| 現在燃料電池車を積極的に推し進めているのはトヨタ、BMW、ヒョンデくらいのものである |
そしてなぜ「極度にニッチ」な、しかし研究開発にコストがかかるこの分野を切り捨てないのかはわからない
さて、BMWとトヨタが「水素自動車(燃料電池自動車)の研究開発に向け提携内容を拡大」。
両社は2012年から燃料電池自動車の開発で協力してきたという過去を持ちますが、今回この範囲を拡大し緊密な協力を行うことで、トヨタはBMWにさらに多くの水素部品を提供し、その結果、BMWは10年後までに複数の燃料電池自動車を発売する予定だと報じられています。※詳細は9月5日のBMWメディアイベントで発表される
他のほとんどの自動車メーカーがハイブリッド車とEVに全力を注ぐ中、トヨタとBMWは水素技術の開発を続けている数少ない企業でもあり、特にトヨタは燃料電池自動車のほか、水素を直接(ガソリンのように)燃焼させる方法も検討しており、しかし今回の提携は「燃料電池自動車」分野にとどまるものと見られています。
BMWはX5の水素版を発売予定
なお、BMWは2000年代はじめから水素に関する研究を進めていたと記憶していて、古くは7シリーズの燃料電池自動車を官公庁向けに納入し、その後はi8の燃料電池版を試作ししばらく走らせていたことも。
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上述のとおり詳細はまだ発表されていいないものの、漏れ伝えられるところによれば、トヨタはタンクや燃料電池システムなどの重要な水素自動車関連部品をBMWに供給することになり、一方のBMWは自社のEV技術と駆動システムとをこれに組み合わせるそうですが、BMWはこれによって最終的な量産モデルの開発・生産コストを大幅に削減できるものと見られています。
参考までに、「水素」に関する対応は各自動車メーカーによってまちまちで、トヨタ、BMW、ヒョンデは「水素推進派」、しかしフォルクスワーゲンは「無意味」とこれを断じ、ポルシェとフェラーリは何らかの研究を進めているものの、まだ「可能性を模索している段階」だと言われます。
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なぜ「水素」はメインストリームとなり得ないのか
もうひとつ参考までに、燃料電池車が普及しなかった主な理由は、しっかりとした充電インフラが欠如していることで、もともと水素ステーションの数自体が少なく、さらに実際に「稼働」しているステーションの数はもっと少ないため、これがユーザーエクスペリエンスを著しく阻害しており、これは直近でトヨタが直面した集団訴訟の内容からも見て取ることが可能です。※そしてこういった問題から燃料電池車の価値が下がり、再販価格にも影響を及ぼしている
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なお、BMWは昨年に水素版のiX5を発表していますが、、これはサウスカロライナ州スパータンバーグの工場で製造された通常のX5を改造したもので、ミュンヘンの研究開発センターによってフロアとセンタートンネル、後部座席の下に2つの大型水素タンクが組み込まれています。
そして内燃エンジンの代わりに、エレクトリックモーター、トランスミッション、パワーエレクトロニクスを備えた統合ドライブユニットが組み込まれることとなっていますが、今回の提携により、BMWはこれら構成パーツの一部をトヨタから調達し、そしてトヨタとしては「思ったよりも販売が伸びない」水素自動車の開発のために投じたコストの一部をここで回収できる、というWin-Winの関係が成立するのでしょうね。
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