| その後の「FF」ビートルまで考慮に入れると、なんと80年もビートルの生産が続いたということになる |
それだけ初代ビートルのデザインが偉大だったと考えていい
さて、「世界で最も売れた4輪車」でもある初代フォルクスワーゲン・ビートル。
1938年に生産が開始され、その後2003年にメキシコの工場にて生産が終了するまでに約2153万台が生産されていますが、その間フォルクスワーゲンは後継モデルの投入を考えなかったわけではなく、1950年代なかばにはその後継モデルを考えていた模様。
そして今回、フォルクスワーゲンが公式に「こんなビートルの後継を考えていた(が実現しなかった)」というクルマたちを紹介し、なかなかに興味深い内容となっています。
なお、その性質的にビートルの後継と言えるのは1974年に発売されたゴルフ(Mk1)ですが、今回の「悲運のクルマ」たちを見るに、もしかするとパラレルワールド的に、もっと違った展開があったのかもしれない、ということですね。
1955/56年式EA47-12
1953年から1956年にかけて15台製作された試作車のうち、12番目に製作されたのがこの「12」。
どこかで見たようなスタイリングに思えますが、1955年にビートルをベースにした「カルマン・ギア」を発売したカルマン社の作品だと聞けばそれも納得です。
この試作車は、当時のビートルと同様にリアマウントの空冷1192ccフラット4を搭載し、最高出力は30psと控えめなスペックを持っています。
1955年 EA48
このダース・ベイダーのヘルメット風デザインを持つEA48は、サイズ、性能、価格ともにビートルの下に位置する車としてVWが提案したもので、イギリスのミニに対するVWの回答だとも捉えることが可能です。
EA48は、ミニと同様、ビートルとは異なり、ユニボディ構造で前輪駆動を採用し、現代の自動車と同様にマクファーソンストラット式のフロントサスペンション、18馬力の700cc空冷フラットツインエンジンを搭載。
なお、これはポルシェの協力を得ずに自社で設計した最初の試作車だったとされています。
1960年 EA97
ちょっと角張ったボディを持つEA97は、典型的な1960年代の小型セダンという印象。
なお、このプロジェクトは実現寸前まで進んでおり、実際には200台のプリプロダクションカーが作られていたようですね。
1.1リッターエンジンをリアにマウントしていますが、1961年に発売されるビートルや大型のタイプ3セダンと競合するとされ、量産直前でこのプロジェクトが撤回されたと報じられています。
1969年 EA266
未来的な印象を持つEA266は、ビートルのデザインを担当したフェルディナンド・ポルシェの孫、フェルディナンド・ピエヒの手によるもの。
見た目は1970年代初頭のごく普通のコンパクトカーではあるものの、リアシート下にミッドマウントの水冷1.6リッター4気筒を搭載しており、当時からフェルディナント・ピエヒが「ハイパワー、スーパースポーツ」に興味を持っていたということがわかります。
このクルマが日の目を見なかったのは、当時VWの社長に就任したばかりのルドルフ・ライディングが、フィアットの採用した横置き前輪駆動レイアウトこそが小型車の未来だと考え、「莫大な費用がかかるこのプロジェクトを中止させたから」(その判断は間違っていなかったということになる)。
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1969年 EA276
見ての通り、1974年に登場したゴルフ1の原型となったモデルで、前輪駆動とボクシーなスタイリングはビートルとは一線を画していますが、ビートルの登場から30年も経過しており、そのぶんの進化を果たしたということになりそう。
そしてジョルジエット・ジウジアーロの手によって、ついにゴルフ1はビートルのポジションに取って代わることになりますが、その後1997年から2019年にかけ、ゴルフをベースにした「FFのビートル」が登場したというのも面白い話ではありますね。
そして中国からはこんなビートルのコピーも
これはフォルクスワーゲンとはまったく無関係ではあるものの、中国のORA(親会社は長城汽車 / グレートウォール・モータース)がオリジナルのビートルをちょっとモダンに、そして5ドアにデザインし直したビートル風のクルマを計画中。
すでにデザインがパテントとして登録されているとも報じられており、現実的にこのクルマが路上を走る日が来るのかもしれません。
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なお、フォルクスワーゲンは実際に「ビートルの5ドア」を考えていたようではありますが、これが実現しないまま、中国のコピー車に先を越されてしまうことになりそうですね。
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