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「真似されるのは王者の証」BYD幹部が放った衝撃の宣言:「我々が革新を止めれば、自動車業界におけるコピー対象がなくなる」

BYD

| たしかにBYDは「独自性」を追求する、中国では珍しい自動車メーカーではあるが |

【この記事の要約】

  • BYD幹部の李雲飛氏が「他社がBYDを模倣するのは、業界の健全な競争の結果」と余裕のコメント
  • 「我々がブレイクスルーを止めれば、他社が学ぶべきものがなくなる」という独自のイノベーション論を披露
  • 創業者・王伝福氏の「第一原理」に基づいた、物理・化学から説き起こす超現場主義の開発実態が明らかに

導入:なぜ中国EVの覇者BYDは「模倣」を歓迎するのか?

電気自動車(EV)市場で世界トップを争う中国のBYD。

その広報責任者である李雲飛(Li Yunfei)氏の最近のインタビューが自動車業界に衝撃を与えています。

かつては「既存メーカーのコピーばかり」と揶揄されることもあった中国メーカーではありますが、今やその状況は変化を迎え、中国の自動車メーカーは「日米欧の自動車メーカー」ではなく中国の自動車メーカーをコピーする動きが活発化しています(そしてそのコピー対象となっているのがBYD)。

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そこで李氏は、他社がBYDの技術をコピーしようとする動きにつき、「それこそが我々が革新を続けなければならない理由だ」と断言するに至ったわけですね。

圧倒的なシェアを誇るリーダーが、なぜこれほどまでに強気なのか。そして、その自信を支える「異次元の開発体制」とはどのようなものなのか。最新のBYDによる技術やその思想とともに、BYDの真の狙いを読み解きます。

衝撃の哲学:他社に「コピーする材料」を与え続ける義務

李氏によれば、かつてBYDの技術ルートを疑問視していた競合他社が「1〜3年後には」こぞってその指標を追いかけ、模倣しようとするサイクルが定着しているとのこと。

社内では「せっかく開発した技術が真似されるなら、損ではないか?」という議論もあったそうですが、しかし、BYDが出した結論は驚くべきものです。

「もし我々が独創的なブレイクスルーをやめてしまったら、最終的に業界の誰も手本にするもの(エミュレートするもの)がなくなってしまう」

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つまり、BYDは自らを「業界の標準を定義する存在」と位置づけ、他社が追随することすらも市場全体の発展に寄与するプロセスとして受け入れており、この「独占」よりも「先行」を重視する姿勢こそが、今のBYDの強さの源泉と言えるのかもしれません。

なお、中国の自動車メーカーというと、上述のように「コピーばかり」という印象があるものの、BYDはそんな中で一味違った方針を採用しており、他社のように「外国の自動車メーカーとの提携や買収」を行わず、あくまでも自社ブランドの地位、そして技術の向上に努めています。

実際のところバッテリー製造から車体の生産までをも手掛け、輸出に際しては「自前の」船を用意するといった「すべてを自社でコントロールする」姿勢はほかの中国の自動車メーカーには見られないもので、文字通り「天上天下唯我独尊」な会社だという印象も。

さらには日本市場への先陣を切っての進出、海外勢では「初」となる軽自動車規格車両の導入など、やはりチャレンジングな会社であることは間違いがないと考えられます。

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Image:BYD

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BYDを支える中核技術と最新の技術スペック

BYDが「他社が追随してくる」と自信を見せる背景には、長年の研究投資によって積み上げられた独自の技術群があります。

技術カテゴリー主な特徴・スペック市場への影響
LFP(リン酸鉄リチウム)電池独自構造の「ブレードバッテリー」を採用。高い安全性と長寿命を実現。安価で安全なEVの標準へ
DM(デュアルモード)技術第5世代に進化。驚異的な低燃費と長距離航続を可能にするPHEVシステム。トヨタ・プリウス等の強敵に
メガワット級フラッシュ充電2025年発表。超高出力での急速充電を可能にする次世代充電インフラ対応。充電待ち時間の劇的短縮
可変磁束永久磁石同期モーター2025年12月公開の最新特許。走行状況に応じ磁束を動的調整し効率を最大化。電費効率のさらなる向上

特に注目すべきは、最新の「可変磁束モーター」で、これは運転条件に合わせて磁力の強さを変えることによって低速から高速域まで常に最適な効率を維持する技術であり、次世代EVの標準スペックになる可能性があると見られています。

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創業者・王伝福氏の「第一原理」:経営よりエンジニアリングを優先する異質さ

BYDの強さは、創業者である王伝福(Wang Chuanfu)会長の「技術オタク」とも言える姿勢に端を発しているといい、李氏の証言によると王会長はマーケティング会議よりも技術戦略会議に時間を割き、朝から晩までエンジニアと議論を戦わせているそうですが、特筆すべきはその議論の内容。

  • 物理・化学への立ち返り: 表面的な市場トレンドではなく、電気化学反応や陽極酸化のメカニズムといった「科学の原理」から製品の可能性を判断する
  • 第一原理分析: 例えば急速充電ネットワークを計画する際も、単なるコスト計算ではなく、電力グリッドの物理的な容量限界から逆算して戦略を立てる

この「科学的に正しいことは、市場でも勝つ」という信念が、短期的なトレンドに左右されないBYD独自の技術ルートを支えているというわけですね。

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考察:かつての「模倣者」が「被模倣者」へ。中国メーカーの地殻変動

ここで忘れてはならないのは、BYD自身もかつては「学ぶ側」だったということ。

創業初期のBYDは、トヨタなどの外資系ブランドに酷似したデザインの車を販売していた過去があったことも否定できず、しかしこの10年で起きた変化は劇的です。

  1. フェーズ1: 海外メーカーの模倣(デザインや構造の学習)
  2. フェーズ2: 基幹部品(電池・モーター)の内製化と独自進化
  3. フェーズ3: 業界標準の提示(他社が自社を模倣する立場へ)

「真似されることを恐れない」という発言は、かつてのコンプレックスを完全に払拭し、世界の自動車産業の頂点に立ったという勝利宣言とも受け取れます。

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結論:BYDの視線はすでに「競合」の先にある

BYDの幹部が放った「真似されるのが普通」という言葉は、単なる強がりではなく、それは模倣が追いつく頃にはさらにその先へ行くという、圧倒的な開発スピードへの自信の現れです。

今後、ぼくらが目にするのは「BYDに似たクルマ」が増える光景かもしれず、しかし、その時BYDはすでに、次世代の全固体電池やさらに高度な自律走行技術によって、また新しい「コピー元」を作っているのかもしれません。

「誰が勝つか」という次元を超え、「業界をどう進化させるか」を語り始めたBYD。

日本のメーカーにとっても、これまでにないほど手強い、しかし学ぶべき点の多い巨人が誕生したと認める段階に来ているのかもしれませんね。

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参照:CarNewsChina, Oriental Finance

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