| この事実には復数の要因、そして地域的な特性も反映されているように思われる |
それでも「MTを選ぶことができない状況」へと世の中が動いてゆくことは間違いない
さて、この4年にて、米国における「マニュアル・トランスミッション搭載車の販売比率が倍以上になった」との報道。
御存知の通りマニュアル・トランスミッションは絶滅の危機に瀕しており、オートマチック・トランスミッションが登場したのち20年に渡りその販売比率が低下していたわけですね。
ただ、2019年には0.7%にしか過ぎなかったMTが、2024年最新の統計だと1.7%に上昇しており、全体に占める比率は非常に少ないものの、それでも今までには見られない「増加に転じる」という現象が発生しています。※しかもこの傾向が強まっており、直近ではさらにMT比率が高まると見られている
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いったいなぜマニュアル・トランスミッションを選ぶ人が増えているのか
この「MT比率増加」については明確な理由が見当たらず、しかし一般的に論じられているのが「コロナウイルス」「EVの普及」という2点。
まず「コロナウイルス」について考えてみると、これはコロナ禍の日本においても「ルーレット族」が大量に発生したり、スポーツカーによる(公道での)事故が多発したことでもわかるとおり、明らかにクルマを「(時間つぶしやストレス発散を目的とした)スピードを追求するための手段」として用いる傾向が強まったことがわかります。
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こういった状況下において、MT車を選ぶ人が増えたということは容易に理解できるものでありますが、もともとマニュアル・トランスミッションを選べるクルマ自体がほとんどなく、よって「MT車が新しく発売されたわけではなく、すでに発売済みで、MTを選べるクルマにおいて、MTを選ぶ傾向が強くなった」「MTを設定しているクルマの販売が伸びた」と考えていいのかもしれません。
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実際のところコロナ禍中の販売ランキングでは「GR86」「ロードスター」が販売ランキングに顔を出すことも珍しくはない(それまでにこういったスポーツカーはランク外であった)といった状況が続き、かつ(これは日本だけではなく世界での統計ですが)ロードスターの販売はこの数年で大きく伸びています。
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なお、北米における直近のマツダ・ロードスターでのMT販売比率は60%、スバルBRZでは79%だとされ、これは2019年に比較するとかなりの「増加」となっており、やはりこの数年において「選べるのであればMTを選ぶ」という傾向が強くなったこともわかりますね。
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「MTを選ぶことがもうできなくなる」という危機感も
そしてMTが増えているもう一つの理由、「EVの普及」について。
現在自動車業界では「EVが未来」であると信じられており、そのため多くの自動車メーカーがEV中心のラインアップへと移行を進めています。
そしてEVだと「トランスミッション」という概念そのものが基本的に存在しないために「MTを持つEV」は(フェイクMTでない限り)存在し得ず、そしてBEVでなく、ハイブリッドやPHEVであっても(制御の関係上)マニュアル・トランスミッションのとの組み合わせが難しいため、これもやはりMTの設定は基本的にないと考えて良いかと思います。
よって現在、多くの人が「MTは遅かれ早かれ絶滅する」という揺るぎない事実を理解しており、実際に多くのスポーツカーでマニュアル・トランスミッションを選ぶことが難しくなってきていて、BMWのように「MTの製造を終了する」と宣言する自動車メーカーも登場しているわけですね。
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自動車において、「(たとえ販売台数が少ない理由が”不人気”であったとしても)絶対数が少なければ」希少価値の向上=取引価格の上昇に繋がることとなり、それは今までの歴史において証明されているわけですが、こういった状況下では「MT車を買い急ぐ」という傾向が生じること、将来的な値上がりを見込んで「仕込んでおく」人々が登場することは想像に難くなく、こういった復数の要因がMTブームへと結びついているものと思われます。
ただ、世界的に見ると、MT比率が上昇しているのは「日本と米国だけ」だとも報じられていて、これはこれで面白い現象なのかもしれません。※(例外はあれど)日本と米国では「楽しみのためにクルマに乗る(運転する)」傾向が強く、欧州では「移動のためにクルマを使用する」という捉え方が大半だとも言われており、MT比率の変動はこの傾向をより濃く反映したものだとも考えられる
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