| マスタングGT用の5リッターV8を700馬力以上にチューン |
今年6月にその姿が公表された新型「デ・トマソP72」。
デ・トマソはかつてイタリアにてスーパーカー(マングスタやパンテーラなど)を製造していた自動車メーカーですが、2004年に倒産してしまい、その後イタリア人実業家の手を経て、2015年には「アポロ・インテンサ・エモツィオーネ」を発売した香港のIdeal Team Ventus(ITV)に商標権が渡ることになります。
そして、そのITVのもと、アポロ・インテンサ・エモツィオーネを開発したのと同じスタッフが世に送り出したのが、6月に発表された「デ・トマソP72」というわけですね。
デ・トマソP72は、同社の1960年代のレーシングカー、P70へのオマージュ
このデ・トマソP72が発表されたのは「デ・トマソ設立60周年」ということになり、P72はかつての「P70」の後継という位置づけ。
実際に、P72は「レッドのボディカラーやゴールドのホイール」など、P70と多くの共通点を持っています。
そして今回、新生デ・トマソが発表したのは、「P72にはフォードのエンジンを使う」。
しかもフォードを得意とするチューナー、ルーシュ(Roush)がカスタムした5リッターV8を搭載し、700馬力以上を発生するとコメント。
このエンジン(マスタングGT用)はスーパーチャージャー使用ながらも自然吸気エンジンを思わせるフィーリングを持つものになると伝えられており、「かつてのアメリカンV8サウンドそのものを発する」とも。
トランスミッションは6速マニュアルのみ、そして駆動輪はおそらく「後輪のみ」。
なぜデ・トマソが「フォード」エンジン?
なお、なぜ「フォードのエンジンなのか」ということですが、これはデ・トマソとフォードとのつながりが強かったという歴史的事実を重視したものではないかと思われます。
デ・トマソはイタリアの自動車メーカーではあるものの、1963年に発表された「ヴァレルンガ」、その後1966年の「マングスタ」、P72のモチーフとなったP70にもフォード製エンジンを使用。
そして、そこでフォードとのパイプを築き上げ、フォードと共同にてスポーツカーを開発するというプロジェクトを計画し、そこで生まれたのが1971年の「パンテーラ」。
このパンテーラに搭載されたのはフォード製5.8リッターV8ですが、このクルマが「最初からアメリカで大量に販売することを前提に」作られたというところはそれまでのデ・トマソ車とは大きく異なる部分。
実際にパンテーラはフォードのディーラーにて販売されることによって、デ・トマソ最大のヒットとなっています(ただし、当時のイタリア車特有の品質問題により、クレームは凄まじかったらしい)。
そういった経緯もあり新生デ・トマソはフォード製エンジンを選択したのだと思われますが、このあたりクルマとクルマ文化を愛する香港ベースの企業らしいところでもありますね。
なお、デ・トマソP72は、アポロ・インテンサ・エモツィオーネのように「レーシングカーと同等の」性能を目指したのではなく、もともと「グランドツアラー」として企画されており、たしかにそのスタイリングも優美そのもの。
デ・トマソによると、欧州はもちろん北米の規制にも適合しているとされ、数ヶ月以内には「シンフォニーを奏でる」V8エンジンのサウンドをお届けできるだろう、ともコメント。
残念ながら今回価格については公表されておらず、しかしアポロ・インテンサ・エモツィオーネと同じカーボンモノコックシャシーを使用していることを考えると、「少なくとも9000万円くらいになるのでは」というウワサです。