| この技術もキャッシュレス決済のように、気がつけば誰もが普通に利用するようになっているのかもしれない |
ボクは利便性を高める技術の導入には大賛成だ
さて、アップルはiPhoneやアップルウォッチを「サイフ」「身分証」がわりにしようというヴィジョンを掲げていますが、すでに「サイフ」としての機能を果たしており、さらには航空券や入場券、そのほか様々なチケット代わりとして利用することが可能です。
そして今回、アリゾナ州ではじめて「運転免許証と州身分証明書をApple Walletに追加することで一部のTSA(運輸保安局)セキュリティチェックポイントで使用できるようになった」との報道がなされ、いよいよ「公的」な証明書類がわりとしての活用が始まったようですね。
登録は写真を撮るだけ
そしてこの「運転免許証をWalletに追加する」のに必要なのは、運転免許証の表と裏、そして自分の顔写真を撮るだけだといい、しかし撮影した写真は州の管理局へと送られ、ちゃんと検証された上でデジタル免許証+デジタル身分証」として使用できるようになる、とのこと。
ちなみに現在は日本でも「IDの登録は写真を撮って送るだけ」というシステムが普及していますが、今後は「静止画」ではなく「動画」だったり、照合のために音声も一緒に録音するなどのシステムが登場するのかもしれない、と考えたりします。
なお、アップルは2021年6月にはデジタル免許証とデジタルIDのサポートを開始するとアナウンスしていて、しかしアメリカでは運転免許証と身分証は州単位で管理されており、その発行手段は州によって異なるもよう。
よってアップルは州ごとに(導入のための)交渉を行っていたわけですが、今回ようやくそれが実現したわけですね。
ちなみに最初に「デジタル免許証とデジタルID」の報道があった際には、このアリゾナ州に加えジョージア州との提携も確保しているとされていたので、ほどなくしてこれが「ジョージア州でも可能になった」と発表されるのかもしれません。
そのほか、コロラド州、ハワイ州、ミシシッピ州、オハイオ州、コネチカット州、アイオワ州、ケンタッキー州、メリーランド州、オクラホマ州、ユタ州、プエルトリコ領など、他のいくつかの州にも導入される予定だといい、この動きは全米に拡大することになりそうです。
ただしデジタル免許証とデジタルIDにはいくつかの課題も
ただ、このデジタル免許証とデジタルIDについては一部セキュリティの専門家が危険性を指摘しており、その内容としては「アップルは技術の詳細を語っておらず、その透明性が語られていない」こと(ただ、アップルとしても悪用を避けるために技術の開示はできないと思う)。
よってイリノイ州やカリフォルニア州など、これに対して導入を(現段階で)見送る州もあるようです。
加えて、こういった「州単位」で対応が異なること、今回アリゾナ州で導入されたといえど、「フェニックス・スカイハーバー国際空港の一部のTSAセキュリティチェックポイントでしか」使用できないことなど、利用者にとっては利便性が低く混乱を招く可能性があることも指摘されており、このあたりは「普及を待つ」しかなさそうですね(何にでも”はじめて”はある)。
デジタル免許証とデジタルIDの利用はこうやって行う
なお、この利用に際して「利用者は、iPhoneもしくはアップルウォッチのデジタルウォレットをタップして空港に設置されているリーダーにiPhoneをかざすだけ」だとされており、iPhoneを手渡したり画面を開く必要はなく、情報のやり取りが最小限に収められるのはうれしいところ。
ただ、一方で交通違反の取締り、バーに入る際の身分証明書、書類の公証などの場面においては「デジタル身分証」が使用できず、現在いずれの州においても物理的な運転免許証を見せる必要があるそうです(リーダーが施設に設置されていなかったり、警察官がリーダーを持ち歩いていないからだと思われる)。
よって、まだまだデジタル免許証とデジタルIDの普及には時間がかかりそうですが、持ち歩くモノを減らしたいぼくとしては非常に歓迎したい技術であり、日本はもちろん、世界的に普及して欲しい、とも考えています。※このデジタル免許証とデジタルIDにつき、現時点で対応しているのはiOS 15.4を搭載したiPhone 8、またはwatchOS 8.4を搭載したSeries 4以降のApple Watchのみ
こういったアップルの動きを見るに、アップルは「たんに製品を作って売るだけ」ではなく、その製品を使用して何ができるのか、いかに人々の生活を安全で快適にできるか」を考えているということがわかり、ここはほかの多くのスマートフォンブランドと大きく異るところでもありますね。