これほどまでに速い中間加速を持つクルマはほかにない
マクラーレン720S試乗を「前編」「中編」にわたってお届けしましたが、今回は最終章となる「後編」。
これまではその内外装、まずは慣れるためにゆっくり走った様子を述べてきたものの、ここではフル加速を試した印象や、ライバルとの比較について触れてみたいと思います。
【試乗:マクラーレン720S/中編】ステアリング、ペダルなど操作系の剛性は比類ない。サスペンションはショック少なめ、ダンピングは強め
いい意味で「フツウに乗れる」クルマ
試乗を開始し、ひとまずはマクラーレン720Sはに慣れるために市街地を走ってその感触を掴みますが、普通に乗ると「普通に乗れてしまう」のがマクラーレン720S。
鋭い衝撃がないので段差に気を使うこともなく、外界の音もさほど入ってこず(遮音性がかなり高い)、不快なエンジンの振動やサウンドも室内に入らないように抑えられ、加えて視界にも優れるために非常に乗りやすいクルマでもありますね。
ただ、マクラーレン720Sは「スーパースポーツ」なので、やはりその性能を試さずに試乗を行うことはできず、ドライブモードを「コンフォート」から「スポーツ」へとスイッチしてフル加速を試すことに。
なお、マクラーレン720Sの0-100キロ加速は2.8秒で、これはぼくが今まで運転した中では「最速」レベル。
スペック上、もっとも速かったのはテスラ・モデルX P100Dですが、これは4WDであり、しかし今回のマクラーレン720Sは「RWD」。
中間加速の伸びは異常
そこには4輪駆動と2輪駆動との差異があることになり、「720馬力を後輪だけにぶつけて大丈夫か・・・」と思いながらもアクセルを踏み込んだところ、速いことは速いものの、思ったよりも加速は鋭くなく、「ゼロヨンキングもこんなもんか?」と考えていた矢先に怒涛のターボパワーが押し寄せてきて、過去体験したことがないレベルの加速に。
その加速たるや凄まじく、ある意味で「ドッカンターボ」のような印象も受けるほどです。
これは4WD+自然吸気エンジンを持つランボルギーニ・ウラカンとはもちろん、同じV8ツインターボエンジンを持つフェラーリ488GTBと比較しても全く異なるフィーリング。
その違いを図で示したもの(あくまでもイメージ)がが下になりますが、ウラカンは自然吸気エンジンなのでエンジン回転数に比例してパワーが盛り上がり、そのまま加速する感じ。
4WDなので出だしにも優れます。
一方でマクラーレン720SはRWDということもあってウラカンにダッシュこそは譲るものの、そから「Jカーブ」を描いてとんでもないところまで伸びるイメージ。
とくに3000回転以上からの加速は比類なく、もうこれはどんなクルマを持ってきても勝てないだろう、ということが身をもって思い知らされます(たしかに720Sのゼロヨン動画を見ても、途中からリードを広げるものが多い)。
その中間とも言えるのがフェラーリ488GTBで、湧き上がるターボパワーを持ちながらも自然吸気エンジンのようななめらかな加速を持っている、という印象ですね(フェラーリ自身、ターボラグ”ゼロ”を謳い、ギアによっても過給圧を変えている)。
こういった感じで三者三様ではありますが、こういった差異があるのは非常に面白い部分でもあります。
なお、マクラーレン720Sの加速については「矢のように」進むという表現がまさにぴったりで、後輪駆動車、とくにMRにありがちな「全力での加速時にフロントが浮く」印象も全くナシ。
そしてそこからのブレーキングについても全く問題はなく、(おそらくステアリングホイールから手を離していても)まっすぐピタリと止まる、という印象があります。
さらにはいかなる動きを要求しても全く姿勢を乱さず、これは「プロアクティブシャシー恐るべし」というところなのかもしれません。
720Sのエキゾーストサウンドは意外にジェントル
そしてやはりランボルギーニ・ウラカン、フェラーリ488GTBと大きく異なるのが「サウンド」。
マクラーレン720Sは停車時から比較的サウンドが小さく、振動も少なめ。
これはウラカンも同様ですが、エンジン回転数を上げるとウラカンは轟音を発し、かつアクセルオフで盛大なバブリングが発生します。
ですがマクラーレン720Sではエンジン回転数を上げても(ウラカンほどは)サウンドが大きくならず、バブリングも控えめ。
なおエキゾーストノートがさほど大きくないため、むしろ加速時には吸気音のほうが大きく聞こえるほどです。
一方のフェラーリ488GTBではサウンドや振動も比較的大きく、エンジンの鼓動を感じる設定。
アクセルを踏み込むと一気にサウンドが高まり、もちろんこれはマクラーレン720Sよりもずっと大きいレベルですね。
マクラーレン720Sのサウンドは刺激的というよりはむしろ「心地いい」音質であり、振動も低めに抑えられているので、スーパーカーというよりは「メルセデスAMGやBMW Mモデル」のような印象すら感じさせるほどですが、とにかくここは意外であった部分です。
ただしこれは「物足りない」ということではなく、あくまでもその大きなサウンド、快音で知られるランボルギーニやフェラーリと比較しての話であって、万が一これに不足があればオプションの「トラックパック」装着にてスポーツエキゾースト装着という手段も。
全体的に見てどうなのマクラーレン720S?
マクラーレン720Sの試乗を終えてみて、ひとことで言うと「完璧なクルマ」。
エンジニアリング的にはこれ以上のクルマは(ハイパーカーを除くと)望みようがなく、パフォーマンスにしてもそれは同じ。
運転していてもアクセル、ブレーキ、ステアリングについてナーバスなところはなく、街中だろうがどこだろうが安心して運転ができます。
加えて視界や開放感に優れ、振動や騒音が少なく、「心地よい」とすら言える室内環境を持ち、しかしひとたびアクセルを踏み込めば怒涛の加速。
ランボルギーニやフェラーリはやはり「見た目(とくにフェラーリは華やか)」でのインパクトが大きく、そして非日常性をひとつの価値としていますが、マクラーレンの場合はそれらよりも「質実剛健」に近いのかもしれません。
何かをアピールするよりも実力で物申すと言った印象もあり、そこはイタリアとは異なるイギリスの「お国柄」なのかも、と思ったりします。
マクラーレン720Sをライバルと比較してみると?
なお、マクラーレン720Sはそのルックスや「スーパーカー」という性格から、フェラーリ488GTBやランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテと比較されがちではあるものの、実際に乗ってみるとそれらとは大きく性質が異なり、実際のライバルはポルシェ911GT3 RSなんじゃないか、という印象も。
フェラーリ、ランボルギーニももちろんパフォーマンスを標榜してはいるものの、購買層の多くが「セレブ」になってしまったためにそこを意識せざるを得ず、しかしポルシェ911GT3 RSはそういったことを抜きにした「パフォーマンス一直線」なクルマ。※目的に対してピュア、そして目的に対する実用性が高いとも言える
マクラーレン720Sもセレブを意識したところが無いわけではないものの、フェラーリ、ランボルギーニに比較するとそれはやや希薄であり、「パフォーマンス第一義」傾向が強いように思います。
加えて足回りのセッティングもポルシェ911GT3RS、マクラーレン720Sともによく似ていて、乗り味もよく似ているという印象ですね。※そのせいか、マクラーレンへの流入は”ポルシェから”が多いと聞く
以下がぼくの感じた、フェラーリ488GTB、ランボルギーニ・ウラカンとの比較。※911GT3RSとの比較だとあまり差異がなくなるのでここでは除外
ただしいずれも「それぞれのメーカーの考え方が反映された結果」であって優劣を語るものではなく、あくまでその人が求めるものによって「どれがいいか」は簡単に入れ替わるもので、こういった選択肢があるというのはぼくらにとって幸せなことなのだ、とも思います。
マクラーレン720S | フェラーリ488GTB | ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテ | |
価格 | 3338万円 | 3070万円 | 3163万円 |
エンジン | 4リッターツインターボ | 3.9リッターV8ツインターボ | 5.2リッターV10自然吸気 |
出力 | 720馬力 | 670馬力 | 640馬力 |
駆動方式 | 後輪駆動 | 後輪駆動 | 4WD |
静粛性 | ★★★ | ★ | ★★ |
視界 | ★★★ | ★★ | ★ |
乗り心地 | ★★ | ★★★ | ★★ |
サウンド | 大きい | 平均的 | 大きい |
エンジニアリング | ★★★ | ★★ | ★★ |
コストパフォーマンス | ★★★ | ★★ | ★★ |
リセール | ★ | ★★★ | ★★ |
マクラーレン720Sを行ったのはマクラーレン大阪
今回マクラーレン720Sを試乗させてもらったのはマクラーレン大阪さん。
「八光カーグループ」の経営で、マクラーレンのほか、アルファロメオ、フィアット、アバルト、マセラティ、ジャガー、ランドローバー、アストンマーティンといったブランドを取り扱っていますが、ぼくがレンジローバー・イヴォークを購入した頃からのお付き合いです。
McLaren Osaka 大阪府大阪市中央区北久宝寺町3-5-12 TEL : 06 6121 8821 地図はこちら |
他の画像はFacebookのアルバム「McLaren 720S」「McLaren 720S(2)」に保存中。