
| 電動化モデルの登場によってメルセデス・ベンツのネーミングは混乱を極めていたが |
メルセデス、「EQ」から「Electric」へ名称転換
メルセデス・ベンツがEV戦略の一環として「EQ」ブランドを廃止し、名称を「Electric」に統一する方針を発表。
この方針は以前からウワサされていたもので、今回「正式に決定がなされた」ということになりますが、GクラスやCLAなど、今後は“EQ Technology”ではなく「Electric」で呼ばれる見込みです。
なお、メルセデス・ベンツは長らくEVを「EQ」ブランドの下で展開しており、EQS、EQEといったセダンやSUVはその代表例。
しかし今後は「EQ Technology」表記を廃止し、シンプルに「Electric」へ移行することが明らかになり、例として「Concept EQG」は量産時に「G 580 with EQ Technology」となったものの、今後は「Electric G-Class」といった呼び方に統一される見込みです(ちょっと短くなって覚えやすくなる)。
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CTOが語る「EQ終了」の理由
メルセデス・ベンツの最高技術責任者マルクス・シェーファー氏はNewsweekに対し、次のように語っています。
「我々は“EQ Technology”から“Electric”へと移行する。数年前の導入初期には差別化のためにEQが有効だったが、今では顧客が動力源の違いを理解している。特別なラベルは必要なくなった」
この変更は即時ではなく、2027年モデルのGLCなどにはまだ「EQ Technology」表記が残っていますが、数年以内にマーケティング判断で全面移行する予定であるとも補足されています。
EV戦略のシフト
当初のEQブランドは、テスラに追いつく姿勢を示すための「差別化戦略」であったものの、しかし今後は、ガソリン/ハイブリッド/EVの複数パワートレインを併売する柔軟戦略へと舵を切っています。
たとえば「CLA Electric」と名付ける方が「CLAの電動版」という位置づけが直感的で分かりやすく、ブランドとしても自然です。
今後はユーザーも「EQ Technology付きG580」を買ったとは言わず、「Gクラスの電動版を買った」と表現することになりそうで、これは「EVが特別な、かつ独立したラインアップではなくなったこと」「EVも一つの車種の中に組み込まれ、その中の「一つのバリエーションとして認識される」ということを意味します。
「EQ」の問題点と競合ブランドとの類似性
EQは決して悪いアイデアではなく、しかし他社も似たようなネーミング戦略を採用したため「区別がつきにくく」なっていたのもまた事実。
さらに富裕層がこぞってEVを購入していた時代とは異なり、EVであることを押し出すことが販売戦略上で「有利に働くことがなくなった」という事実も今回の決定に関与しているのかもしれません。
- Audi:E-Tron
- Volvo:EX/ES
- Kia:EV
- Cadillac:IQ
- Hyundai:Ioniq
- BMW:iシリーズ
- Volkswagen:ID
そしてもちろん、このようにアルファベット中心の名称が乱立し、差別化に乏しくなったのも「EQ廃止」の背景にあるのだと考えられます。
まとめ
- 「EQ」サブブランドは段階的に廃止
- 今後は「Electric」でシンプルに統一
- EV戦略は“排他的な電動化”から“選択肢の提供”へシフト
- 競合とのネーミング被りも廃止理由の一因
メルセデスは「伝統と柔軟性」を武器に、次世代EV時代を見据えることになりますが、特筆すべきは「少し前とは異なって、柔軟に戦略を変更するようになったこと」で、お堅いイメージが有る同社ではあるものの、今後の自動車業界において再びリーダーとしてのポジションを取り戻すことも考えられます。
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