| やはり「あるところにはお金がある」 |
ロールス・ロイスの顧客は1台の車両に「新車価格の何倍も」コストをつぎ込むことが珍しくない
さて、ロールスロイスは今年で創立120周年を迎えますが、その前年である2023年につき「好調な販売とビスポーク(ワンオフ / カスタム)部門の収入によって非常に成功した年になった」と発表。
ロールスロイスによれば、(2023年は)119年の歴史においてもっとも多くの車両(6,032台)を販売した年になり、かつそれらすべてのクルマがビスポーク仕様であったとのことで、販売台数のみではなく、その販売の内容についても大きな変化があったと考えて良さそうです。
ロールスロイスは世界全域にて販売を伸ばす
最も販売が伸びたのは北米そして中国だそうですが、中東、アジア太平洋、ヨーロッパを含むほぼ全世界において成長が見られ、かつ本社では180人の新規雇用を行うなど、あらゆる面において実りのある年になったとコメントしており、ロールス・ロイスの新CEO、クリス・ブラウンリッジ氏による声明は以下の通り。
2023年はロールス・ロイスにとってまたしても特別な年となり、すべての地域および製品ポートフォリオ全体で好調な販売実績を上げました。 初のEVであるスペクターに対する多大な関心と需要が見られることは特に心強いことであり、将来のモデルの開発と生産に対し、大胆な「オールエレクトリック」戦略を採用するという決定を後押ししています。 ビスポーク手数料に関しては量と金額の両方で記録的なレベルに達しており、高級品分野における当社の立場を強調し、他では得られない自己表現とパーソナライゼーションの機会をお客様に提供したことの証明にほかなりません。
新しいCEOとして、私は強固な基盤と成長と発展のための明確な戦略、恐るべき技術力を持つ献身的なチームを含め、健全な事業の責任を引き継ぐという極めて幸運な立場にいます。 ロールス・ロイスのチーム全体と協力してこの勢いを維持し、この偉大な会社を自信と信念を持って前進させていくことを楽しみにしています。
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ロールス・ロイスは「ビスポーク」に注力
なお、この「ビスポーク」分野が大きく伸びたのは特筆すべき点であり、つまりは「顧客一人あたりの売上単価、顧客一人がロールス・ロイスに落とす利益」が増えたことを意味します。
そもそもロールスロイスのクルマは非常に高価なので購入できる人が限られていて、よってこの価格帯のクルマの販売を大きく伸ばすことはそう簡単ではなく(それでも販売は伸びている)、しかし営利企業であるがゆえに利益を伸ばさなくてはならないわけですね。※販売台数を伸ばすと希少性が下がるといった問題もある
そうなると重要になってくるのが1台あたりの利益であり、そして1台あたりの利益を押し上げるのが「ビスポーク」。
これは前澤友作氏が数千万円もしくはそれ以上の金額をかけて自分仕様のロールス・ロイスを作った「あの」プログラムを指しており、ロールス・ロイスの裕福な顧客は「1台のロールス・ロイスに、何台分ものコストをつぎ込んでカスタムしている」ということに。
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ただ、顧客が「ビスポーク」に投じる費用を押し上げるのもまた容易ではなく、というのもベースとなるクルマにそれだけの価値がなければ顧客はそこに費用を投じないため。
加えて投じたコストに見合うリターンがなければ顧客はそこにお金をかけることはなく、よってロールス・ロイスがこれだけビスポークにかかる売上を伸ばしているということは、「ロールス・ロイスのクルマの価値そのものが高く、お金をかけるだけの魅力があり、そしてお金をかけてカスタムした内容もまた金額以上の満足感を与えてくれるから」だと考えられます。
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なお、このビスポークに対してもっとも大きなコストを投じるのは中東の顧客であるとされ、そのためにロールス・ロイスはドバイに(ビスポークを受け付ける)プライベートオフィスを設置したのだと思われますが、2023年秋には上海にこのプライベートオフィスが開設され、2024年には韓国ソウル、そして北米にも開設を計画しているのだそう。
そしてもちろん、受注を拡大するということはそれに対応する生産能力を高めるということになり、ロールス・ロイスは日々拡大し深化する顧客の要望に応えるために様々な技術を磨き、また開発し、それを実現できる職人を育成することについても触れています。
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現時点でここまでの高額な「ビスポーク」代金を取ることができるのはロールス・ロイスとブガッティくらいのものだと思われますが、ベントレーやフェラーリもそれに次ぐ規模にあると捉えており、ポルシェやランボルギーニ、マクラーレンもまた「顧客が喜んで高額なカスタム費用を支払う」ブランドでもありますね。
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参照:Rolls-Royce