを搭載して後輪を駆動するのが「効率のよい方法」ですが、フォードはこの方法ではなく別の方法を採用した、ということに。
その理由はいくつかあるかもしれませんが、まずは「特許回避」。
他社が特許として保有する内容に抵触するために「エンジンで前輪駆動、モーターで後輪駆動」が使いえない可能性も。
そしてもうひとつの理由としては「V8エンジン」を使用する前提であることからわかるように、「ハイパフォーマンスカー向け」。
つまり高出力V8エンジンを核とした「FR」をベースにしたスポーツ性能の高いハイブリッドということで、フロントモーターはあくまでも「補助」もしくはコーナリング時に「引っ張る」、はたまたV8エンジンが排ガス規制をクリアするために「モーター単独でも走行できるモードを備える」のだと考えることができます。
そう考えると、(限定モデルの”GT”を除いて)フォードが持つ唯一のスポーツカー「マスタング」にこれが搭載されると考えて良く、将来的にマスタングは「ハイブリッド4WD」となる可能性も。
トランスミッションにモーターを仕込んでいないところからも「後輪を駆動するのはガソリンエンジンだけ」という潔さが見えてくるあたり「さすがフォード」だとも言えますが、他社にはない、なかなかにユニークな手法だと言えそうですね(ただ、重量配分のためにバッテリーは後輪車軸付近に搭載されることになりそうで、かなり無駄の多いシステムだとも言える)。
なんだかんだ言って「V8」はアメリカンマッスルの象徴でもあり、フォードはこれを存続させるための方法として今回の特許を出願したのかもしれません。