
| 「品質」とブランドへの忠誠度とは必ずしも関連性がない? |
ブランド忠誠度とは?
自動車業界において「そのブランドへの忠誠度」は非常に重要で、というのもクルマというのは定期的に「買い替えられる」モノであり、その際にまた同じブランドを選ぶのか、はたまた別のブランドへと移るのかによって自動車メーカーの業績が大きく左右されるため(つまりリピーター率を上げることが肝要である)。
一度購入したブランドに再び戻ってくる顧客は長期的な信頼関係を築き、メーカーにとって安定した収益源となることが過去の調査からも明らかになっていますが、JDパワーが毎年発表する「自動車ブランド忠誠度調査(U.S. Automotive Brand Loyalty Study)」では、顧客が再び同じブランドを選ぶ確率を数値化し示しており、今回は2024年9月から2025年8月までの実際の取引データに基づいた統計内容を公開しています。
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プレミアムカーメーカーでの「顧客忠誠度」調査結果
そこでまず「プレミアムカーメーカー」だと1位はポルシェ、2位はメルセデス・ベンツとなっており、これは「ポルシェ、メルセデス・ベンツはコレクターが多い」という事実をそのまま表しているかのようですね(一方、BMWやアウディのコレクターというのはあまり聞かない)。
- 1位:ポルシェ(58.2%)
約6割の購入者が再びポルシェを選択。スポーツカーやSUVを含め、ブランドへの強い愛着が示される。 - 2位:メルセデス・ベンツ(49.7%)
ほぼ半数がリピーターという高い数字で、ラグジュアリー市場における強さを見せている。
プレミアムSUV市場
プレミアムSUVだとこう。
「プレミアムカーメーカー」とは異なる結果となっていて、各メーカーごとに「強いジャンル」とそうでないジャンルが存在することがわかります。
- 1位:レクサス(57.4%)
高い信頼性と快適性から、過半数以上の顧客が再購入。 - 2位:BMW(54.0%)
ドライビングプレジャーを重視するユーザーから安定した支持を獲得。
大衆車市場(セダンなど)
そして「大衆車市場」では、おそらくは嗜好性よりも「信頼性」「価格(コストパフォーマンス)」が重視されるものと思われ、以下のような結果となっています。
- 1位:トヨタ(62.0%)
世界的ベストセラーを誇る同社は、リピート率でもトップ。前年比0.5%減とはいえ、依然として圧倒的。 - 2位:ホンダ(55.5%)
信頼性と実用性でユーザーを引きつけ、堅調に支持を集める。
大衆SUV市場
- 1位:ホンダ(62.0%)
CR-Vなど人気SUVの存在が強み。 - 2位:スバル(60.6%)
アウトバックやフォレスターといった定番SUVが高い再購入率を支えている。
ピックアップトラック市場
ピックアップトラック市場ではそもそもの選択肢が少ないものの、フォードが非常に高い数字を示していて(ポルシェの顧客忠誠度よりも高い)、興味深いのはフォードが「この数年、圧倒的なリコール王となっており、絶えず不具合が報じられている」こと。
つまり信頼性は高くないものの忠誠心が高いということがわかり、これは非常に興味深い現象です。
参考までに、これは「スポーツカー」全般にも当てはまる傾向で、つまり「嗜好性が高いジャンルにおいては、信頼性よりも、そのクルマ自体の持つ魅力や楽しさ」が優先され、それが顧客の忠誠心として現れる」と解釈することが可能です。
- 1位:フォード(66.6%)
今年も業界全体で最も高い忠誠度を記録。Fシリーズの強さが圧倒的で、前年比でも上昇。 - 2位:トヨタ(61.2%)
シルバーラードやラムではなく、意外にもトヨタが2位にランクイン。前年比で数字を伸ばし存在感を増している。
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ブランド全体の傾向
しかしながら、全体のブランド忠誠度は前年の51%から49%へ減少しており、JDパワーのシニアVP、タイソン・ジョミニー氏はその背景を次のように分析しています。
- 新型モデルの供給増加
- モデルライフサイクル(新旧モデルの混在)
- インセンティブ(値引きや購入特典)の拡大※これによってほかブランドへと目移りしやすくなっている
これらの要因により、消費者がブランドを乗り換える傾向が強まったといいます。
まとめ:忠誠度が示す「ブランド力」
今回の調査結果から見えてくるのは、ブランドへの信頼感と商品力の持続性です。
- プレミアム:ポルシェ&レクサスが圧倒的
- 大衆:トヨタ&ホンダが安定
- トラック:フォードが盤石
一方で、全体の忠誠度が50%を割り込んだことは、自動車業界の競争がかつてなく激化している証拠でもあり、今後の市場動向次第では、ランキングにさらなる変動が起こる可能性も考えられます。
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参照:J.D. Power