| やはり細部を見てみるとブガッティの工作技術の「桁違い」なレベルがよくわかる |
現代のブガッティが「我々が作っているのは芸術品である」というのもまたうなずける
さて、ブガッティはここ最近再ブランディングとともに過去を振り返るコンテンツをいくつか公開していますが、今回はタイプ57のロードスター版、「グランドレイド・ウジーネ」を振り返っています。
これは1934年10月のパリ・サロンにて発表されたモデルで、特に競技用に設計されたものだといい、フランス語で長く困難なラリーを意味する「レイド」が車名に盛り込まれています。※タイプ57にはいくつかのボディタイプが存在する
今回紹介されているシャシーナンバー57222は、ブガッティ創業者であるエットーレ・ブガッティがとくに好んだ「ブラックとイエロー」のツートーンにて仕上げられ、製造が確認されているのはこの一台のみ、とのこと(いったいその価値がどれくらいなのか見当もつかない)。
ブガッティType57ロードスター・グランドレイド・ウジーネは「あまりに特別な一台」
ブガッティ・オトモビルCEO、クリストフ・ピオション氏によれば、「ブガッティType57ロードスター・グランドレイド・ウジーネは、あらゆる面でブガッティの伝統を受け継ぎ、21世紀におけるブガッティを体現する特別な一台です。このクルマは、性能を追求し、最高水準のクラフトマンシップと贅沢さをもって設計されました。現代のブガッティのクルマを設計する際のインスピレーション元となったラグジュアリースポーツカーです」。
なお、この「ウジーネ(Usine=フランス語で工場の意味)」というのはブガッティの正式な名称ではないといい、おそらくはこのクルマをデザインした(ブガッティ創業者の息子である)ジャン・ブガッティが名付けたものだと言われているもよう(これはブガッティにとっても謎らしい)。
そしてタイプ57ロードスター・グランドレイドは、タイプ57SCアトランティックやタイプ57Sアタランテとは異なってレースを想定して製造されたモデルだとされ、流線型で細長いフェンダー、V字型のフロントガラス、空力を考慮したヘッドレストサポートなどがその特徴。
さらには車体構造にも手が入り、ステアリングコラムの角度を調整してドライバーを車体の後方に移動させ、シフトレバー、ハンドブレーキ、ペダルの位置も変更されています。
ブガッティType57ロードスター・グランドレイド・ウジーネは数々のレースにも参戦
パリ・サロンにてその美しいデザイン、ハイスペックなシャシーを披露して世界を驚かせた直後、タイプ57ロードスター・グランドレイド・ウジーヌは、伝説となったレーシングドライバー、ピエール・ヴェイロン(もちろんブガッティ・ヴェイロンの命名の由来)によってパリ~ニース・ラリーに参戦。
1935年4月にはグランプリドライバーのロベール・ブノワのドライブにより、このタイプ57ロードスター・グランレイド・ウジーヌは、シャヴィニー・ヒルクライムイベントにて優勝を飾ることとなります。
1946年、このクルマは戦後初のオーナーに売却され、その後このオーナーによってフェンダー上のライトの改造が行われたそうですが、その後、この改造はサロン・ド・ロトモビルへの展示の際にオリジナルの姿に完全に戻されたという記録も残ります。
2001年以降、このタイプ57ロードスター・グランドレイド・ウジーヌは、ハーグのルーマン・ミュージアムに展示されていると紹介されており、どういった経緯で博物館に所蔵されるようになったのかはちょっと謎。
こうやって画像を見ると、細部にまでこだわりぬき、さらには他のいかなるクルマとも似ていない、そして高い品質を持っており、「比較されうるのであれば、それはブガッティではない」という、ブガッティ創業者、エットーレ・ブガッティの信念がよく分かる一台だと思います。
レストアの記録については記述がないものの、見た範囲では「完璧に」レストアされているようで、金属パーツには曇り一つない状態でもありますね。
ちなみにこのルーマン・ミュージアムは、130年以上にわたる自動車の進歩、革新、デザインの歴史を、275台を超える自動車の歴史的なコレクションで紹介する博物館だそうで、世界で最も古いヒストリックカーのプライベートコレクションの展示で知られるのだそう。
1934年に設立され、世界でも有数のアイコニックな自動車とオートバイのコレクションを有し、開館以来ルーマン家が運営しており、現在は創業者であるピーテル・ルーマンの息子であるエバール・ルーマンが所有しているそうですが、この博物館の建物自体にも大変な価値があるとされ、ドリーハウス賞を受賞した建築家マイケル・グレーブスの設計によるものだ、と紹介されています。
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参照:Bugatti