| さすがにポルシェがVWへの支配力を強めるというこの事態は想定していなかった |
むしろ「その逆」はありうると思っていたが
さて、ここ数年上層部が大きく入れ替わっているフォルクスワーゲングループですが、今回はフォルクスワーゲン・グループ・デザイン責任者のクラウス・ツィヒオーラ氏が異動し、後任としてポルシェのデザイン責任者であるミヒャエル・マウアー氏が就任することになったという発表がなされることに。
クラウス・ツィヒオーラ氏は、フォルクスワーゲン・ゴルフをはじめ、数多くのVW乗用車のデザインを担当し、ゴルフだと6代目から現在の8代目までのプロジェクトを率いた人物です。
クラウス・ツィヒオーラ氏はIDシリーズの投入にも貢献
さらにクラウス・ツィヒオーラ氏は、電気自動車シリーズ「ID」へと独自のデザインアイデンティティを与え、フォルクスワーゲンの新しいデザイン時代をリードしてきたことでも知られており、しかし今回異動する理由、異動先については明かされておらず、そのあたりはちょっとナゾのまま(VWグループでは、最長10年を目処に異動する例がよく見られる)。
今回のクラウス・ツィヒオーラ氏の異動につき、フォルクスワーゲングループのCEOであるオリバー・ブルーメ氏は「クラウス・ツィヒオーラは30年以上にわたり、優れたデザイナー、強力なチームリーダー、そして創造的で前向きな思想家としての能力を発揮してきました。チームと協力しながら、彼はフォルクスワーゲンにおけるデザインを定義し、未来に向けて我々のブランドを強化してきたのです」と讃えており、かつ経歴を見るにクラウス・ツィヒオーラ氏はかなりな高齢でもあるようなので、第一線を退いて少し楽なポジションに移るのかもしれませんね。
ここで少しクラウス・ツィヒオーラ氏について掘り下げてみると、同氏は1989年にインテリアデザイナーとして入社してフォルクスワーゲンでのキャリアをスタートさせたそうですが、その11年後の2000年にはインテリアデザイン部門を率いるまでに地位を高め、2002年にはエクステリアデザインチームを率いる役割を担っています。
さらに2007年にはフォルクスワーゲン・デザインのエグゼクティブ・ディレクターに就任して600人以上のデザイナーを率いるまでとなり、そしてついに2020年フォルクスワーゲンのみならず、シュコダやセアトといったVWグループ傘下にある他ブランドを統括する「グループデザイン責任者」へと就任することに。
フォルクスワーゲングループは「ポルシェ色」が一気に強く
そしてクラウス・ツィヒオーラ氏の後任は上述のとおりミヒャエル・マウアー氏ですが、同氏は1986年にメルセデス・ベンツでキャリアをスタートさせ、その後サーブ、そしてゼネラルモーターズ・ヨーロッパでコーポレートガバナンスの課題に取り組んできたという実績を持っています。
さらに時は流れて現在、ミヒャエル・マウアー氏はポルシェのデザイン責任者を務めているわけですが、今回はそのポジションを兼任しながらフォルクスワーゲン・グループ全体のデザイン責任者も務めることになる、とのこと。
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ミヒャエル・マウアー氏は、918スパイダー、現行911、マカン、そしてタイカンなど、ポルシェの様々なモデルのデザインを担当し、カイエンをスポーティーに仕上げたのもまた同氏だとされていますね。
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なお、今回の異動に際して思うのは、フォルクスワーゲングループにおける「ポルシェ色」が強くなってゆくということ。
現在のフォルクスワーゲングループCEOはポルシェCEOと兼任のオリバー・ブルーメ氏が務めていて、そして今回同グループのデザイン責任者もまたポルシェ出身であり、そして引き続きポルシェでのポジションを兼任することになり、これはすなわちポルシェの支配力が強くなるのだと考えていいのかも。
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VWグループにおけるその他の変化としては、フランク・ヴェルシュ氏の退任があり、フランク・ヴェルシュ氏は2021年2月にグループ品質管理・戦略のポジションに就き、それ以前はフォルクスワーゲンの乗用車部門、中国のSAIC(上海汽車とフォルクスワーゲンとの合弁)、チェコのシュコダで技術開発を担当するブランドボード・オブ・マネジメントのメンバーとして活躍していたのだそう。
その後任はミヒャエル・ノイマイヤー氏だと報じられ、同氏は1986年からVWグループに勤務し、アウディでの品質および技術開発など、さまざまな管理職を歴任しています。
これらの異動に際し、オリバー・ブルーメCEOは「ミヒャエル・マウアーとミヒャエル・ノイマイヤーは、それぞれの分野で多大なる貢献を示し、ミヒャエル・マウアーの場合は、ブランドレベルだけでなくグループレベルでも強い実績を残してきました。彼らがグループのこの2つの重要なポジションに就任することを本当に嬉しく思います。一緒になって、品質とデザインの分野をさらに強化し、将来のニーズに応えられるような体制を整えてゆくことを目指します」とコメントしており、よりグループとしての統一性を高めることになりそうです。
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参照:CARBUZZ