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なぜクルマのバンパーはボディとでは色味が違って見えるのか?「下地の素材の違い」「塗装方法の差」「塗料の使い分け」「デザイン」「褪色」「劣化」などその理由を徹底解説

なぜクルマのバンパーはボディとでは色味が違って見えるのか?「下地の素材の違い」「塗装方法の差」「塗料の使い分け」「デザイン」「褪色」「劣化」などその理由を徹底解説

| 「再塗装された?」と思ったら……実は違うかも |

年式が古いクルマだと「ボディとバンパーの色味が異なる」のは珍しくない

中古車をチェックしていて、ボディパネルとバンパーの色が微妙に違うと「事故車?」「再塗装?」と疑いたくなるかもしれません。

もちろん再塗装の可能性もありますが、質感のムラやオーバースプレーといった痕跡がなければ、それは単に”ボディパネルとバンパー”、つまり金属と樹脂という素材の違いによるものだとも考えられます。

プラスチックと金属では塗装工程が異なる

大半のクルマは、バンパー(樹脂製)とボディ(鉄やアルミ)が別々に塗装されますが、同じ色の塗料を使用してペイントしたとしても「仕上がり」が異なる場合があり、たとえばその理由の一つは以下の通り。

  • 金属パネル:高温で焼き付けが可能。さらに電磁塗装(エレクトロスタティックペイント)により、帯電させた金属にイオン化した塗料を吸着させる方法が採用される。
  • 樹脂パネル:熱に弱いため高温での焼き付け不可。また樹脂は帯電しないため、電磁塗装は使えず、通常のスプレー塗装が行われる。
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この違いにより、同じ塗料を使っても色の見え方が微妙に変わるということになりますが、さらに自動車メーカーによってはバンパーとボディを同じ工程で直接比較しないため(違う工場で塗装され、それらが最終的に組立工場に運び込まれた後、無差別に組み立てられる)、微妙な色差が”チェックされないまま”そのまま出荷されるケースも存在します。

なお、プレミアムカーメーカーはこういった「素材による色味の違い」を補正すべく、同じボディカラーであっても「素材ごと」に調合を変えており、ポルシェやブガッティはカスタムカラーを調合する際、「まずは同じカラーを異なる素材にペイントし、そこで色の再現性を確認した後、微調整を行うことで”異なる素材でも同じ色味を表現できるよう”修正を行う」と公式に語っていますね。

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デザインによっては差が「強く出てしまう」ことも

さらに「ボディとバンパーとの色の差」につき、上述のような塗装の性質に加え、デザインの要素も色の違いを際立たせる原因になります。

  • メタリック、あるいはパール塗装:反射粒子の向きで角度によって色が違って見える。ボディとバンパーとの角度がその「境界」から異なっている場合、その色味の差が目立ちやすい
  • 80〜90年代のクルマ:クロームやゴムモールがバンパーとボディを分断していたため、色の違いが目立ちにくかったが、現代のクルマでは「ボディとバンパー」とがシームレスに結合され、それらの色味が異なると、その差が「接合面を堺に」してはっきりとわかる

さらにはボディパネルの継ぎ目や隙間が人間の目を錯覚させ、色の違いが強調されることもあり、これらが複合的に組み合わさることで「ボディとバンパーとの色が違う」と感じるのだと言われていますね。

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そのほかにもこんな要素によって「ボディとバンパーとの色味が違う」と感じられる

これらに加え、いくつかの要素によって「ボディとバンパーとの色味が違う」と感じられることがあり、代表的なものは「塗装の劣化」。

紫外線による褪色が顕著な「レッド系」、とくにメタリック系のカラーに多く見られますが、たとえば数世代前の「メタリックピンク」の塗装色を持つホンダ・フィットやトヨタ・ヴィッツはこの代表例。

ただ、「ソリッド」仕様のレッドではさほど「色味の差」が見られず(ただし光沢の差といった別の問題が生じる)、もっとも紫外線の影響を受けやすいのはメタリック系のレッドだと捉えています。

そして紫外線の影響を受ける例としては「ホワイト」が挙げられ、これはソリッドであってもパールであっても同様で、年月を経るごとに「金属部分(ボディ)」と「樹脂部分(バンパー)」との色味の差が拡大することに。

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しかしながら面白いのは(面白くはないか)「ほぼすべての例で、樹脂部分のほうがより黄色っぽく変化してくること」で、つまりボディよりもバンパーのほうが「黄ばんで」見えてしまうこと。

この理由としては、「樹脂パーツでは、”しなる(たわむ)” ”凹む”ことを想定し、ガチガチに硬化しない、つまり乾燥してもある程度柔軟性を保つ塗料を使用している」ことが挙げられます。

たとえばバンパーは(一般的に)復元力があるため、何かとぶつかって凹んでも「元に戻る」可能性が想定され、しかしその場合に「塗料が硬く、凹んだときに塗膜が剥がれたり割れたりしてしまっては」せっかく形状が戻ったバンパーを再塗装せねばならず、そのため「バンパーの復元力を考慮し、もしもの場合でも再塗装しなくてもいいように」柔らかい塗料を使用しているわけですね。

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そしてこの「柔らかさ」が色味の保持性能にいくぶん影響を及ぼすことで「金属面に塗装する、硬い塗膜を持つ塗料」よりも劣化が早いのだと考えられますが、さらにその差は耐久性にもあらわれるようで、樹脂に用いられる塗料のほうが耐久性が低く、紫外線などの外的要因によって、ボディパネルの塗装よりも速く光沢を失ってゆくように思います。

ぼくの経験だと、レンジローバー・イヴォーク、そしてランボルギーニ・ガヤルドにおいてこの傾向が見られ、とくにガヤルドではボディパネルに複数の性質を持つ樹脂が使用されていたため(少なくとも2種類)、アルミ部分とも相まって「それぞれのパネルがそれぞれの速度で、それぞれの色味をもって黄ばんでいった」ことが記憶に残ります。

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参考までに、上述のブガッティやポルシェは「新車製造時の色味の差」を解消するための努力を行っているほか、この「劣化」に対しても対策を行っており(なにぶん、長年にわたって高い価値を維持しなければならない)、新しいボディカラーを開発する際、強い紫外線を含む過酷な環境にカラーサンプルを晒すため、「数年」という検証期間が必要である、ともコメント。

そしてもちろん、多くの自動車メーカー、そして塗料メーカーの努力によって、塗料そのもの、そして塗装の品質や耐久性は年々向上しており、かつ厳格化された(開発・製造段階における)品質チェック等により、最近のクルマだと「ボディとバンパーとの色味の差」が非常にわかりにくくなっているようにも感じられ、さらにはボディとバンパーとの接合部になんらかのデザイン的処理を盛り込み、差異を感じにくくするような視覚的配慮も見られます。

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こういった「改善」を見ると、この「ボディとバンパーとの色の差」は小さくない消費者からのクレームであったのだとも思われ、自動車メーカーはその声に真摯に応えてきたということになりそうですが(ボディカラーが多ければ多いほど、クレームも多く、開発コストも上昇するのだと思われる)、いずれにせよ、より高い完成度を持つクルマが増えてきているのは嬉しい事実でもありますね。

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まとめ

  • バンパーの色が違って見えるのは「再塗装」ではなく「素材と塗装方法、塗料の違い」が主な原因
  • デザインや光の反射によって色差が強調されることもある
  • さらには「褪色」「黄ばみ」といった劣化要素も
  • 紫外線に弱いメタリックレッド系、ホワイト系では劣化が顕著に出る場合も
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参照:Jalopnik

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