| この馬力でこの価格は相当に破壊力がある |
さて、マクラーレンが「新世代スーパーカー」、アルトゥーラを発表。
このアルトゥーラはマクラーレン初の(限定ではない)量産ハイブリッドスポーツであり、エレクトリック化のために何一つ損なうことがなく、むしろパフォーマンス向上のために電動化を活用したところに特徴があります。
マクラーレン・アルトゥーラのパワートレーンは新設計
まずはアルトゥーラのパワートレーンですが、新開発の3リッターV6ツインターボ+シングルモーターにて構成。
ガソリンエンジンは585PS、そしてエレクトリックモーターは95PSを発生するので、システム合計だと680PSということになりますね。
エンジン形式はM630(アルミ製)、レブリミットは8500回転という高回転型で、もちろんドライサンプを採用します。
ボールベアリングタービンはVバンクの内側に設置される「ホットV(ロールセンターが集約されるが、チューナーにとってはタービン交換が難しくなった)」を採用し、エンジン単体重量はこれまでのV8ツインターボに比較して50kgも軽い160kg。
Vバンクは120度に設定され、これによって重心を低く抑えることにも成功しています。
リッターあたりの出力は195PSをマークし、これはセナやエルヴァといった特別なモデルを除くと「マクラーレン史上最高レベル」で、この数字を見てもいかにこの新型エンジンが優れているかがわかりますね。
なお、エレクトリックモーターはエンジンとトランスミッションとの間(トランスミッションのハウジング側)に挿入され、モーター単体での走行も可能です(30km程度まではモーターのみでの走行が可能)。
駆動方式はもちろんMR。
マクラーレンの軽量設計思想は随所に現れる
そしてマクラーレンが最も重視しているのは「軽さ」。
フェラーリにとってエンジンが最重要課題であるのと同様、マクラーレンの発行するプレスリリースの冒頭には「軽さ」アピールが並んでいることからもそれをうかがい知ることができます。
このアルトゥーラに積まれるハイブリッドユニットはわずか130kgにとどまるとされていますが、これを含めた車体重量はドライウエイトで1395kg。
マクラーレン570Sの重量は1313kgなので、ここから82kg増えているということになり、しかしプラグインハイブリッドとしては「上出来」だと思います。※マクラーレンP1はハイブリッド化によって150kg増加している
搭載されるエレクトリックモーターは「アクシャル・フラックス・エレクトリックモーター」と表示され、その効率はマクラーレンP1に搭載されたモーターよりも33%優れるといい、こういった数字を見ると「まだまだEVは、モーター、そしてバッテリーともに発展途上にある(今後もっと進化する)」ということを改めて感じさせられます。
バッテリーはリチウムイオン、容量は7.4kWhだとアナウンスされています。
なお、トランスミッションは8速デュアルクラッチですが、モーターが逆転することで「リバースギア」の役割を果たし、よって「バックギアなし(この発想はなかった)。
そのため従来の7速デュアルクラッチに比較して40ミリ短くなり、もちろん重量も低減されているようですね。
その設計はハイブリッド専用の「新世代」
アルトゥーラに採用されるカーボン製バスタブシャシーは最新世代のカーボンモノセル。
もちろんハイブリッド用に開発されており、フロア下に冷却系や送電系を収める構造を持っています。
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さらにアルトゥーラはMCLA(マクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャ)を取り入れた最初のマクラーレン。
そのひとつがエレクトリック化を前提として効率化を図った設計で、「ガソリンエンジンから動力や熱源を取らない」、つまりピュアエレクトリックまでもを想定化した「フル電動による暖房や冷房、換気システム」を持っており、これによって配線や配管が大きく削減された模様。
このあたり、既存車種をハイブリッド化したのではなしえない部分だと思われ、コストがかかるといえど、マクラーレンがどうしても実現したかったことなのでしょうね。
もともとマクラーレンは(F1コンストラクターだけあって)割り切った設計を持ち、その要は「不要なものを切り捨て、必要なものだけを残す」ことにありますが、今までのモデルにおいても、配線や各コンポーネント間の接続、排気系などが「最短経路で」実現されており、今回はさらにハイブリッド化にあわせて最適化したということになりそうです。
そのパフォーマンスはガソリン車顔負け
このアルトゥーラのパフォーマンスについて、0-100km/h加速は3秒、0-200km/h加速は8.3秒、最高速度は330km/h。
ストッピングパワーについても加速以上に強力で、時速100キロから停止までに擁する距離はわずか9.45メートル。
ブレーキディスクはカーボンセラミック(フロント15.4インチ、リア15インチ)、ブレーキキャリパーはアルミ製モノブロック。
ホイールサイズはフロント19インチ、リア20インチです。
一方、ピュアエレクトリックモードでの走行を前提に、マクラーレンは「アルトゥーラにおいては高い快適性を目指した」と述べており、つまりガソリンエンジンが稼動していない状況での走行においても「車内が静かな」環境を作り上げてきた模様。※ガソリンエンジンが動いていれば、車内の低級音などノイズがかき消されるが、エレクトリックモードではそうはゆかない
ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス(NVH)が徹底的に抑えられ、たとえばタイヤ(ピレリ製)内部にはノイズ低減のため、内側に吸音スポンジが挿入されています。
マクラーレン・アルトゥーラのデザインはこうなっている
マクラーレン・アルトゥーラのデザインについては「キープコンセプト」とも言えるデザインを持っており、「ハイブリッド化」という歴史的な転換を迎える割には「あまり変わってない」という印象も。
セナやエルヴァで採用された薄型ヘッドライトに「GT」っぽいテールランプを持ち、マクラーレンらしいデザインとも言えますが、ある意味では「拒絶される可能性」すら含むハイブリッドスポーツだけに、意図的に新しいデザインを採用しなかったのかもしれません。
ドアの開閉についてもこれまでどおり「ディヘドラルドア」を採用し、フロントからリアに至るまで「空気の流れが目に見えてわかる」かのようなディティールを持っています。
マクラーレン・アルトゥーラのボディサイズは全長4539ミリ、全幅1913ミリ、全高1193ミリ。
ハイブリッド化によってフロアが高くなっていると思われるものの、それでも他のマクラーレン同様、全高1200ミリ以下に収めてきたようですね。
マクラーレン・アルトゥーラの内装はこうなっている
そしてこちらがマクラーレン・アルトゥーラのインテリア。
エクステリア同様に大きく印象が変わるものではなく、しかし細部がより近代的に。
そしてさらに「ドライバーに操作系が寄せられている」ように感じられます。
ティーザー画像でも印象的だったアンビエントランプが、アルトゥーラにおける一つの特徴ということになりますが、これは「スマートキーを持って車両に近づくと、一定距離内にてLEDランプが点灯する」模様。
マクラーレンは720Sにおいても「エンジンルーム内のLED照明」などいくつかの演出を取り入れていて、「走り一徹」だけではなく、こういったオーナーの所有欲を満たす仕掛けが与えられているのは興味深いところです。
エレクトリックモードでの使い勝手は?
気になるのはEVモードでの使い勝手ですが、マクラーレンによれば、EVSEケーブルを使用し2.5時間にてバッテリー容量の80%までの充電が完了(どの電源を使用した場合なのかは不明)。
4つあるうちのひとつ、「Eモード」ではモーターのみの走行が可能となりますが、これ以外のモードでも積極的にエレクトリックドライブを活用する設定を持っているようで、「コンフォートモード」に入れると時速40キロ以下ではガソリンエンジンが停止する、とのこと。
なお、Eモードでの最高速度は130km/hに制限されていますが、日常の使用だと十分な範囲だと考えられます。
参考までに、残る「スポーツモード」「トラックモード」では、エンジンレスポンスと加速を改善するためにエレクトリックモーターを積極的に介入させているといい、マクラーレンが「エコのため」のみならず、「パフォーマンス向上」のためにエレクトリック化を行ったということもわかりますね。
マクラーレン・アルトゥーラの納車時期や価格は?
現在日本では価格や納車時期の発表はないものの、欧州や北米では受注が開始されており、北米だとその価格は225,000ドル(日本円で2385万円)。
これだけの馬力やパフォーマンスを持つスーパーカーとしては”破格に安い”設定を持ち、さらには「ハイブリッド化」をパフォーマンス向上など積極的に活用しているところからも「ハイブリッドでしかなしえない」機能を持つクルマだと言え、ガソリン車の代替ではなく、「ガソリン車以上のクルマ」として積極的に選びたくなる一台だと思います。
マクラーレン・アルトゥーラを紹介する動画はこちら
参照:McLaren