| 一方、半導体はじめサプライチェーン問題は大きく改善し、一時高騰したエネルギーコストも低下 |
ただし依然として全体的なコストは上昇を続ける
さて、メルセデス・ベンツが四半期ごとの販売台数と財務状況を発表し、2023年第2四半期には515,746台を販売したこと、そしてこれは前年同期比で6%の増加であったと報告。
この好調な数字の背景にあるのは「サプライチェーン問題の緩和」で、ひところ問題となったマイクロチップ(半導体)、そのほかガラスなどのパーツの供給が正常に戻りつつあることが理由として挙げられています。※トヨタも「顕著に」サプライチェーン問題が解消していると語っているが、逆にポルシェはまだまだこれが足かせになっているとコメントしている
加えて、ロシアのウクライナ侵攻によって高騰したエネルギー価格も「大幅に」下がっているといい、様々な状況が正常化してきたと考えていいのかもしれません。
それでもメルセデス・ベンツは「値上げ」を継続
そして今回の財務状況の発表にあわせて言及されたのが「値上げの継続」。
メルセデス・ベンツのハラルド・ウィルヘルム最高財務責任者(CFO)によれば「2023年の大幅なコスト上昇を乗り切るため、値上げを継続する」。
エネルギーコストが縮小したといえど、そのほかのコストは今後数ヶ月にわたって上昇を続けると(メルセデス・ベンツは)見積もっているといい、これには生産費、有形固定資産、研究開発費が含まれるそうですが、これらが2022年に比べて大幅に増加するだろうという見方も示されています。
そのほか、今回の発表にて言及されたのは「金融引き締め政策や一部の国におけるインフレが消費者需要や経済成長の足かせになる」「直販モデルの展開と新モデルの市場投入に伴う生産の増強の結果、在庫が積み上がっている」という懸念材料ですが、一方では受注が非常に好調であり、そのためグループ全体の業績見通しを上方修正することに。
メルセデス・ベンツによれば、年初はまだまだ景気低迷への警戒感から慎重にならざるを得なかったものの、4月には米国と中国に回復の兆しが見え、現在ではやや楽観的な見方へと移行しているもよう。
なお、中国市場にしては消費の鈍化が様々な方面で報じられていますが、メルセデス・ベンツは「(とくに電気自動車と最高級車を中心に)好調」だと述べており、中国経済はまだまだ底堅いと考えることも可能です(日本のメディアは、中国に没落してほしいのか、中国のバブルが弾けるとしきりに数年前から報道を重ねているが、欧米メディアはむしろ中国経済の好調を報じるほうが多く、ここは大きな温度差がある)。
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最後に数値的なところに触れておくと、これまでのメルセデス・ベンツが出していた2023年通年の予想だと「EBIT(金利・税引前利益)は、2022年の205億ユーロ(227億ドル)と同水準になる見込み」。
ただし今回はこれを2%上方へと引き上げており、このまま好調が続くとなると、さらなる「上方修正」があるかもしれませんね。
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参照:Automotive News Europe