| 正直、電動化のみを追求していては中国の自動車メーカーにシェアを奪われ存続の余地がなくなってしまう |
フォルクスワーゲンは追われる立場から一転、「追う立場」へ
さて、フォルクスワーゲンが中国にて「フォルクスワーゲングループチャイナ(上海汽車および第一汽車との提携を含む)」としてメディアコミュニケーションカンファレンスを開催し、その場にて2030年に向けた野心的な目標を正式に発表することに。
なお、フォルクスワーゲングループチャイナは前年比で+1.6%の成長を記録しており、中国では323万6000台の車両を納車しています(これは中国にて2位にの数字である)。
中国市場はフォルクスワーゲンにとっての「アキレス腱」である
フォルクスワーゲンはこれまで長らく中国市場にて首位を独占し、それと同時に(VWの)世界販売においても中国は重要な位置を占め続けていますが、それはつまり「中国市場で存在感を失えば、すなわちフォルクスワーゲンの販売も傾く」ということを意味します。
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これと同様、フォルクスワーゲングループ傘下にあるポルシェもまた中国の販売に多くを依存しており、しかし中国市場での販売を大きく損なうことで成長の減速傾向が鮮明になっているわけですね。
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実際のところ、フォルクスワーゲンはポルシェ以上に中国市場での減速を経験しており、たとえば2023年、フォルクスワーゲンはIDシリーズの電気自動車を約15万5500台販売していますが、2023年後半にかけ大きく販売を落としており、たとえば11月に発売したID.7だと「わずか300台の予約注文しか入らなかった」とも。
これは日増しに存在感を強める中国の自動車メーカーの影響によるもので、たとえば中国製のテスラ(2023年に60万台を販売)、GAC AION(2023年には48万台を販売)、Li AUTO(37万台)、NIO(16万台)といった現地生産車に市場を奪われているということにほかならないと考えて良さそう。
フォルクスワーゲンは2024年に向けてこう動く
そして今回フォルクスワーゲンが行った発表からその方向性を読み解くと、大きな方向性として「2024年に向けて変革を加速し、インテリジェント コネクテッド ビークルの時代におけるリーダーシップを維持することに尽力する」。
この 戦略の一環として、フォルクスワーゲンは2027年までに30もの現地生産(内燃機関搭載)モデルとハイブリッドモデルを提供し、電気自動車への取り組みを強化するとともに、2030年までに中国市場へと少なくとも30車種のピュアエレクトリックモデルを提供することを目指す、とコメント。
さらにはこの取り組みを強化するため、フォルクスワーゲン ループは中国自動車メーカーの技術を活用し、シャオペンのE/E アーキテクチャを使用して2026年に中国市場向けに 2 つの電気モデルを生産する予定だということにも言及しています。
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そして興味深いのは電気自動車に加え、内燃エンジン (ICE) 市場における地位を強化することについても言及していることで、これは今までとは大きく姿勢が異なる部分。
フォルクスワーゲンはこれまで「内燃機関搭載車を切り捨てる」勢いにて電気自動車の開発を進めてきましたが、「今後数年間で主要な内燃機関搭載車を先進技術とともにアップグレードする」と述べ、内燃機関搭載車の販売を継続する姿勢を見せています(電気自動車オンリーの戦略に破綻をきたしたと考えていい)。
つまり2024年のフォルクスワーゲンは電動化と従来の内燃機関製品の強化の両方を含む包括的なアプローチを取るということになり、両者に共通するのは中国市場向けにカスタマイズされた運転支援機能、インテリジェント コックピット、新しい車載ナビゲーションシステム、AI 搭載アシスタントの採用による商品力の強化であり、しかしこれらはいずれも「中国の自動車メーカーが持っているもの」だと考えられ、フォルクスワーゲンは「追われる側から追う側」へと立場が変わってしまったということを意味しているのかもしれません。
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参照:Volkswagen