| これまで中国の知的財産権局は中国企業寄りの判断を下すことが多かったが |
今回はあまりに類似点が多く、これを認めると中国としても沽券にかかわるだろう
さて、現在中国の自動車メーカーは二極化しつつあり、NIOやGeelyのように独自のデザイン路線を歩むところもあれば、北京汽車や長城汽車のようにひたすら他社製品のコピーや模倣を(未だに)行うところも存在します。
そして独自路線を進む中国自動車メーカーの中には、BMWやアウディほか、欧米の既存自動車メーカーからデザイナーをスカウトしてデザインチームを組織する場合もあり、この場合は非常に高いレベルのデザインを行うこともしばしばあるもよう(中国の自動車メーカーはデザインを重視しているので、デザイナーの発言力が強く、社内でも通りやすい環境にある)。
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ただし今回はクラシックミニのまんまコピーが登場
しかし今回話題となっているのは、そういった高い独自性を持つブランドではなく「粗悪なコピーを行う自動車メーカー」。
北京艾斯泰克科技有限公司(Beijing Estek Technology)なる会社が、見ての通りクラシックミニそのままの姿を「自社の電気自動車」として中国の国家知的財産権局へと申請したもので、バンパー形状やドアヒンジの有無、ホイールサイズ、ドアミラーなどに相違はあるものの、基本的には「コピー」と断じて良いかと思います。
なお、出願されたのは2022年5月ですが、こういったパテントは(国によって異なるものの)一定の段階になると「公開」され、その後一定期間を経て登録されることが大半です(公開しないように請求できる国もある)。
構造としてはフロントにモーターを積んで前輪を駆動する電気自動車で、車体後部には給油口のようなキャップも見えますが、このクルマは「EV」なので、ここは充電ポートとして機能するものと思われます。
ただしBMWはこれを見逃さなかった
そしてこのパテントが公開されたのを見逃さなかったのがBMWで、BMWはすかさず国家知的財産権局に対し、このパテントを「無効」とするように(2022年7月に)申請することとなったわけですね(つまり、BMWは世界中の同様の機関をパトロールしており、その段階で発見したとも考えられる)。
そして今年の1月29日、国家知的財産権局は北京艾斯泰克科技有限公司による申請を「無効」という判断を下しているのですが、この判断に不服があれば、北京艾斯泰克科技有限公司は3か月以内に反論することが可能であることもあわせて報じられています(今のところは不服が申し立てられていないようだ)。
上の画像(左下の赤枠で囲んだ部分)では、出願者が北京艾斯泰克科技有限公司であること、無効申請を行ったのが宝马股份公司(BMWは中国語表記だと宝马=宝の馬と書く)ということがわかりますが、国家知的財産権局が自国の自動車メーカーではなく、他国の自動車メーカーであるBMWの味方をしたのはちょっと意外。
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というのも、これまでに「レンジローバー・イヴォークのコピー」「フォルクスワーゲン・ビートルのコピー」に対しては、コピーを行った中国の自動車メーカーの味方をしており、それらについて「有効」だと認めたため。
ただしビートルのコピーについては、コピーしたほうが4ドアであるという構造的な相違が見られ、そういった差が「判断の差」となって現れたのかもしれませんね。
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参照:汽車之家