| ここ数年のクルマのコスト高とその構造、CO2排出量規制が関係していると思われる |
さて、メルセデス・ベンツは新型Sクラスを発表したところですが、今回「Aクラスの下に、新たなるエントリーグレードを追加する」とのウワサが登場。
さらには「2022年〜2023年には市場に投入される」とも言われ、これが真実であれば、すでに開発はかなりのレベルまで進んでいるということになりそうです。
なお、このウワサは過去にも何度か出ているものの、昨年にも「MFAプラットフォームを使用して新たなエントリーモデルを発売する可能性がある」という話が出ていますね(このときはメルセデス・ベンツのエンジニア経由だった)。
もはや競争相手は中国車?
この「あらたなるエントリークラス」については3ドアハッチバックになると言われ、さらには「リフトアップしたSUV風味」のバリエーションが登場する、とも。
こう聞くとイメージ的にはフォルクスワーゲン・ポロ、そしてクロスポロのようなクルマなんじゃないかと思いますが、これはある意味で衝撃的であり、またある意味では「やっぱりな」という気も。
というのも、ここ数年メルセデス・ベンツはFFレイアウトを持つエントリーモデルを拡充してきたためで、その路線をさらに強化すると考えれば納得です。
なぜ利益の薄い「安価なクルマ」を売らなくてははならないのか
なお、ちょっと前までの自動車業界における通例だと「安価なクルマは利益率が低いので、いかに台数が出るとしても売るべきではない」。
ただし最近だと、利益を削ってでも台数を確保するという傾向が強くなっているようにも思いますが、その背景として考えられるのは「自動車の製造コストの増加」。
たとえば現代のクルマに占めるエレクトロニクス関連コストが平均して40%にも達していると言われます。
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現在の自動車におけるエレクトロニクス関連が占めるコストは「40%」。2000年代初めには20%程度だった電子制御装着率が現在では80%にも達したことがその理由
| おそらくこの傾向は想像するよりも速く進むことになりそうだ | https://www.flickr.com/photos/110074903@N02/39570825144/in/album-72 ...
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逆の方面から考えると「以前のクルマはエレクトロニクス関連のコストが低く」、物理的なメカニズムに関するコストが高かった、とも。
そしてこういったメカニズムは「モデルごとに」作り分けられていて、SクラスにはSクラスなりの、そしてCクラスにはCクラスなりの機能が与えられており、それは内装も同様。
しかしながら現代のクルマではコネクティビティ、安全性に関するコストが多くを占めるようになり、かつそういった装備が「モデルに関係なく同レベルで」与えられ、実際にメルセデス・ベンツだと「Aクラスであっても、Sクラスであっても」同様のインフォテイメントシステムと安全性が付与されています(厳密には違いがあるが、グレードによって上下が分けられているというよりは、バージョンの新旧がその主な差でもある)。
そして、そういったエレクトロニクス関連のコストが高くなっており、そしてこれらエレクトロニクス関連装備・デバイスが「モデルごとに作り分ける必要がなく、どのモデルにも等しく搭載することになる」のであれば、台数を作れば作るほどその開発コストが下がることになり、グループ全体での利益率が向上することに。
つまり、かつては「モデルごとに個別のコストをかけて採算性を考えていた」ものが、現在では「モデルに関係なく、グループ全体でどう採算を取るか」にシフトしている、とも考えられます。
もちろん、これに加えて「CO2排出量が低い(と思われる)コンパクトカーを作れば作るほど、グループ全体でのCO2排出平均が小さくなり、厳しい規制をクリアするのに有利になる」という現在ならではの事情もありそうですね。
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参照: Autobild