| おそらくはBMW自身、ここまでラインアップが拡大するとは考えてもみなかったのだろう |
いくつかの例外はあるものの、おおよそわかりやすい命名になっていると思う
さて、様々な自動車メーカーが様々な命名法則を持っていて、たとえばランボルギーニであれば「星座やギリシア神話にちなんだもの(例外あり)」、ロータスであれば「Eではじまるもの」、そしてアストンマーティンであれば「Vで始まるもの(例外あり)」といった具合です。
ただ、メルセデス・ベンツやアウディ、BMWなどドイツの自動車メーカーの命名は現時点で非常に複雑怪奇になっており、それはモデルラインアップが当初の計画や予定を大幅に超えたためだと思われます。
そして今回、BMW自らがその命名法則について説明するコンテンツを公開することとなっており、ここでその内容を見てみましょう。
BMWの「シリーズ名」はこうなっている
現在のBMWにおける大まかな命名法則ですが、たとえば745eという表記だと、「745」という3桁の数字のうち最初の「7」はセグメントもしくはシリーズを表します。
御存知の通り数字が大きくなればなるほどセグメントが上位になり、クルマも大きくなってゆき、偶数は基本的にクーペもしくはスポーティーなモデルを示すことに。
なお、エンブレムとして車体には付与されないものの、「カブリオレ」「セダン」といった呼称が与えられることもあり、そしてSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)、SAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)、ロードスターには例外的に「X」「Z」という文字と数字が組み合わせられ、また別の命名法則を持っています。
BMWは「バーチャル排気量」という概念を持っている
上の例の「745e」において、「7」の次の「45」という数字は仮想(バーチャル)排気量を示していますが、これはかつて排気量を示していたもの。
たとえば3リッターエンジンであれば「30」という表記を行っていたものの、現在では小排気量ターボエンジンが登場するに際してこの数字の持つ意味が曖昧になり、かつ世界的にエンジンの表記がkW(キロワット)表示へと変更されたことから、今ではこの2桁について「バーチャル排気量」という概念を採用。
たとえば、300kW(400馬力)〜350kW(475馬力)の出力を持つエンジン、もしくはエレクトリックモーターを搭載していれば、「4.5リッタークラスのエンジンを搭載しているだろう」という想定のもと、「45」という数字が付与されるわけですね。
そして最後の小文字は駆動技術を示しており、ガゾリン車(インジェクション車)には「i」、ディーゼル車には「d」、「e」は電動化車両、xDriveは4WD、sDriveは前輪駆動または後輪駆動を示し、XおよびZモデルでのみ使用されます。
BMWの命名法則はこんな歴史をたどってきた
なお、BMWの命名法則や車名が現在のように統一されるまでには長い歴史があり、初のBMW製自動車の名称は「3/15 PS」。
「3」は、750立方センチメートルの排気量から算出される課税基準、「15」は馬力、「PS」はドイツ語の「プフェーアデシュテルケ(馬力)」の略となっています。
その後、1933年の「BMW 303」から第二次世界大戦以前までに製造された全車両には300番台の数字が付与されますが、これは排気量や馬力と関係なく開発番号であったといい、100番台は航空機用エンジン。200番台はバイク用エンジン、そして300番台が自動車用エンジンであったため。
その後には「501」「700」「3200CS」「1500(ノイエクラッセ)」「02」といったモデルが登場し、これらは「300番台」ルールには従わず、しかし個別に論理的な命名法則によって命名されていたものの、BWとしてのネーミングルールがまだ確率されていなかった、とのこと。
そして1970年代、ノイエクラッセの後継モデルを開発する際、BMWの経営陣は「よりわかりやすい命名方法」を取り入れることを考え、それまでの「固有の命名法則」を取りやめることに(そのため、固有の命名法則を持つのはイセッタが最後になる)。
1972年、BMWのネーミングルールは確固たるものに
そして1972年にはBMWに確固たるネーミングルールが導入され、これによって今日にいたる礎が形成されます。
その前のBMWの命名法則では、「大きなエンジンを積んだ小型車」のネーミングが難しく、そこで新しい命名法則について明確なアイデアを持っていた新任幹部数名のアイデアをもとに新しい命名法則を確立させた、とのこと。
なお、サブブランドの「i」は「イノベーション」をあらわし、電気自動車を示しますが、これまでにはi3とi8、iX3、i4が登場していて、しかし例外的にフラッグシップモデルのiXという存在もあり、これは数字を持たず、何事にも例外がある、ということですね。
BMW「M」にもネーミングのルールが存在
そしてスポーツブランド「M」にも明確なネーミングルールが存在し、数字の前に「M」がつくのがハイパフォーマンスモデルの証明ですが、XおよびZモデルでは「X5 M50i」のように車種名の後ろ、そしてモデル情報の前にMが付与されます。
なお、おなじ「M」でも、「Mハイパフォーマンスモデル」では事情が異なり、こちらは「X5 M」「M2」といった具合の表記にとどまり、性能、駆動技術、駆動バリエーションを示す数字や文字が付与されず、これは「M」が主要な特徴をすべて表すためだと説明されています。
そのほかのBMWのネーミングルールはこうなっている
そのほか、BMWが過去に使用していた、もしくは現在使用している表記は下記の通り。
- Ci(旧)・・・セダンとクーペが偶数と奇数で区別されていなかった時代、BMW 323 Ci (1999/2000)は、BMW 3シリーズのクーペとカブリオレのいずれかを示していたもの。
- コンパクト(旧)・・・BMW 3シリーズの小型の3ドア・ハッチバックの名称。
- コンペティション(現行)・・・ Mモデルのうち、よりスポーティなデザインのクルマに与えられるもの。
- CS(現行) ・・・かつてはクーペ・スポーツの略、しかし現在ではMモデルのうち、特にスポーティな仕様のコンペティション・スポーツの略。
- CSL(現行) ・・・CSと同様に、「クーペ・スポーツ・ライヒトバウ(ライトウェイト)」を示し、最適化された軽量技術使用するクルマに付与。
- e(旧) ・・・「e」はギリシャ文字のエータを指し、トルクとRPM(回転数)が最適化されたバージョンで、1980年代に325e/525eへと使用。現在では、PHEVに使用される。
- GT(現行)・・・ グラン ツーリスモの略で、GTはハッチバックモデルを意味。
- L(現行) ・・・ロングホイールベース化により、後部座席の乗り心地がより快適な車両に付与されるもの。
- ti / tii(現行)・・・ BMW 02からこの文字が追加され、「ti」はイタリア語のツーリズモ・インテルナツィオナーレ、「tii」はツーリズモ・インテルナツィオナーレ・イニエツィオーネ(ツーリング・インターナショナル・インジェクション)の略。
本来あるべきBMWのネーミングとは?
BMWによれば、「BMWのモデル名は、消費者にとって明快でなくてはならず、唯一無二で、理解しやすい名前でなくてはならない」。
加えて、世界中の消費者がBMWのモデル名の由来をすぐに把握できるようにしなくてはならない、とのこと。
モデル名やバリエーションがかなり増えてしまったので例外が存在したり、名称が長くなり覚えにくいものが増えてしまったものの、メルセデス・ベンツに比較すると(ぼくにとって)まだ覚えやすい方である、と認識しています。
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