
| アストンマーティンは過去に27のシャシー、240人のドライバーをもってル・マンを戦い、総合優勝を飾ったことも |
ル・マンはアストンマーティンの歴史の一部であり、ル・マンに戻ってくることは本当に喜ばしいことである
さて、ウワサされていたとおりにアストンマーティンが「2025年より、FIA世界耐久選手権とIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権両方のハイパーカー・クラスに、ヴァルキリーのレーシング・プロトタイプ・バージョンを少なくとも1台参戦させる」と宣言。
ヴァルキリーは当初、アストンマーティンとレッドブル・レーシングの共同開発による”AM-RB 001”として2016年に発表され、幾多の困難を乗り越えてついに昨年から本格的に納車が開始されています。
そして2019年には「ヴァルキリーにてル・マンへ復帰する」とアナウンスしているものの、その後に陥った経営不振によってこれを撤回しているわけですね。
ただ、アストンマーティンはロードバージョンのヴァルキリーと並行し、よりハードコアな”ヴァルキリーAMRプロのバリエーションも進行させており、2025年からハイパーカークラスで戦うのはこのヴァルキリーAMR Proをベースとした車両になるものと思われます(今のところ詳細はコメントされていない)。
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アストンマーティン・ヴァルキリーは「ル・マン24時間レース”ハイパーカークラス”では唯一の」市販車ベース
なお、ル・マン24時間レース「ハイパーカークラス」は今年はじめて導入されており、このクラスにはキャデラックやポルシェ、フェラーリが新しく参入して大きな盛り上がりを見せ、見事フェラーリが「ル・マンに50年ぶりに復帰し」勝利を収めたのは記憶に新しいところ。
そして来年にはBMWやランボルギーニも参戦することになり、さらなる盛況が期待できますが、もともとこの「ル・マン・ハイパーカー=LMH」クラスは市販ハイパーカーの参戦を予定していたようで、つまりはラフェラーリやブガッティ・シロン、ケーニグセグ・レゲーラ、アストンマーティン・ヴァルキリー、メルセデスAMG Oneなどの(ネット上では慣れ親しんだ)ロードカーがル・マン24時間でしのぎを削る事でレースを盛り上げようというう計画があったもよう(実際のところ、当時はベースとなる市販車を発売せねばならないという規則もあった)。

ただし実際に参戦に名乗りをあげた自動車メーカーはほとんどなく、よってル・マン24時間レース開催側はレギュレーションを緩和し、かつIMSAとの乗り入れを発表することで改めて参加チームを幅広く募ることになり、これによって(参戦障壁が下がったので)上述のポルシェやフェラーリなどが参戦を表明したという経緯も。
しかしながらレギュレーションを変更することで「もともと予定していた」市販車ではなくプロトタイプレーサー、LMDhレーサーによって競われることとなってしまい、つまりル・マン・ハイパーカーを走るレーシングカーには「1台も市販車をベースとするクルマが存在しない」という事態となっています。
よって、アストンマーティンがル・マンを走らせる「ヴァルキリー」は唯一の市販車ベースのレーシングカーとなり、グリッド上では非常に貴重、かつ特異な存在だと考えられるわけですね。

アストンマーティンはヴァルキリーAMR Proをル・マン用にどう調整するのか
上述の通り、現段階でアストンマーティンがどういった仕様のヴァルキリーAMR Proをル・マン24時間レースに持ち込もうとしているのかはナゾですが、「自然吸気エンジン史上最高の出力」を発生するV12エンジンに手を入れる必要があることは間違いなく、レギュレーションに合わせ、かつ24時間走り続けるための耐久性を確保するためにやや許容回転数が落とされることになるのかもしれません。
そして気になるのは「ハイブリッドシステムの有無」。
ヴァルキリーAMR Proにはハイブリッドシステムが搭載されず、しかしル・マン参戦にあたってハイブリッド化するのかどうか(そしてそれがレギュレーション上許されるのかどうか)は気になるところでもあり、ほかのライバルの多くが「フロントホイールをエレクトリックモーターで駆動する」というパッケージングを採用する中、ヴァルキリーAMR Proが「後輪駆動」を貫くのかどうかも気になるところ。

なお、フェラーリは499Pの競争力の高さについて「エレクトリックパワーにて駆動される前輪」をその大きな理由として掲げており、今の時代のル・マンにおいて「後輪駆動のみ」では勝つことが難しいとも考えられます。
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一方、アストンマーティンはかつて「ヴァルキリーAMR ProはLMP2マシンと同等のタイムで(ル・マンの舞台である)サルト・サーキットを走ることができる」ともコメントしており、ここからさらに手を加えることでLMP2マシン以上の戦闘力を手に入れ、ル・マンのトップカテゴリにて十分な競争力を発揮させ、フェラーリはじめポルシェ、トヨタ、プジョー、そしてグリッケンハウス、キャデラック、BMW、ランボルギーニと競うことになるのかもしれません。
もちろんアストンマーティンはライバルに打ち勝つことができる自身があるからこそ今回の参戦表明を行ったのだと思われますが、このル・マン24時間レースに参加することで「FIAフォーミュラ1世界選手権だけでなく、スポーツカーとGTレースのすべてのレベル(ハイパーカーからGT4まで)に参戦する唯一のメーカー」となるのも注目に値するところ(アストンマーティンは2020年後半にWECから離脱したが、最新のヴァンテージの新しいGT3およびGT4の開発に懸命に取り組んでおり、これら新型車はWECのGTEクラスに代わる2024年LMGT3レギュレーションに準拠するとしており、復帰が約束されている)。

そして何よりも「ル・マンへの復帰」はアストンマーティンのブランドイメージを高めるために必須でもあり、これによってアストンマーティンはこれまで以上にモータースポーツイメージを強めることになるのは間違いなく、フェラーリやポルシェの「真のライバル」としてサーキットに復帰することになりそうです。
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参考までに、アストンマーティンは過去95年間、27の異なるシャシーとエンジンの組み合わせ、そして240人以上のドライバーをもってル・マンに参戦してきたという歴史を持っており、アストンマーティンがル・マンに初参戦したのはル・マン24時間レースが初めて開催されてからわずか5年後の1928年のことで、それ以来、19回のクラス優勝と1959年には総合優勝を達成しています(興味深いことに、この年はアストンマーティンが初めてF1に参戦したのと同じ年である)。
なお、今回公開された公式フォト/動画に登場する車両に用いられるレーシングナンバーは「007」。
もちろんこれはジェームズ・ボンド、そして007映画を意識したものだと思われますが、このナンバーが認可されれば確実に(さらなる)話題を呼ぶことになりそうですね。
参照:Aston Martin