
| 激動のAMGを率いるのは「電動化の立役者」 |
メルセデスAMGではここ最近「CEOが安定しない」
メルセデスAMGが「ポルシェにてタイカンの開発責任者を務めたシュテファン・ヴェックバッハ(Stefan Weckbach)氏を新CEOに任命する」と発表。
同氏は2026年7月1日付で就任予定だとされ、さらにはAMGのトップエンド車両グループ(Gクラス、マイバッハを含む)の責任者も兼任するとアナウンスされています。
これによって現CEOのミヒャエル・シーベ氏は就任からわずか2年半で生産・品質部門の重役に異動することとなりますが、この電撃人事は激動期にあるAMGの未来を占う上で極めて重要な意味を持っており、ここではタイカンという成功体験を持つヴェックバッハ氏が、物議を醸した4気筒C63やV8エンジンの復活計画、エモーショナルなEV開発など、山積する課題を抱えるAMGにどのような変化をもたらすのかを考えてみたいと思います。
このトピックの要約
- 新CEOに就任するシュテファン・ヴェックバッハ氏の経歴と就任時期
- AMGが直面する課題:物議を醸した4気筒C63の評価、AMG ONEのリコール問題
- AMGの未来戦略:復活するV8エンジン、そして「エモーショナルな」次世代EVスポーツカー
- 新CEOに期待される役割:電動化と内燃機関の共存という難しい舵取り
タイカンを成功に導いた手腕:新CEOの経歴と重責
シュテファン・ヴェックバッハ氏とは
新CEOとなるシュテファン・ヴェックバッハ氏は、2023年にフォルクスワーゲン(VW)グループの戦略責任者に就任する以前、ポルシェにおいて初のフル電動スポーツカー「タイカン」のプログラム責任者を務めたことで知られます。
ポルシェの伝統とEV技術を融合させたタイカンを成功に導いた実績は、AMGが今後進める「非常にエモーショナルな」EVスポーツカー開発において計り知れない価値を持つと予想されています。
加えて、電動化への移行期にあるAMGにとって、彼はまさに適任であるとも考えられますが、これは同時に「メルセデスAMGが電動化への道を加速させる」ということを意味しているのかもしれません。
また、ヴェックバッハ氏はCEOに加え、Gクラスやマイバッハを含むトップエンド車両グループの責任者も兼任し、これは、AMGが”高性能”だけでなく、メルセデス・ベンツの抱える各サブブランド全体のラグジュアリー戦略の中核を担うことを示しています(SLがAMGの開発となったように、今後AMGはメルセデス・ベンツの上位モデル、高付加価値モデルの開発を担当するのかも)。
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前CEOの異動とAMGの近年の波乱
なお、現メルセデスAMG CEO、ミヒャエル・シーベ氏は、2025年12月1日付でメルセデス・ベンツの取締役会メンバー(生産、品質、サプライチェーン管理担当)に異動したと発表されていますが、シーベ氏が率いた近年のAMGは、決して平穏ではなく、ある意味では「負け戦」を強いられ、その責任を取らされたと考えることも可能です(自身が担当した以外のモデルに関する不運に見舞われた)。※その前のCEOも短期間での退任となっている
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- 4気筒 C63への批判: 2022年9月に発表された新型C63は伝統のV8エンジンを廃止し、ハイブリッドと組み合わせた2.0L直列4気筒エンジンを採用したことで世界的な批判の波にさらされることに。 従来のC63の魅力であったV8の「鼓動」や「サウンド」が薄れたことで、販売面での苦戦が報じられる※しかし4気筒モデルは驚異的なシステムトルク(1,020Nm)と安定性を持つ「ハイテクマシン」として、新しい時代の高性能車としての評価も得ている
- AMG ONEの不運: F1エンジンを搭載したハイパーカー「AMG ONE」は、火災リスクにより生産台数の約80%にあたる219台がリコールされるという事態に見舞われる
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新体制でAMGが進む「二刀流」戦略
V8エンジンの復活と内燃機関への再評価
こういった批判を受けてか、直近のメルセデスAMGは内燃機関のファンに向けた強いメッセージを発信しており、これらの動きはBMW Mやアウディスポーツといったライバルとの競争において内燃機関への支持が根強い層を繋ぎ止めるための重要な戦略であると受け止めることが可能です。
- V8エンジンの開発: 新型V8エンジンの開発が進められており、これは現行のV8よりも幅広い車種への搭載が見込まれている
- ユーロ7規制対応: このV8は、環境規制のユーロ7に対応するために燃費と排出ガスを削減しつつ、さらなる高出力化が約束されている
- C63の将来: V8復活とは別に、C63にはV8ではないものの、より大きな3.0リッターエンジンが搭載される可能性も報じられている
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元ポルシェ・タイカン責任者が描くAMGのEV戦略
一方でAMGは電動化においても手を緩めておらず、ヴェックバッハ氏のポルシェ・タイカンでの経験は、この「エモーショナルなEVスポーツカー」を実現する上で、最も重要な要素となることが期待されており、単なる速さだけでなくAMGならではのドライビングフィールを電動モデルでどう再現するかが焦点となります。
- 「最高の電動V8」: 前CEOのシーベ氏は、AMGが「市場で最高の電動V8」を開発し、顧客を惹きつけられると自信を見せていた
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結論:両極端のニーズを統合する新リーダーシップ
シュテファン・ヴェックバッハ氏のAMG CEO就任は、電動化のスペシャリストが「内燃機関の伝統と未来のEV戦略」という両極端のニーズを抱えるブランドの舵取りを任されることを意味しますが、メルセデス・ベンツが「ずっとライバル視してきた」ポルシェから重要人物を獲得しAMGのCEOに据えた意義は大きく、それだけメルセデス・ベンツが同氏の手腕を評価しているのだということがわかります。
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AMGはピュアな直列6気筒や復活するV8エンジンによって内燃機関のロイヤリストに対応しつつ、ヴェックバッハ氏の指導のもとで「エモーショナルで妥協のない」EVスポーツカーを生み出すことが期待されているのが現在の状況ではありますが、同氏はこの前例のない難題に挑戦することとなり、そしてその解決策は多くの自動車メーカーが注目するところでもあるのかも。
こういった複雑な状況もあり、新CEOが旧来のファンが熱望するV12エンジンの復活(現在はマイバッハ Sクラスのみ)を視野に入れるのか、そして電動化時代におけるAMGの「唯一無二の存在感」を確立できるのか、その手腕には期待したいと思います(そしてもちろん、もっとも期待しているのはメルセデスAMGであろう)。
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