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【美と速さの融合】ブガッティ「トゥールビヨン」のデザイン哲学:創業者の魂とヴェイロン / シロンからもたらされた知、隼をモチーフにした理由とは

【美と速さの融合】ブガッティ「トゥールビヨン」のデザイン哲学:創業者の魂とヴェイロン / シロンからもたらされた知、隼をモチーフにした理由とは

Image:Bugatti

| ブガッティ「トゥールビヨン」:デザインの限界を押し広げた「スピードとエレガンス」の融合 |

ブガッティが語る「トゥールビヨンの秘密」最新シリーズ

ブガッティは創業初期から、スピードとエレガンスという比類なきバランスをクルマに注ぎ込み、自動車工学の可能性の限界を押し広げてきた存在ではありますが、最新モデルである「トゥールビヨン」はまさにその集大成。

ブガッティのデザイナーたちは、この新型ハイパーカー「トゥールビヨン(Tourbillon)」において、この普遍的な哲学(スピードとエレガンス)に対しても新たな領域を切り拓くことに成功し、Veyron(ヴェイロン)とChiron(シロン)の開発プログラムで培われた20年間の専門知識が惜しみなく注ぎ込まれています。

ブガッティ・トゥールビヨンはダイナミックでありながらも「優雅さ」を併せ持つ

ただ、トゥールビヨンはヴェイロンやシロンの発展形ではなく「一から開発された」ブランニューモデルであり、そのデザインは、”スピード”というトッププライオリティによって形作られながらも、ブガッティの核心である優雅さを全身にて表現しています。

この「優雅さ」は116年以上にわたるブガッティの歴史におけるデザインへのコミットメントでもあり、現代に至るまでブガッティのすべてのクルマに流れる精緻な流儀。

この「流儀」につき、ブガッティは「時を超えて共鳴し、真の不朽の感覚を呼び起こすには、現代のトレンドを超越し、時代に関係なく感情を呼び覚ます必要がある」と述べています。

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1930年代の天才的ひらめき:「Surbaissé(シュルベッセ)」の継承

ブガッティにおけるデザインの旅路は1930年代初頭にまで遡ることができ、創業者の息子であるジャン・ブガッティが「surbaissé(スュルベッセ:低くする)」と呼ばれる概念を生み出し、これはType 57 SC Atlanticに用いられているのだそう。

「エンジンをフロントアクスル(前車軸)の後ろに低く沈めることで、ボンネット、ドライバー、ルーフを下げることができ、空力効率を最大化しました。それは当時のどのクルマとも似ていませんでした。そして、その同じ哲学がトゥールビヨンにも応用されています。トゥールビヨンの目的は、エレガンスとスピードを融合させることなのです」

ブガッティ デザインディレクター フランク・ヘイル

この二つの特性が共生する関係を築くため、デザインチームはさらに予想外のインスピレーション源から着想を得ることに。

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ハヤブサに学ぶ空力効率:極限まで絞り込まれた形状

そのインスピレーションとは「ハヤブサ」で、フランク・ヘイル氏は以下のように付け加えています。

ハヤブサ(Peregrine Falcon)は生物学上の驚異です。スピードを追求するために空力効率をマスターした鳥であり、獲物に向かって急降下するときに翼を胴体にしまい込みます。なぜそうするのか?前面投影面積を減らすためです」

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この原則に敬意を表し、トゥールビヨンのデザインは最初からこの原則に導かれることとなったそうですが、この段階では「先代」たるヴェイロン、そしてシロンの高速走行開発プログラムで得られた知見が有効に生かされることに。

各モデルの開発過程で得られた教訓がすべて、トゥールビヨンのデザインを”最も妥協のない形にて、その目的に合わせて実現する”というミッションに注ぎ込まれることになったのだと説明されています。

この空力バランスは、スピードを解き放つための決定的な要件でもあり、時速445kmで走行する際に発生する揚力を”並外れたダウンフォース”で相殺する必要があるのですが、空気抵抗(ドラッグ)を過度に発生させることなくそれを達成する必要があるため、車両の基本形状を最初から完璧に仕上げる必要が生じます(まさに形態は機能に従う、の好例である)。

かくしてハヤブサのように、トゥールビヨンのコアフォルムは、優雅で滑らかな流線型の「ティアドロップ(涙滴)」として形作られており、これによってトゥールビヨンは先代モデルよりも前面投影面積、全高、キャビン幅が大幅に削減され、その一方で、コックピット内の空間と人間工学に基づいたプロポーションが維持されています。

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空気の流れを極める:ディフューザーの秘密

トゥールビヨンのユニークなアーキテクチャは、クルマの最前部から始まっており、象徴的なブガッティの「馬蹄形グリル」はトゥールビヨンのために広げられ、貴重な空気を左右のラジエーターへと送り込む役割を果たしますが、この”空気が効率的に流れる経路を確保する”ことにより、ラジエーターを通る空気の効率を最大化することに成功しています。

トゥールビヨンの独創的なキャビンシェル全体は、シロンに比較するとカーボンファイバー製モノコック内に33mm低く配置されていますが、これにより、コックピットが2つのフロントフェンダーの間で低く構えるという極端なプロポーションがここに実現。

さらに全高を下げるため、シートはモノコックに直接取り付けられ、ステアリングホイールとペダルを前後に調整することでドライビングポジションを調整するという構造を採用します(近年のハイパーカーでは、徐々にこの構造が一般化しつつある)。

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ただしこのハイパーカーが持つ、「相反する要素を融合させる能力の最大の秘密」はそのディフューザーにあり、この革新的なディフューザーによってトゥールビヨンはリアウィングを展開することなく超高速での走行を可能としているわけですが、リアウィングはボディワークと完全に”ツライチ”に格納され、これによって流線型を実現し空気抵抗を最小化。

この偉業を可能にする唯一の手段が、印象的なディフューザーであり、乗員シートの下から始まる全長約2メートルにも及ぶ複数のディフューザーチャンネルは、「そのまま」車両後部の非常に高い位置へと伸びています。

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ここでディフューザーの後端は、V16エンジンの排気口と出会うこととなり、そこから放出される排気ガスが、すでに加速しているディフューザーから出る気流にエネルギーを与えることで空気圧をさらに下げ、最大限のダウンフォースを生み出すという(市販車としては非常に珍しい)設計上の理論と構造を持っているわけですね。

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「私たちがトゥールビヨンで達成したことのどれ一つとして、簡単なものはありません。これらは、最初の鉛筆の一筆から、この種の戦略を実行してこそ可能になるのです」

フランク・ヘイル氏が語るこの哲学は、時代を超えて耐えうる技術的才能によって定義され、比類のないトゥールビヨンとともにブガッティの未来へと受け継がれてゆくこととなるのは間違いなく、ブガッティのデザイナー、そしてエンジニアたちが目指したように、「100年後のコンクール・デレガンスにおいても」トゥールビヨンはその輝きを失うことはないのかもしれません(ただ、残念ながらその頃にぼくはそれが実現できているかどうかを確かめることが叶わない)。

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ブガッティがトゥールビヨンのデザインプロセスに触れる動画はこちら

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