| ミッションX発表以降、急激に世界は「EVに興味を示さなくなった」 |
特にハイパーカー市場ではそれが顕著であり、リマック・ネヴェーラとブガッティ・トゥールビヨンの明暗がそれを示している
さて、かつては「フェラーリ・ラフェラーリ、マクラーレンP1、ポルシェ918スパイダー」というハイパーカー御三家が同時期に登場し自動車市場を揺るがしていますが、2024年は「フェラーリF80」「マクラーレンW1」が発表されたものの、ここにポルシェの名は連ねられていないというのが現状です。
そして多くのカーガイはここにポルシェが一日も早く加わることを期待しているものと思われ、しかし「その日」はなかなかやって来ないかもしれません。
ポルシェ「ミッションX」はあまりにも早すぎたコンセプトだった
なお、フェラーリF80は「(ル・マン・ハイパーカー由来の)V6ハイブリッド+4WD」、マクラーレンW1は「P1と同様のV8ハイブリッド、しかし新開発のシステムにて同じ方向性を突き詰める」といったアプローチを採用しており、「スーパーカー御三家」の時代に比較すると多様化が見られます。
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そしてここへポルシェが加わるとなると、「ピュアエレクトリック」という、フェラーリF80ともマクラーレンW1とも異なるアプローチを持つハイパーカーが並ぶことになりそうですが、これを実現するには相当に高いハードルが存在し、この数年というタームではそれがクリアできないかもしれません。
Image:Porsche
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ポルシェがミッションXを発表した時期を振り返ると、(当時は)ハイパーカー市場においては先手を取ったかのように見えたものの、現在の状況を考慮すると「実際にはそのタイミングが早すぎた可能性がある」。
2023年はEV(電気自動車)の需要が高かった年でもあり、多くの高性能EVが期待を集めていましたが、2024年になると世界は大きく変わってしまい、EVの販売が鈍化したあげく、富裕層の自動車愛好家たちは「性能」だけでは満足しないことを明確に示すに至っています。
今では0-100㎞/h速が2秒未満、ゼロヨン10秒未満という「エレクトリックパワートレーンを積む4ドアファミリーセダン」の存在も珍しくなく、しかしこれはかつてのハイパーカーの領域でもあったわけですね。
Image:Porsche
そしてこういった「ごく一部のクルマだけが達成できた」聖域にEVが踏み入れるようになったいま、それらの数値は特別さを欠いてしまい、逆に重要視されるようになったのが「エモーショナルさ」という数字では表せない感情的な部分。
この「エモさ」は内燃エンジンの持つ鼓動やサウンドに集約されるとも考えられますが、マクラーレンとフェラーリは(手法こそ異なれど)この点を見事にクリアし、上述のとおりマクラーレンは新しいハイブリッドV8エンジンを、フェラーリはル・マン・ハイパーカーに近いパワートレインを搭載した新型車を発表し、しかしポルシェ・ミッションXはこれらと比較して「感情を欠いた、無機質で冷たいハイパーカー」のように見えるのもまた事実であると思います。
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ポルシェ ミッションXはこんなクルマ
ミッションXはコンセプトカーであり、具体的な性能データは提供されておらず、しかしいくつかの基準目標が設定されていて、ポルシェによるとミッションXの特徴は以下の通り。
- ニュルブルクリンク北コースで最速の(合法的な公道走行用)車両となること
- 1馬力/1kgのパワーウエイトレシオを達成すること
- 現行ポルシェ911 GT3 RSを超えるダウンフォースを発生させること
- 新しい900Vアーキテクチャにより、2023年型タイカン・ターボSの2倍の充電速度を実現すること
これらの目標はどれも非常に高いハードルであり、テクノロジーの進展に大きく左右されます。
Image:Porsche
ポルシェがその技術的限界を突破し、ハイパーカーとしての立場を確立することは間違いなく挑戦ですが、(これらが達成できたとしても)高性能車には「魂」が必要であり、多くの消費者はEVがその「魂」を欠いていると感じていて、この理論は実際に今年初めに証明されています。
ブガッティが「ガソリンエンジンの重要性」を示す
ポルシェにとっての完璧な実例は、リマック・ネヴェーラを開発したメイト・リマックが見せたもので(奇しくもポルシェはリマックに多額を出資している)、まずリマック・ネヴェーラは圧倒的な直線加速と運動性能持つ電動ハイパーカー。
数多くの速度記録を打ち立て、ニュルブルクリンクのラップタイムにおいても注目を集めており、しかしそれでも「市場での需要は限定的」にとどまって販売面においても苦戦し、実際にリマックCEO、メイト・リマック氏は「いまや富裕層では誰もがハイパーEVを求めていない」と発言したほど。
一報、同じメイト・リマック氏がCEOを務める「ブガッティ・リマック」からはV16エンジンという(今の社会情勢を考慮すると)信じられないようなシリンダー数を持つトゥールビヨンが発表され、こちらは7億円という価格にもかかわらず一瞬で250台の予定生産台数が完売しており、メイト・リマック氏がいう「ハイパーカー市場においてはEVよりも内燃機関が圧倒的に重要な意味を持つ」ことが立証されています。
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そこでポルシェに話を戻すと、ポルシェは(いまのところ)ミッションXを電気自動車として展開しようとしていますが、2024年に見られた市場の変化により、このアプローチは再考の余地があるかもしれません。
ポルシェのCFO、ルッツ・メシュケ氏は「将来的に、EVとして設計されたクルマに内燃エンジンを搭載する可能性」を示唆していて、もしかするとこの中にはミッションXも含まれる可能性があり、というのもすでにポルシェは「電気自動車は売れない」ということを身にしみて理解しているから。
Image:Porsche
よってこの状況、そしてリマック・ネヴェーラというわかりやすい前例がある状況において、ポルシェは「ミッションXをピュアEVとして発売する」ような愚行を行う会社ではなく、市場の状況に応じた柔軟な対応を行う可能性も考えられます。
参考までに、ポルシェは「ミッションXの市販につき、今年後半に判断を下す」とも述べていますが、すでに年末に差し掛かっており、そしてミッションXの発表後に起こった様々な変化を考慮すると、「結論は来年に持ち越し」、あるいはポルシェの販売の3割を占める主要市場である中国での販売激減を考慮するに、「ミッションXどころではない」のかも。
しかしながらポルシェは挑戦を恐れない会社でもあり、その技術力を活かしてミッションXを再調整し、ハイパーカー御三家”2.0”の一角に加えることを期待したいと思います。
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参照:Porsche, CARBUZZ