| 業界リーダーのテスラはある意味価格設定面でも「リーダー」である |
この1年、各自動車メーカーともジェットコースターのようなテスラの価格の上げ下げに右往左往してきた
米国の最新レポートによると、米国市場にて販売された電気自動車(EV)の新車価格は過去12カ月間ずっと低下しており、9月の新車平均取引価格(ATP)は前年同月比で22%以上低下した、とのこと。
高額な新車があまり登場しなかったということも関係しているものの、やはり大きな要素としては「テスラが昨年何度も小売価格を引き下げ、それにつられて多くのEVも値下げした」という事実であると結論づけられています。
さらにEVの在庫期間も長くなる傾向に
この結果として、先月の米国における新車EVの平均取引価格は50,683ドルとなり、昨年のATPである65,295ドルから15,000ドル近くも低下していて、8月と比較すると、EVは平均で1,529ドルお求めやすくなっているという数値も示されていますが、できれば「同じEVが昨年比でどれくらい下がったのか」「そのセグメントの平均価格がどれくらい下がったのか」も知りたいところ。
そして米国で一つの基準として示される「供給可能日数(在庫期間という表現にも置き換えられる)」については、ガソリン / ディーゼルエンジン搭載車の平均52〜58日に比較してEVは平均97日だと算出されており、EVは「在庫期間がガソリン車の倍近い」。
つまるところEVはガソリン車に比較して売れにくいということもわかりますが、これはあくまでも「平均値」なので、売れているEVと売れていないEVとがこの中に混在しているということに。
米国ではEVの選択肢が増える
コックス・オートモーティブのインダストリー・インサイト担当ディレクター、ステファニー・バルデス=ストレティ氏によると「EVの販売は米国で伸び続けているが、その一因は供給が好調で選択肢が増えたことだ。最後に確認したところ、1年前にはなかったEVの新モデルが15車種販売されている。選択肢が増え、価格も下がり、その結果販売台数も伸びているのです」。
たしかに北米市場では日に日にたくさんのEVを選べるようになっており、中にはこれまで「市場の覇者であったテスラが用意していなかったピックアップトラックといった選択肢も。
こういった様々な選択肢が登場することで「ガソリン車からEVに乗り換える」ケースが増えてきているのだと思われますが、このままEVが増えてくると勝ち組と負け組が明確に分かれそうであり、売れないEVが出てくるんじゃないかという懸念も生じます。
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参考までにですが、EVだけではなくガソリンなどすべてのパワートレーンを含む「自動車」全体の新車価格は(2023年8月において)前年比で0.7%下落して47,899ドルにまで下がっており、テスラはだと昨年比で平均24.7%も下がっているのだそう(ラグジュアリーブランドの中ではもっとも下げ幅が大きく、アキュラ、レクサス、インフィニティ、ボルボよりも大きく価格が下がっている。モデル3だと41,484ドルにまで下落)。
一方、利益率を上げてゆくことを標榜しているアウディやポルシェでは過去12ヶ月で平均8%以上、メルセデス・ベンツのATPは10%以上価格が上がっており、この「平均販売価格が下がる」というのはブランドやセグメントによって大きく異なるようでもありますね。
そして注目すべきは普及価格帯のクルマについても、その新車価格が平均1%ほど上がっているということで、そのうちガソリン車とEVとの”価格逆転”が生じるかもしれません(かつて「2025年には逆転する」と言われたこともあった)。
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参照:InsideEVs