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| メルセデス・ベンツは大きな転換期を迎え、ガソリンエンジンにも注力することに |
反面、2リッター4気筒ターボは「非常に短命」に終わってしまう
さて、メルセデス・ベンツは「今後の戦略」についてのプレゼンテーションを行っていますが、ベイビーGクラスや新型「ピュアエレクトリック」Eクラスの投入、各モデルの改良やモデルチェンジ計画に加え、「V8エンジンとV12エンジンの継続」というメルセデス・ベンツのファンが狂喜乱舞するような発表がなされています。
メルセデスAMGのコンパクトモデルにV8エンジンが復活
そしてまずはV8エンジンの復活についてですが、現在メルセデスAMGのコンパクトクラスに採用される「4気筒+電動ターボ」パワーユニットは”非常に高額な開発費が投じられ、F1由来の技術を持つにもかかわらず”その評判が今ひとつすぐれず、よってついにメルセデスAMGはV8エンジンを(コンパクトクラスにおいて)復活させるということに。
最初にこの恩恵を受けるのは新型メルセデスAMG CLE63クーペであり、おなじみ4リッター・ツインターボV8エンジンを積んでデビューすることになりますが、これはC63セダンに積まれる2リッター4気筒ターボが短命にて終わってしまうということを意味します(このパワーユニットの名誉のために言及すると、V8エンジン以上のパフォーマンスを発揮し、環境性能や技術レベルも非常に高い。しかしAMGというハイパフォーマンスブランドとのイメージ的マッチングが良くなかった)。
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そしてこの「V8復活」について特筆すべきは「クロスプレーンクランクからフラットプレーンクランクへと変更」されること。
このフラットプレーンクランクはフェラーリのV8エンジン、コルベットZR1に積まれるV8エンジンなど「ごく一部のV8」に採用されるもので、「一部にしか採用されない」のはメリットに対してデメリットが大きいから。
フラットプレーンクランクは「排気干渉を避けることができる」など効率上のメリットがあるものの、そのぶん振動が大きくなるなど「レーシングカーであれば無視できるが、ロードカーであれば無視できない」影響をもたらすことになり、よって多くの自動車メーカーは自社のV8エンジンにクロスプレーンクランクを採用し、しかし「パフォーマンス最優先」のメーカーあるいは車種のみが「覚悟の上で」フラットプレーンクランクを採用しているわけですね。
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メルセデスAMGでいえば、これまでのV8エンジンはすべてクロスプレーンクランクを採用していて、その唯一の例外が「AMG GT ブラックシリーズ」。
これは標準のAMG GTに比して驚異的な出力向上を果たし、フロントエンジン車ながらもミドシップカーやAWDスポーツカーを抑えて「ニュルブルクリンク最速」に輝いたことからもその実力の程を伺えます。
よってメルセデスAMGはすでにフラットプレーンクランクのノウハウを持っていて、そして今回「単にV8を復活させるだけではなく」、フラットプレーン化することでV8を復活させるエクスキューズにしようとしているのかもしれません。
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これによって新しいV8エンジンは「スロットルレスポンスの向上」「クランクケースのコンパクト化(CクラスなどV8非対応モデルにも搭載可能)」「高回転化(レッドライン&イグニッションカットアウトの向上)」を達成でき、しかしクロスプレーンクランク特有の「ドロドロとした排気音」は失われることになりそうです。
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さらにこの新型V8はマイルドハイブリッド(ISG内蔵)を採用し、スターターモーターをギアボックス内に統合することでパワーブーストと燃費改善を図ることについても言及されています。
そうなると気になるのが現行C63の中古市場での値動きで、V8の復活によってその相場を大きく下げるのか、あるいは「ほとんど売れていない」という希少性から逆に値を上げるのかについては注視を要するところですね(クルマそのもののパフォーマンスは”驚異的”である)。
そしてもうひとつの「V12」については余り情報がもたらされず「フラッグシップにはV12を継続」とだけ言及されていて、おそらくはSクラスやGLS(マイバッハ含む)、そして少量生産シリーズ「ミトス」についてもV12エンジンが積まれることになるのかもしれません。
参考までに、メルセデスAMGはパガーニ向けにV12エンジンを供給しており、よってV12エンジンの継続についても「大きな投資を必要とせず」、そのかわり大きなリターンを得ることができる判断であるとも考えられます。
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参照:Mercedes-Benz