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【まだV8を諦めない】メルセデスAMGが新型V8エンジン開発中、さらにはV12エンジンも継続する意向を提示。その理由とは?

【まだV8を諦めない】メルセデスAMGが新型V8エンジン開発中、さらにはV12エンジンも継続する意向を提示。その理由とは?

| 現在の自動車業界のトレンドに「逆らう」ことにより、そのブランドの存在感、考え方を示し新興メーカーへと対抗ができる |

▶ 実はV12も生き残る!超弩級エンジンはまだ死なない

多くの自動車メーカーが電動化とダウンサイジングにまい進する中、メルセデス・ベンツもその例に倣って一旦は「大排気量・マルチシリンダーエンジンを廃止する」方向へと向かったものの、今回同社のハイパフォーマンス部門「AMG」がこの流れに逆らって「新型V8エンジン」の開発を続けている」とコメント。

しかもこの新型V8は既存の8気筒モデルへと「改良版」として搭載されるほか、現在4気筒や6気筒エンジンを積む車種にも積極的に展開していく可能性があるとしています。

▶ V8はまだ終わらない──AMGの狙い

まずメルセデスAMGのトップ、ミヒャエル・シーベ氏は以下のようにコメント。

「我々にはまだV8を必要とする市場がある。
顧客の夢を叶えること、それがAMGの使命だ。」

一部では「次世代の電動化V8(ハイブリッド)」とされていましたが、フルハイブリッドにこだわる必要はないとも発言。

その理由として、純粋な内燃機関モデルのGT63 Proの方が、PHEVのGT63 S E-Performanceよりも走りを重視する層に支持されているという実例を挙げていますが、これらのコメントはちょっと前の「我々の顧客はパワートレーンに固執しない」という発言とは真逆のもので、つまりどこかの段階で完全なる翻意があったのかもしれません。

メルセデス・ベンツ
メルセデスAMGのCEO「我々の顧客はV8エンジンが好きなわけではないのです。我々のテクノロジーに惚れて車を買っているので、EV時代も安泰です」

| それも一理あるかもしれないが、実際には多くの顧客がV8エンジンを求めているものと思われる | ただし「長期的に見れば」メルセデスAMGの考えの方が正しいのかもしれない さて、BMW M部門とは異な ...

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▶ 2035年のガソリン車販売禁止、それでもV8を作る理由

ヨーロッパでは2035年にガソリン車の新車販売が実質禁止となるものの、上述の通りメルセデスAMGはあえてV8への投資を継続。

その背景には、次のような理由があるのだと思われ、つまり、世界市場全体で見ればV8ビジネスはまだ十分成立するという読みが働いているのだと考えられます。

  • 米国をはじめとする非EU市場では今後もV8需要が根強い
  • そもそもメルセデスAMGが投入した小排気量ハイブリッドの評判が芳しくない
  • 高級車市場では“パワー感”=ブランド価値となる場面が多い
  • 小排気量・ダウンサイジングが進むいま、大排気量マルチシリンダーは「差別化要素」となる可能性が高い
  • 中国市場においてはEVセグメントで戦うよりも、ハイパワーなガソリン車のほうが立場を明確に示しやすい
  • V8エンジン搭載車は一定の利益が見込める

BMW
BMW「中国ではEVが売れていると思われがちですが、高級車市場ではガソリン車のほうがよく売れます。現地では、EVは安物だと捉えられ、富裕層はこれを嫌います」

| たしかに中国で売れているEVは価格が安く、登録にかかる費用や税金等も安価である | 中国の富裕層は「一般人と同じように見られたくない」のかもしれない さて、現在中国では販売される新車の1/3が電気 ...

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▶ C63にはV8が戻らないが、希望は残る

ファンの間で最も注目されていたのは「C63にV8が復活するのか」という点ですが、残念ながらAMGはこれを明確に否定し、4気筒PHEVの現行C63は継続される見通しです(そもそも車体がV8搭載に対応していないのだと思われる)。※ただし、Cクラスクーペの後継である「CLE63」に関しては、V8搭載の可能性がまだ残されている

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メルセデス・ベンツ
やっぱり「AMGに4気筒」は難しかったのか・・・。4気筒版AMGが売れず、新型メルセデスAMG CLE63には100馬力ダウンしてもV8を積むとのウワサ

| いかに高い出力を誇ったとしても「ハイパフォーマンスカーに小排気量エンジン」では味気ない | さらにC63では構造の複雑さに起因してその車体重量が重くなりすぎており、ピュアさが失われているという意見 ...

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▶ まとめ:感性に訴えるAMGの意地と選択

自動車の未来が電動化に向かう中でも、AMGはあえて「心が震えるV8の鼓動」を守り抜こうとしており、これは単なるノスタルジーではなく、市場ニーズの実利的な分析と、ブランド哲学への信念に基づいた”新”戦略ですが、かつてポルシェが「エンジニアリング上の合理性、ビジネス上の観点から」マニュアル・トランスミッションを廃止したものの、「ブランディング上の理由にて」MTを復活させたこととよく似ており、この競争が厳しい時代において生き残る差別化戦略の一つであるとも言えそうですね。

そして驚くべきことに、メルセデスAMGはV12エンジンも継続させる方針についても触れており、ただしこれは現時点でどのモデルに積まれるかはわからないものの、そもそもメルセデスAMGはSクラスの最上位モデル、そしてパガーニ(ウトピア)向けとして6.0LツインターボV12エンジンを供給しているため、エンジンの生産自体は単に社内にて「継続に対するゴーサイン」を出しさえすればよかっただけなのかもしれません。

一方で、BMW、アウディ、ベントレーなどはすでにV12やW12を廃止しており、V12を生き残らせているのは現在のところ以下の自動車メーカーのみなので、V12を存続させることは「その他大勢、そして新興EVメーカーに対する有効な差別化」となり、メルセデスAMGの矜持を保つことにも繋がりそうです。

  • フェラーリ
  • アストンマーティン
  • ロールス・ロイス
  • ランボルギーニ
  • ゴードン・マレー
  • パガーニ
mercedes13

なお、ブガッティが「V16」という規格外のエンジンを選んだのも、この電動化時代における一つの主張、そしてビジネスやブランディング上の観点からであったのだと思われますが、こういった「V8」「V12」「V16」という選択は「利益だけを考えた場合はとうてい会社として受け入れることができない」ものであり、しかしこの選択を行うということは「信念を示す」ということにほかならず、これがブランド価値を高めることになるのだと思われます。

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