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マツダCX-5に試乗。デザイン良し走り良し、マツダの考え方が明確に見える一台

さて、マツダCX-5に試乗。
マツダCX-5は2016年(モデルチェンジ前)には33万台を販売し、マツダのグローバル販売において1/5を占める主力モデル。
今回はその主力モデルのフルモデルチェンジとなり、さすがにマツダも気合が入っています。

グレード/価格はガソリンエンジンでは2WDの「20S(2,462,400円)」から4WDの「25S Lパッケージ(3,213,000円)」、クリーンディーゼルだと「XD(FF、2,775,600円)」から「XD Lパッケージ(4WD、3,526,200円)まで。

ガソリンエンジンだと、2リッターモデルは155馬力で燃費はリッター16キロ、2.5リッターモデルは190馬力/燃費がリッター14.6~14.8キロ。
ディーゼルエンジンは175馬力/燃費はリッター17.2~17.6キロ、という感じ。

トランスミッションは全車6速AT、SKY-ACTIVシャシー、SKY-AKTIVビークルダイナミクス採用となり、エンジンのトルクをステアリングの舵角に応じて変化させるG-ベクタリングが装備されています。

サイズについて、全長4545/全幅1840/全高1690ミリ、重量は1510-1660キロ。
画像で見るとさほど先代と変化がないようにも見えますが、実物をみるとかなりの相違があり、躍動感が違う、と感じます。
新型CX-5ではフロントノーズを延長することで車体前半を長く取り、これによって「ロングノーズ・ショートデッキ風」のスタイリングを実現。
要はCX-3にも似た手法ですが、これがスポーツカーっぽい印象ももたらし、ずいぶん軽快に走りそうなイメージをもたらしているようですね。

なおSUVにおいて多くのメーカーが「世帯っぽくならない」ように配慮していると思われますが、そのほとんどが対策として用いるのが「クーペスタイル」(とリアドアハンドルのCピラー埋め込み)。
BMW X4/X6やメルセデス・ベンツGLE/GLCクーペ、そしてレンジローバー・イヴォークなどがその好例ですね。
ただしマツダは独自の手法で「スポーツカーらしさ」を表現し、他社とは異なる方法でCX-5をデザインした、と言えるでしょう。

加えてCX-5では前後フェンダーを膨らませて樹脂製のモールを取り付け、そこへ日本車としては珍しい、かなり「ツライチな」具合でタイヤをセットすることにより足元の力強さを強調しているように思います。
これはジャガー・ランドローバーも用いる手法ですが、CX-5においてはこれがかなり「有効」なようですね。

なおグリルが大きくヘッドライトが細い、というのはマセラティ・レヴァンテでも採用される手法で、車格が高い車にとって今後の主流となるのかもしれません。
CX-5の場合はこれによって「単に大きなCX-3」とならず、明確な差別化ができている、とも考えられます。

今回試乗したのはディーゼルモデルの「XD Lパッケージ」。
4WDで、かつディーゼルの中ではレザーシートを装備するなど最上位となるモデルです。

装備としてはかなり充実している部類で、ダイナミック・スタビリティ・コントロール、ヒル・ローンチ・アシスト、電動パーキングブレーキ、ドライブセレクションが標準装備。
プロアクティブ/Lパッケージにはスマート・シティ・ブレーキサポート、アダプティブLEDヘッドライト、レーン・キーピング・アシスト、ドライバー・アテンション・アラート、ブラインドスポット・モニター、レーダークルーズコントロールなど運転支援デバイスが付加されることに。

おおよそメルセデス・ベンツ、アウディ、BMW等と比べて見劣りしないどころか逆に勝るほどの装備ですが、その割に価格は3,526,200円と抑えめ。
ただ、これについてはあちこちに苦労の跡が見られ、室内だとモニターサイズや液晶のサイズを抑える、外装だと使用されるLEDの個数を抑えるなどといった工夫が見られます。

ただ、これらは「ケチっている」のではなく、この価格でCX-5を消費者に提供できるようにマツダが考えた結果であり、そこで削ったコストを「走り」や「安全性」という、自動車が本来求められるところに費やしているという点において評価すべきだと考えるべきでしょうね。

実際にCX-5は相当に大きく感じる車で、かつ細部までよくデザインされているので安っぽさはなく、まさに「堂々たる風格」。

ドアを開けて乗り込みドアを閉めると車内はかなり静かで、静音ガラスの採用など「かけるところにはコストをかけた」結果がいきなり感じられますが、それはステアリングコラム左にあるプッシュボタンを押してエンジンをスタートさせた時にも実感でき、ディーゼルモデルについてマツダがかなり静粛性を向上させてきたことがわかります。

走行を開始して気づくのはステアリングホイールの軽さ(ステアリングホイールのレザーも上質)。
車体の大きさを感じさせない為の演出だと思いますが、この辺りもよく考えているところですね。
なお特筆すべきは「ペダルの配置」。

カタログにもある通り「マツダの考える好ましいペダルの配置(進行方向に対して足の向きがまっすぐ)」になっているわけですが、ほとんどの車が「マツダの考える「好ましくない」ペダルの配置(足が車の中央に向いている)」であり、普段そういった車に乗り慣れているぼくにとっては逆にマツダのドライビングポジションは非常に新鮮。

実際にそのドライビングポジションはかなり有用と思われ、おかげで大きな車であるにもかかわらず扱いやすいと感じさせる効果があるようですね。
これ(扱いやすい)にはマツダ得意の「G−ベクタリング」も貢献していると思いますが、このG−ベクタリングの制御はかなり複雑で、簡単いうとコーナリングの基本「スローイン・ファストアウト(とコーナーに入る際の荷重の移動)」を車が実行してくれるものとぼくは認識しています。

特にCX-5のような車高の高い車ではその効果が顕著であり、(他の車を運転した経験から)想像するような横揺れが少なく、非常に快適かつスムーズなコーナリング特性を持っているようですね。

坂道やカーブなど一通りのシチュエーションを走行していますが、ブレーキ、ハンドリング、加速など基本性能に問題は感じられず、むしろ上述のように「サイズを感じさせない扱いやすさ」が目立ちます。

シートポジションが高く見切りが良いのでストレスが極少、かつAピラーが細いので死角も少なく、非常に運転しやすい車と言って良いでしょう。
この辺り、マツダは奇をてらわずに車本来の機能や性能で勝負してきたなあ(基本性能を突き詰め、まさに先代を正常進化、マツダの言葉を借りれば深化させてきた)、という感じ。

現在マツダのスローガンは「Be a Driver.」ですが、まさにそのメッセージがシンプルに伝わってくる車と言えますね。

マツダはトヨタやホンダに比べると販売規模が小さく、新しい機能や機構を開発するにはリソースが乏しいと思われるものの、だからこそスバル同様に明確な方向性を打ち出しており、それがぼくらドライバーに伝わってくるところが素晴らしいと考えています。

トヨタのように「とにかく台数」の拡大を目指し消費者の嗜好全てを拾う、またホンダがヒット製品(オデッセイやステップワゴン、フィットやヴェゼル)を出せばそれに対抗する製品を出してシェアを奪う、次世代技術(ハイブリッド、水素)の開発を行うといったことをせず、その代わり「自分たちにできること」を明確にし範囲を絞って「少なからずいる、マツダの考え方をわかってくれる」層に向けた製品作りを行っており、そのためマツダの考え方と波長の合う人、マツダの方向性に共感できる人にとっては「代替性のないメーカー」となるわけで、それがロイヤルカスタマーやファンの育成に繋がるのでしょうね。

こういった、車に試乗しただけで「そのメーカーの考え方がわかる」車は珍しく、しかしマツダにはそれがある、と言って良さそう。

ちょっと気になるのはディーゼルの音と振動ですが、これは他モデルに比べるとよく抑え込まれており、ナチュラルサウンド・スムーザーや静音ガラスなどの採用、加えて(燃費向上の観点もあると思いますが)アイドリングストップの積極活用によって「ディーゼルを感じさせる」瞬間を極力減らしている、と考えられます。

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